近年、サーフィン業界でもいろいろと革新的なアイテムやボードが登場していますが、ここでご紹介するのは時代に逆行する形で作られている超アナログのサーフボード「アライア」です。アライアというのは、はるか昔のハワイで使われていた庶民的なサーフボードのことを指します。
アライアは一時期、世界のプロサーファーからも注目を集めていましたが、何が魅力的なのでしょうか?この記事ではアライアというサーフボードについての話とその魅力、そしてアライアボードを好んでいるサーファーなどをご紹介していきます。
アライアサーフィンとは?
アライアサーフィンというのは、アライアというサーフボードを使ってサーフィンをすることです。もともとアライアは昔のハワイにおいて庶民層が使うサーフボードとして扱われていました。
その形状は現在のサーフボードに似ているところがありますが、フィンなどは付いておらずあくまでシンプルなただの木の板といった印象があります。なお、古代のポリネシア人たちは沖までの移動手段として日常的にこうした木の板(アライア)に乗って波の上を滑っていたようです。
ちなみにアライアのサイズは7フィートから12フィートくらいだったとされていますので、今のショートボードからロングボードにかけての長さとだいたい同じということになりますね。また、アライアよりも長いサイズのボードをオロと呼んでいたそうですが、こちらは当時の王族階級の人しか乗れない貴重なものだったとのことです。
そんなオロやアライアですが、当時使われていたものは現在ハワイのビショップ博物館にて保管がされています。そして、この博物館に訪れたオーストラリア人シェイパーのトム・ウェグナーによって、現代に復元がされるようになったものが今注目を集めている現代版のアライアです。
アライアサーフィンの魅力
トム・ウェグナーによってリメイクされた現代版アライアは、当初あまりほかのサーファーにウケがよくなかったそうです。しかし、彼の友人でありプロサーファーでもあるジェイコブ・ステュースが実際にアライアを使って波の上を滑走したことによってその性能の素晴らしさが証明されました。
アライアはそもそもフィンが付いていないため、コントロールが難しいサーフボードです。ただし、逆にフィンがないことによって余計な抵抗を受けず、最速の滑り出しが出来るとされています。また、ボード自体の厚さが通常のサーフボードより薄いため、波のレールに乗りやすいというのも特徴のひとつです。
これらの特徴を踏まえた上で実際にアライアに乗ってみると、まさに波そのものに乗っているという感覚が味わえます。この感覚に魅了された多くのプロサーファーたちがアライアを求めているというわけですね。
ちなみにこれは近代サーフィンの祖といわれるデューク・カハナモクの「板に乗るんじゃない。波に乗るんだ」という言葉ともぴったりと合致します。しかし、やはり現実的にはどんなプロサーファーでも一発でこのアライアを乗りこなすことは困難です。
それでもアライアが人気な理由は「初心に戻れるから」という部分もあるとプロサーファーたちは語ります。
アライアはとても乗りづらいボードです。ただ、その不便さを乗り越えてテイクオフができたときには、自分が初めてボードの上に立てたときの感動を思い出させてくれます。この感動が長年サーフィンを楽しんできた玄人たちの心を新鮮なものにしてくれるということです。
ロブマチャドのアライアサーフィン
アライアを好むプロサーファーというのはたくさんいますが、中でも長い期間にわたってアライアを愛用しているのがロブマチャドです。ロブマチャドはオーストラリア出身、国籍はアメリカというプロサーファーですが、環境保全の活動にも力を入れている人物です。
彼はトム・ウェグナーの作るエコなサーフボードに興味を持ち、オーストラリアやハワイの海でそのアライアを使いPRしています。動画ではスムーズな形で波に乗るロブマチャドが映し出されていますが、実際にこれだけ乗れるようになるにはかなりの実力が必要です。
特に動画後半部分ではアライアを使ってターンなども披露していますが、そもそもフィンがないボードでスピードを調節してターンをするというのは至難のテクニックと言えるでしょう。
アライアを使ってこれほど波に乗れるようになるにはかなりの年月が必要となりそうですが、それを実現しているのもロブマチャドが本当にアライアを気に入っているからにほかなりません。なお、動画を最後まで見ると分かりますが、この現代版にリメイクされているアライアボードでもリーシュコードは付いていませんので波に吹っ飛ばされればボードを回収するだけでも大変です。
そうした苦労を重ねてでも乗りたいと思わせる魅力がアライアにはあるということでしょうね。