この記事では神秘的な見た目を特徴とする「リュウグウノツカイ」の特徴や生態をご紹介していきます。
リュウグウノツカイは人魚伝説のモデルになったと考えられている魚です。
大きな銀色の身体と長く伸びた赤い鰭を持つリュウグウノツカイは、古代の人間たちからして異形の生き物に見えたのかもしれません。
ここでは、そんなリュウグウノツカイの生息地・大きさ・寿命などを詳しくまとめました。
そのほかリュウグウノツカイはどうやって繁殖するのか?リュウグウノツカイは何を食べているのか?といった疑問に答えていますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
リュウグウノツカイとは?
リュウグウノツカイは「アカマンボウ目リュウグウノツカイ科」に分類される魚の総称です。
リュウグウノツカイ科は2属に分かれ、全部で3種類のリュウグウノツカイが存在します。
かつては1種のみとされていましたが、各分布域における遺伝子情報を調査したところ、少なくとも2属3種類のリュウグウノツカイがいることが判明しています。
リュウグウノツカイは水深200m~1000mの深海に生息する、いわゆる「深海魚」です。
そのため、普段はあまり姿を見る機会がありません。
とはいえ、ものすごく珍しい魚というわけではなく、日本を含め世界中の海で昔から目撃情報があります。
そんなリュウグウノツカイは見た目がとても特徴的です。
身体は平べったく、体色は銀色でタチウオを連想させるフォルムをしています。
また、印象的なのは頭部から背中にかけて長く伸びた赤い鰭を持っているところです。
腹部には糸状に成長した赤い鰭があり、これが舟を漕ぐオールに見えることから海外では「オールフィッシュ」と呼ばれることもあるそうです。
ちなみにこの糸状をした鰭にはエサを探知する機能があると考えられています。
なお、リュウグウノツカイは生きたまま捕獲することが難しく、また飼育も困難な魚です。
そのため、生きたまま展示している水族館はありません。
※過去、兵庫県の城崎マリンワールドで生きた状態のリュウグウノツカイが展示されましたが、飼育が困難なためすぐに亡くなってしまいました。
何を食べる?
これまでの調査によってリュウグウノツカイは主にプランクトンを食べることが分かっています。
なお、深海に生息する魚は食べられるものが限られているので、オキアミのような小さい生物を主食とすることが多いようです。
逆に体長3m~5mほどのリュウグウノツカイを食べるような外敵は、同深度の海にあまり存在しないと考えられています。
どうやって繁殖する?
リュウグウノツカイは卵生で、卵を海中に放出して孵化を待ちます。
卵から孵った稚魚は表層に近い海域でプランクトンを摂取し、ある程度大きくなったら水深200m~1000mの深海へと戻っていくそうです。
ただし、リュウグウノツカイに関しては分かっていないことが多く、子育ての仕方や繁殖相手の見つけ方などは不明となっています。
なお、沖縄県では偶然に獲れた2匹のリュウグウノツカイ(オスとメス)から精子と卵子を採取し、人工授精と人工孵化を成功させています。
これによってリュウグウノツカイの生態がより詳しく分かる可能性があり、現在でも研究が進められているとのことです。
自ら尻尾を切ることも?
リュウグウノツカイが普段生活をしている深海ではエサが獲れない日々が続くことも珍しくありません。
そんなエサなし状態が続くと、リュウグウノツカイは自らの尻尾を切って省エネの身体を作るそうです。
(エネルギーを使う身体部分を少なくして食糧不足を乗り切るといったイメージ)
ちなみにリュウグウノツカイは生きるために必要な臓器や器官が身体の前面(腹部から頭部側)に集中しているので、尻尾を切っても生きるのに差し支えがありません。
とはいえ、トカゲのように切った尻尾が再生することはないので、一度切ってしまうとそのままの状態で成長していきます。
リュウグウノツカイの名前の由来
リュウグウノツカイという名前は、その見た目に由来します。
まるで竜宮城からの使者のように神秘的で印象に残る姿をしていることから、その名前が付けられました。
なお、中国では鶏のトサカに似た赤い鰭を持つことから「鶏冠刀魚」と呼ばれ、台湾では地震の前後に多く打ち上げられることから「地震魚」と呼ばれています。
※台湾では他に「皇帯魚」と呼ばれることもある。
リュウグウノツカイの特徴・生態
ここからはリュウグウノツカイの生息地・大きさ・寿命といった生態をご紹介していきます。
生息地
リュウグウノツカイの生息地は主に太平洋とインド洋の深海部です。
日本で考えると北海道から九州にかけての太平洋沿岸部、日本海から東シナ海にかけての海域に生息しています。
ちなみに昔は日本海でリュウグウノツカイを見かけることが多く、太平洋側ではあまりその姿を見かけられませんでした。
しかし、近年になり調査が進んだ結果、太平洋側でもリュウグウノツカイが生息していることが分かっています。
なお、リュウグウノツカイはタチウオのように直立した状態で海中を浮遊しているそうですが、実際に直立している姿や泳ぐ姿を映した記録はほとんどありません。
こうした情報の少なさもリュウグウノツカイの神秘性に繋がる部分と言えるでしょう。
大きさ
リュウグウノツカイの体長はだいたい3m前後です。
大きい個体だと8m~10mくらいまで成長することもあります。
体重で換算すると30kg~50kg程度となりますが、これは現在のところ生き残っている硬骨魚類の中で最長・最大のサイズです。
仮に体長1.5m~2mくらいの個体でも、昔の人が人魚と見間違うには十分な大きさと言えるでしょう。
寿命
リュウグウノツカイの寿命は20年程度です。
とはいえ、これは現在までに分かっている寿命なので正確にどれくらいまで生きるかは判明していません。
なお、一般的に深海魚は深度が増すごとに寿命が延びるケースが多いとされています。(そのほか体の大きさや食性も大事な要素)
リュウグウノツカイに関する伝説
リュウグウノツカイに関しては、昔から様々な伝説があります。
特に有名なのは「人魚伝説」です。
日本では各地で人魚の目撃情報があり、現代ではリュウグウノツカイがその正体だったのではないか?という説が有力視されています。
ちなみに「人魚=リュウグウノツカイ説」を裏付ける根拠としては、古い文献で共通して「銀白色の肉体に赤い髪を持つ」といった表現が使われている部分が挙げられます。
これはリュウグウノツカイの見た目とほぼ同じであり、当時は巨大な魚が人間の姿に見えたのかもしれません。
※リュウグウノツカイの身体は頭部が大きく、尻尾に掛けて細くなっていくので、このあたりもイメージ上の人魚に似ていることが分かる。
こうした人魚伝説は日本だけでなく世界中で語り継がれていますが、日本ではリュウグウノツカイを神秘的なものとして扱い「誤って捕らえた場合は海に帰す」といった風習を持つところも残っています。
まとめ
神秘的な見た目や生態を持つ「リュウグウノツカイ」に関する情報をまとめてきました。
ご覧いただいたようにリュウグウノツカイは深海魚の一種であり、人魚伝説のモデルになった魚でもあります。
ちなみにリュウグウノツカイを含め、深海魚が多く打ち上げられると地震が起きるという説は信憑性が乏しく、実際に関連性があるとは言い切れないとのことです。