この記事では愛らしい見た目が特徴的な「オットセイ」に関する情報をご紹介していきます。
オットセイは「アシカ科」に属する海洋哺乳類の一種です。
水族館でも人気の高い生き物として有名ですが、オットセイには意外と知られていない生態や特徴などがたくさんあります。
ここでは、そんなオットセイの生息地・種類・寿命・食性・鳴き声といった部分を分かりやすくまとめました。
また、「オットセイとアシカの違い」についても解説していますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
オットセイとは?
オットセイは「哺乳綱・鰭脚類・アシカ科」に属する生き物です。
アシカ科にはトドやオタリア、各アシカ属が含まれていて、そのうちオットセイは「キタオットセイ属」と「ミナミオットセイ属」の2つに分けられています。
つまりオットセイはトドやアシカと親戚関係にあるような生き物ということです。
ちなみにキタオットセイ属は「キタオットセイ」だけで構成されていますが、ミナミオットセイ属には「ミナミアフリカオットセイ」や「ナンキョクオットセイ」など様々な種類が存在します。(種類については生息地の欄で解説)
なお、オットセイの大きさは種類によっても異なりますが、キタオットセイの場合は「オス2m~2.1m」「メス1.5m~1.6m」くらいです。
体重はオスが200kgくらいに対してメスが50kg~60kgくらいなので、一目で雌雄の判別が付きます。
オットセイは淡水でも生活できる
オットセイというと「海の生き物」といった印象が強いと思いますが、実は淡水でも生息することが可能です。
実際に国内の水族館では淡水でオットセイを飼育しているところもありますので、理論上は川や湖でも生活できることになります。
ちなみにオットセイは陸上・水中のどちらでも寝ることができる珍しい生き物です。
なお、水中で寝るときにはイルカと同じように「脳の片側」だけを眠らせて、もう片方の脳を使い泳ぎや呼吸をおこないます。
(陸上では完全な睡眠をとる)
オットセイの名前の由来
「オットセイ」という名前は日本語であり、漢字では「膃肭臍」と書きます。
もともとはアイヌ語の「オンネカムイ(老大な神様)」「オンネプ(老大なもの)」などが語源とされていて、遥か昔この呼び名が中国に伝わったとき「膃肭」という漢字を当てられたようです。
当時はオットセイの陰茎や睾丸に「精力剤」としての効果があると信じられていて、実際に漢方薬や生薬として重宝されていました。
その陰茎や睾丸にあたる部分が「臍」であることから、「膃肭」と「臍」を足して「膃肭臍」と呼ぶようになったということです。
※本来は「臍=へそ」を意味する漢字。ただし、へそから陰茎・睾丸までまとめて取り出していたことから同漢字が使われるようになったという説がある
ちなみに英語だとオットセイは「Fur seal(毛皮のアザラシ)」と呼ばれています。
日本でのオットセイの歴史
かつては北海道から東北あたりにかけて数多くのキタオットセイが生息していました。
しかし、「毛皮が高値で売れる」「陰茎や睾丸が生薬として使える」などの理由によって乱獲が始まり、1910年ごろにはキタオットセイの個体数が激減することとなります。
その後、オットセイと同じように乱獲されていたラッコと共に「捕獲規制」が決まったものの、以前ほどの個体数には回復していません。
ちなみに「徳川家康への献上品(または薬)としてオットセイが贈られた」といった記録も残っていますので、1600年代(江戸時代初期)にはオットセイの捕獲が始まっていたと考えられます。
オットセイの生態・特徴
ここからはオットセイの生態や特徴を詳しくご紹介していきます。
生息地
オットセイには「キタオットセイ属」と「ミナミオットセイ属」の2つが存在します。
キタオットセイは名前の通り北太平洋に生息していますが、主な場所としてはベーリング海・オホーツク海・日本近海太平洋側などが挙げられます。
(越冬するために宮城県~福島県あたりまで南下してくる)
ミナミオットセイは種類によって生息地が異なりますが、代表的なものを以下にまとめたので参考にしてみてください。
○ミナミオットセイ属の種類と生息地
・ナンキョクオットセイ:南極海域
・フェルナンデスオットセイ:南米チリ沿岸部
・ガラパゴスオットセイ:ガラパゴス諸島周辺
・ミナミアフリカオットセイ:アフリカ南西部およびオーストラリア南部
・ニュージーランドオットセイ:ニュージーランドおよびオーストラリア南部
・ミナミアメリカオットセイ:南米大陸南西部から南東部
ご覧のようにミナミオットセイは色々なところに生息していて、それぞれの場所にちなんだ名前が付けられています。
食性
オットセイは魚類・甲殻類・頭足類などを食べる「肉食性」の生き物です。
具体的にはハダカイワシ・マイワシ・スケトウダラ・エビ・タコ・イカといったものをエサとしています。
一部の種類においては「ペンギンを捕食するケースもある」と言われていますが、すべてのオットセイがペンギンを食べるわけではありません。
ちなみに水族館で飼育されているオットセイはイワシ・ニシン・サンマなどの魚を与えられています。
生殖
オットセイは哺乳類なので有性生殖をおこないます。
なお、妊娠期間は1年ほどで1回につき1頭の子供を産みます。(種類によっては妊娠期間が10ヶ月ほどの場合もある)
そんなオットセイの世界では一夫多妻制が基本です。
生殖期間になると力の強いオスが複数のメスを囲い、いわゆる「ハーレム」を形成します。
他のオットセイに負けたオスは相手を見つけられず「生涯独身のまま」というケースも珍しくありません。
鳴き声の特徴
オットセイの鳴き声は犬やライオンの鳴き声に似ています。
実際にオットセイの鳴き声を聞いてみると「ワゥンワゥン」「オォーン」と鳴いているのが分かると思います。
ちなみに犬はイヌ科、ライオンはネコ科です。
オットセイは「哺乳綱ネコ目イヌ亜目鰭脚類アシカ科」というなかなか複雑な分類をされているので、犬やライオンと似た声が出るのかもしれません。
寿命
野生下におけるオットセイの寿命は「オス15年前後」「メス25年~30年前後」といわれています。
性成熟に掛かる時間はオスが7~9年、メスが3~4年とされているので、オスは晩年になってから子作りを始めるようなイメージです。
ただし、野生の中にはオットセイを狙う天敵(ホオジロザメやシャチなど)が多いため、寿命まで生きられない個体もたくさん存在します。
オットセイとアシカの違い
それでは最後にオットセイとアシカの違いについて見ていきましょう。
オットセイとアシカでもっとも違う部分は体毛です。
オットセイはフサフサ・モサモサした体毛に覆われていますが、アシカはどちらかと言えばツルンとした見た目をしています。
(オットセイは長い体毛によって保温をおこなう)
また「オットセイはアシカよりも前ヒレ(前あし)が長い」というのも見分け方のひとつです。
ただし、身体の大きさに関してはアシカの方がまさっています。
水族館で見るときは、両者のうち「小ぶりでフサフサした体毛を持っている方がオットセイ」と覚えておきましょう。
関連記事:アシカの生態・特徴って?生息地・性格やオットセイとの違いも
まとめ
日本でも昔から慣れ親しまれてきた「オットセイ」に関する情報をご紹介してきました。
ご覧いただいた通り、オットセイは「キタオットセイ」と「ミナミオットセイ」の2つに分類されます。
また、ミナミオットセイの場合はさらに細かい種類分けがされていて、それぞれ異なる地域で生活を送っています。
オットセイはアシカ科の仲間なのでアシカやトドと似た特徴を持っていますが、アシカやトドほどは大きくありません。
そのため、水族館でオットセイを見つけるときには「ほかより身体が小さい種類」を目印に探してみてください。