この記事ではテトラポットなどの隙間でよく見かける「フナムシ」に関する情報をご紹介していきます。
海の近くに住んでいる方であれば、誰もが一度はフナムシを見かけたことがあるはずです。
フナムシはゴキブリのような見た目をしていることもあり、大半の方から嫌われる存在となっています。
しかし、フナムシとゴキブリには明確な違いがあります。
ここでは、そんなフナムシの生態や特徴、ゴキブリとの違いや「人間にとって害があるのか?」などを分かりやすくまとめてみました。
海に出向くことが多い方は、ぜひこちらの内容をご覧になってみてください。
フナムシとは?
フナムシは「甲殻綱等脚目フナムシ科フナムシ属」に分類される生き物です。
熱帯・温帯の地域に生息する生き物で、海岸に近いところでしか生きられないといった特徴を持っています。(理由については後述あり)
日本の海岸にもよく生息しているので見かけたことがある人は多いはずです。
平べったい身体をしたフナムシの大きさはだいたい5センチほどで、7対の足に長い触角を持っています。
また、海水に濡れていることもありますが、フナムシの身体は光沢を帯びた見た目をしています。
こうした見た目の特徴をまとめてみるとゴキブリに瓜二つといった感じもしますが、実際のところフナムシとゴキブリはまったく別の生き物です。
とはいえ、フナムシは英語で「wharf roach(ふ頭のゴキブリ)」と呼ばれているため、海外の人からもゴキブリのような存在として扱われていることが分かります。
なお、日本名の「フナムシ」は「船に侵入してくる虫」という意味から名付けられていますが、正確に言いますとフナムシは「虫」というカテゴリーに入りません。
フナムシは生物学的に「甲殻綱」と分類されていますので、簡単に言えばカニ・エビと同じ仲間ということになります。
もちろん見た目が異なるため「カニやエビと一緒」と言われても納得できないと思いますが、もう少しフナムシに寄せて「オオグソクムシなどと同じカテゴリー」と言われれば何となく腑に落ちるかもしれません。
ちなみにフナムシという呼び名は全国共通ですが、長崎県あたりでは「アマメ」「アモメ」と呼ぶこともあるそうです。
フナムシの特徴・生態
ここからはフナムシの色々な特徴や生態をご紹介していきます。
動きが俊敏
フナムシを見たことがある人なら分かると思いますが、フナムシはとても俊敏な動きを見せます。
テトラポットの隙間に石などを投げ込んでみると群れを成したフナムシがババッ!と動き出しますが、そのスピードはなかなかのものです。
ちなみに一般的なゴキブリと比べてもフナムシの動きは素早いので、簡単に捕獲することはできません。
なお、フナムシは一応「泳げる」とされています。
しかし、これはあくまで一時的なものであり、近くにテトラポットなどの登れる場所がなければ海で溺れます。
特殊な呼吸方法
フナムシは肺を持っていませんのでエラ呼吸をします。
このエラ呼吸の仕方が独特で、足の内側にある「血管鰓(エラのようなもの)」という器官を使って呼吸をしているそうです。
フナムシは血管鰓がある足の内側が濡れている状態だと、空気中の酸素を溶かして呼吸をすることができます。
そのため、常に水分がある海岸や磯といった場所に生息しているわけです。
ちなみにフナムシはエラ呼吸をする生き物ではあるものの、水中では十分な酸素を摂り込めません。
こうした理由からもフナムシは海で溺死するケースがあるのです。
海の近くが生息地
フナムシの呼吸方法を見ても分かりますが、フナムシは海の近くでないと生きていけません。
しかし、海に落ちれば溺れることもあるというのが生き物としての矛盾点です。
また、フナムシは乾燥に弱いため、長時間日の当たる場所にいるとカラカラに干からびてしまいます。
こうしたことから、フナムシは「テトラポット」などの日陰でしか生きられないわけです。
ゴキブリのような生き物ならどこにでも生息していそうなものですが、以上の理由によってフナムシは「陸地の家などでは見かけない」ということになっています。
食性
フナムシは雑食性で、海岸に打ち上げられた藻類や他の生き物の死骸などを食べて生活しています。
また、海岸に捨てられた人間の食べ物もフナムシにとってはエサとなります。
こうしたことからフナムシは「海岸の掃除役」といった表現もされているわけです。
産卵
フナムシにはオスとメスの区別があり、メスが産卵することで子供が生まれます。
メスのフナムシには保育嚢と呼ばれる器官があり、その中で卵を孵化させます。
なお、卵を持つメスのフナムシを捕まえると保育嚢から幼体のフナムシがたくさん出てきますが、見ていて気分の良い光景ではありません。
フナムシは人間に害はある?
フナムシには人間や他の生き物を攻撃するような器官がありません。
また、何かしらの毒も持っていないので、人間にとっては基本的に無害な生き物と言えます。
ただし、先ほども触れたようにフナムシは雑食性の生き物です。
そのため、長時間テトラポットや防波堤に座って釣りをしているとフナムシに咬まれることもあります。
とはいえ、噛まれても多少痛みを感じるだけで大きなケガに繋がることはありません。(血が出るようなこともほぼない)
フナムシとゴキブリの違い
フナムシとゴキブリは似ているようでまったく別の生き物です。
まず、フナムシはカニやエビといった甲殻類の生き物と同じグループに属しています。
対してゴキブリは「虫」です。
フナムシはオオグソクムシやダンゴムシといった生き物と同じように節足動物の一種となりますが、ゴキブリは「昆虫」なのでカテゴリー自体が違います。
また、前述の通りフナムシは海の近くでしか生きられない生物です。
しかし、ゴキブリはどんなところでも生きられる強い生命力を特徴としています。
活動の範囲や害虫としての存在感はゴキブリの方が圧倒的に上となりますが、このあたりもフナムシとの相違点と言えるでしょう。
フナムシを食べられる?
最近、昆虫食が話題になることが多々ありますが、そうなると「フナムシは食べられるのか?」といった疑問も出てくると思います。
結論から言えば「フナムシを食べることは可能だが、味自体は非常にまずい」というのが答えです。
実際にフナムシを食べた人の感想は「腐ったようなニオイがする」「苦味がすごい」といったものなので、率先して食べるものではないと言えます。
ただし、フナムシの足部分だけは「カニやエビと同じような甲殻類風の味がする」という意見もあるようです。
フナムシは釣りエサになる?
フナムシを釣りのエサとして使うことは可能です。
しかし、わざわざ苦労して捕獲するほどの価値はありません。
フナムシをエサとして使った場合、一応ハタやカサゴといった魚が釣れますが、一般的なエサを買ってきた方が効率的には良いと言えるでしょう。
まとめ
海岸でよく見かける虫のような生き物「フナムシ」について詳しく解説してきました。
ご覧いただいたようにフナムシはカニやエビ、オオグソクムシなどと同じカテゴリーに分類される生き物です。
見た目はゴキブリに似ていますが、その生物的特徴はゴキブリとまったく異なります。
なお、フナムシは海岸付近でしか生きられないので、海近くの家だとしても自宅で見かけることはまずないと言えるでしょう。