この記事では温暖な海域に生息し、獰猛な性格で知られる「ゴマモンガラ」に関する情報をご紹介していきます。
ゴマモンガラはダイビングやシュノーケリングを楽しむ方にとって天敵とも言える魚の一種です。
カニやエビといった甲殻類、さらにはサンゴまでも噛み砕く強靭な顎と歯を特徴とする魚で、実際にダイバーが襲われた事例もあります。
ここでは、そんなゴマモンガラの生息地や食性などを詳しくまとめました。
また、ゴマモンガラに襲われたときの対処法や知っておきたいゴマモンガラの生態も解説していますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
ゴマモンガラとは?
ゴマモンガラは「フグ目モンガラカワハギ科」に分類される魚です。
モンガラカワハギ科は11属に分けられますが、モンガラカワハギ属に含まれるのは「ゴマモンガラ」と「カワハギモンガラ」の2種のみとなります。
なお、大きなカテゴリーとしてはフグ目に分類されますが、ゴマモンガラに毒性はありません。
ただし、ウニやサンゴなどをそのまま噛み砕けるほど力強い歯を持ち、人間に対してもひるまず攻撃をしてくるところがゴマモンガラの特徴です。
大きな個体になると約70~75センチほどまで成長しますので、無防備なダイバーなどが襲われた場合にはケガをするリスクも高くなります。
ちなみに見た目としては「ギョロギョロとした目」「棘のあるヒレ」「暗い黄色の模様」などが特徴的な部分として挙げられます。
熱帯地域に生息する魚だけあって比較的「目立つ見た目」をしていますので、ダイビングなどを楽しんでいるときに見かけた場合は速やかにゴマモンガラから離れてください。
名前の由来や別名
ゴマモンガラ(胡麻紋殻)というのは和名で、英語では「Titan triggerfish」と呼ばれています。
タイタン(Titan)とはギリシャやローマの神話に登場する巨大な神様のことで、ゴマモンガラの大きさからその名前が付けられました。
なお、日本でゴマモンガラがよく観測されるのは沖縄周辺の海域ですが、沖縄の方言ではゴマモンガラのことを「かーはじゃー」「あかじきらなー」「ゆたーふくるばー」と呼ぶそうです。
ちなみに漢字で「胡麻紋殻」と書くのは、ゴマモンガラが幼魚のときの見た目に由来しています。(白っぽい体表にゴマ柄の斑点模様が見られるため)
実は賢い魚
ゴマモンガラは身体が大きく攻撃的な性格から「粗暴な魚」と捉えられることが多いのですが、実は「学習能力を持ち合わせる賢い魚」ということが分かっています。
同種の生態を調査する研究チームによると、ゴマモンガラはエサを捕まえるために様々な方法を試し、その中から最適解を導き出す能力があるとしています。
こうした賢さを持ち合わせる理由としては「脳の大きさ」が関係していると考えられていて、ゴマモンガラは「終脳」と呼ばれる吻の方から形成される組織が他の魚よりも比較的大きいそうです。
ゴマモンガラの産卵と赤ちゃん(幼魚)
ゴマモンガラは卵生で、メスが卵を産み落として赤ちゃんを育てます。
ゴマモンガラの産卵期は6~8月ごろで、基本的には水温が高い時期に子育てを始めるようです。
ちなみに成長すると大柄で怖いビジュアルになるゴマモンガラですが、赤ちゃんのころは見た目がまったく異なります。
黄白色の体表に黒い斑点模様をしたゴマモンガラの赤ちゃんは「小さいフグ」のような見た目で可愛らしさが感じられます。
なお、海底にすり鉢状の巣を作り、そこに卵を産み落として孵化するまで守るというのがゴマモンガラの習性です。
産卵期に卵の巣に近付くと縄張り意識が強いゴマモンガラから攻撃を受ける危険性が増すので、6~8月ごろにダイビングをするときは特に注意しましょう。
ゴマモンガラの危険性
ゴマモンガラは噛む力がとても強く、攻撃された場合にはウェットスーツ越しでもケガをすることが少なくありません。
実際に国内・海外問わずゴマモンガラによる攻撃で負傷をしたダイバーはたくさんいます。
日本では沖縄県の近海や鹿児島県・屋久島の周りによく生息していますので、旅行などでダイビング体験をするときにはガイドの注意をしっかりと聞いておきましょう。
また、ゴマモンガラはヒレに棘があり、触れるとケガをする危険性もあります。
そんなゴマモンガラは浅瀬にあるサンゴ礁付近で活動することが多いので、キレイなサンゴ礁を鑑賞しながらも周囲への警戒を怠らないことが大切です。
なお、ゴマモンガラから攻撃を受けるケースとして多いのは「ゴマモンガラの巣や卵の近く(縄張り)に入ってしまった」という場合です。
こうしたケースにおいては速やかに縄張りから出ることが有効的なので、縦移動ではなく横移動でその場から離れてください。(縦移動で急激に水深を上げると身体に大きな負荷が掛かるため)
万が一、ゴマモンガラから攻撃を受けそうなときはフィンなどを使って自分の身体側に寄せ付けないよう自衛することも必要となってきます。(必要以上にこちら側が攻撃するのはNG)
ゴマモンガラの特徴・生態
ここでは「ゴマモンガラが生息する場所はどこか?」「ゴマモンガラはどんなものを食べるのか?」といった疑問を解消していきます。
生息地
ゴマモンガラの生息地は亜熱帯や熱帯の海域です。
比較的沿岸部に近く、浅瀬にあるサンゴ礁周辺に生息しています。
(サンゴ礁がない海域でも生息することは可能)
日本の場合だと神奈川県より南側の海域であればゴマモンガラが生息している可能性があり、堤防釣りなどで引っ掛かるケースもあります。
世界の海で考えてみると西太平洋やインド洋に分布していますので、南国へ旅行に行った際は見かけることがあるかもしれません。
食性
ゴマモンガラの食性は「雑食性」で、主にエビやカニなどの甲殻類や貝類をエサとしています。
また、ゴマモンガラはサンゴを食べることでも知られていますが、とにかく強靭な歯を使って相手をかみ砕くことが得意な魚です。
たとえウニが相手でも周りの殻を気にせずバリバリと食べますので、貝類などにとっては天敵のような存在と言えるでしょう。
ちなみにそんなゴマモンガラでもサメやウツボといった大型種に捕食されることはあります。
ゴマモンガラは食べられる?
ゴマモンガラはモンガラカワハギ属に分類されますが、カワハギのように白身ではなく赤身の魚です。
沖縄では一般的な食材として扱われていて、実際に家庭料理として出されることも多々あります。
ゴマモンガラは刺身にして食べることが多く、その身はカワハギとは違った食感や味わいが楽しめます。
また、地域によっては一口大にカットしたゴマモンガラをサッと塩茹でして食べるところもあるそうです。
ちなみにゴマモンガラの身や血に毒はないので、素人でも捌くことはできます。
まとめ
ダイビングやシュノーケリングを趣味とする方にとって注意が必要な「ゴマモンガラ」に関する情報をまとめてきました。
ご覧いただいたようにゴマモンガラは縄張り意識が強く、巣に近付く人間に対しては躊躇なく攻撃をしてくる魚です。
ウェットスーツ越しでもケガを負う危険性があるので、見かけた場合には速やかにその場から離れるようにしましょう。
とはいえ、そんなゴマモンガラも沖縄では食用として扱われている魚の一種です。
沖縄の飲食店でゴマモンガラの料理を見つけた際には、一度その味を試してみるのも悪くないかと思います。