青潮とは?原因や影響は?対策も解説

この記事では海が青く見える自然現象「青潮」に関する情報をご紹介していきます。

海が青く見えるのは「良いこと」のように感じられますが、青潮は海の生態系や私たち人間の生活に「悪影響」を与えるものです。

青潮が発生した海では多くの魚たちや貝類などが死滅していってしまいます。

また、青潮の根本的な原因は「プランクトンの死骸」となりますが、青潮が発生すると海から非常にイヤな臭気が漂ってきます。

そんな青潮が発生する原因・影響・対策といった部分を、ここでは分かりやすくまとめてみました。

マリンレジャーや釣りなどを趣味とする方、海の近くに住んでいる方は、ぜひこちらの内容を最後までご覧になっていってください。

青潮とは?

青潮とは、異常増殖したプランクトンの死骸が海中で分解されるとき、そこで発生した硫化物がコロイド化して海を青く染め上げる現象のことを指します。

とはいえ、コロイド化した硫化物が実際に青色をしているわけではありません。

コロイド化した硫化物は白濁した色となるのですが、これが海の色と混じることで普段とは違った色に見えるだけです。

そんな青潮がよく発生するのは海流が緩やかで、海水が留まりやすい海域となります。

代表的な場所としては東京湾が挙げられますが、東京湾は外海との対流が少ないといった地理的要因に加えて「海底が穴だらけになっている」という要因も持ち合わせています。

これは埋め立てに使う土や砂を湾内の海底から掘り起こしたという経緯によるものですが、穴状になった海底では海水が一定の場所に留まりやすいので青潮が起こりやすいわけです。

青潮が発生すると海中の酸素濃度が下がり、そこで暮らしている海の生き物たちが死滅していってしまいます。

天然ものや養殖ものといった区別なく貝類や魚たちが死滅してしまうため、漁業や水産業の方からすると青潮の発生は深刻な問題です。

青潮の原因

続いては「なぜ青潮が発生するのか?」という原因を解説していきます。

青潮が発生する根本的な原因は「赤潮によって生み出された大量のプランクトン」です。

赤潮とは海中の栄養素が増えることで、植物プランクトンが異常増殖し海の色が赤くなる自然現象のことを指します。

「青潮」という言葉はこの赤潮に掛けて生まれたものとなりますが、大量に増えたプランクトンたちはやがて死滅していきます。

こうしたプランクトンの死骸が青潮の原因となる「硫化物」を生み出してしまうわけです。

ここでは赤潮から青潮への流れを段階的にまとめましたのでご覧ください。

①赤潮の発生

赤潮はプランクトンのエサとなる窒素やリンが増えた海で起こります。

窒素やリンといった栄養素が増えると植物プランクトンが大量に発生するわけですが、それらをエサとする動物プランクトンや小型の生物たちも集まってきます。

こうした赤潮が発生するのは生活排水や工場排水、河川から様々な栄養を含んだ水が海へと流れ込んでしまうことが原因です。

また、富栄養化した海水が一定のところに留まりやすい地形というのも要因のひとつと言えます。

②大量のプランクトンが分解される

赤潮を引き起こすプランクトンはやがて死滅していきます。

死滅したプランクトンは海中や海底に留まっていきますが、これらを分解するためには大量の「酸素」が必要です。

酸素というものは海水中にも含まれていますが、地上と違い限りがあります。

限りのある酸素を大量に使ってプランクトンを分解すると、海中には「貧酸素水塊」が形成されていくわけです。

③酸素が薄いところで硫化物が生まれる

貝類や魚類を含め、多くの生物は酸素なしでは生きていけません。

しかし、海の中には酸素を必要としない菌類が存在し、こうした菌類を「嫌気性菌」と呼びます。

そして、この嫌気性菌のうち「硫酸還元細菌」というものが青潮の発生原因となります。

硫酸還元細菌は海中の硫酸イオンをエネルギーとして活動する菌類です。

この2つが結びつくと「硫化物」が生成されるのですが、海中の硫化物が海面まで辿り着き酸素に触れると「コロイド化」して硫酸コロイドとなります。

硫酸コロイドは白濁した色を持ち合わせているため、結果的に海面がいつもと違った青色に染まるということです。

ここまでが赤潮から青潮に変化する流れとなりますが、先ほども触れたように「海水が留まりやすい地形」というのも青潮が発生する原因と言えます。

青潮による影響

青潮は「海中の酸素が少なくなると発生する」ため、そこに生息する魚類や貝類は大きなダメージを受けます。

また、海中に漂う大量のプランクトンが魚のエラなどに詰まり、窒息死を引き起こすという点も深刻な問題です。

このように青潮が発生する過程には海の生態系を壊す要因が多く含まれており、漁業や水産業にも悪影響を与えます。

さらに硫酸コロイドで埋め尽くされた海面は悪臭を発するため、周辺の漁港や海岸では少なからず「生活的かつ人的な被害」も出ます。

青潮の対策方法

海の生物や人間に対して悪影響を及ぼす青潮ですが、現在のところは以下のような対策が講じられています。

○海中に酸素を送る方法
こちらは、青潮が起こりやすい海域や海底に酸素を送り込むことで「貧酸素水塊」を作らないようにするという方法です。

酸素が不足しなければ青潮の原因である「嫌気性菌」も生まれないので、物理的な部分で効果的な対策と言えます。

○赤潮(青潮の発生原因)を抑制する方法
青潮は「赤潮の発生が引き金」となっていますので、その赤潮を起こさないようにするという対策も有効的です。

具体的には「海の水質を一定に保つこと(排水の調整)」や「藻場の再生」といった方法が実践されています。

○青潮が発生しにくい環境を整える方法
「海流が緩やかで海水がその場に留まりやすい」という地理的要因を解消するために、海底の窪地や穴をふさぐといった対策も取られています。

ちなみに東京湾のような埋め立て地では、一度掘ったところを再度ふさぐ作業がおこなわれています。

青潮の海で釣りはできる?

青潮でも釣りをすること自体は可能ですが、悪臭を伴う海で釣れた魚を食べたいと思う人は少ないはずです。

また、青潮の海では魚の量が減るため、単純に「釣りづらい」「釣れない」といったデメリットもあります。

そのため、青潮が発生している期間に釣りをすることはおすすめしません。

なお、こうした青潮が発生しているかどうかは各自治体のホームページや公的なサイトをチェックしてみましょう。

もしくはSNSを使ってリアルタイムの青潮情報を調べるというのも有効的です。

青潮・赤潮・黒潮の違い

最後に青潮と似た言葉である「赤潮」「黒潮」の違いをご紹介していきます。

赤潮は先ほどから触れているように「大量のプランクトンが異常増殖し、海が赤く見える現象」のことです。

青潮の発生原因ともなる現象であり、青潮を防ぐためにはプランクトンが異常増殖するのを抑制しなければなりません。

一方、黒潮はこうしたものとはまったく異なります。

黒潮とは日本の南方から北上してくる「潮の流れ」のことです。

暖かい季節になるとカツオやマグロといった大型の回遊魚は黒潮に乗って日本近海までやってきます。

また、北から南下してくる「親潮」とぶつかることで、魚たちが豊富な漁場を作り上げるのにも一役買っています。

このように「青潮・赤潮」と「黒潮」はまったく別のものということです。

関連記事:親潮(千島海流)とは?名前の由来や黒潮との違いなど

まとめ

東京湾などで発生することが多い「青潮」という自然現象について詳しく解説してきました。

ご覧いただいたように青潮は漁業や水産業に大きなダメージを与えます。

また、貝類や魚類といった海の生態系を守るためにも発生を抑制しなければなりません。

青潮が発生する原因は「海の富栄養化」「プランクトンの異常増殖」「海水が留まりやすい地形」です。

こうした原因を取り除くために、国や自治体では様々な対策が講じられています。

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