赤潮とは?原因や影響は?対策も解説

この記事では海で発生する自然現象のひとつ「赤潮」について詳しく解説していきます。

赤潮とはプランクトンが異常に増殖して海の色を変える現象のことです。

増殖するプランクトンの種類によって色が変わることもありますが、だいたいは海面が赤褐色に染まります。

ここでは、そんな赤潮が「なぜ発生するのか?」「魚や人間にどういった影響を与えるのか?」といった部分を分かりやすくまとめました。

釣りやマリンレジャーを趣味とする方だけでなく、多くの方にとって赤潮は重要な問題です。

赤潮の基礎知識を身につけることは自然環境や自分を守ることに繋がりますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。

赤潮とは?

赤潮とは「海中のプランクトンが異常に増殖し、海面が赤く見える自然現象」のことです。

本来、海の中のプランクトンが増えることはそれらをエサとする貝類や魚類にとって好ましい状態と言えます。

しかし、プランクトンが増えすぎると「死滅したプランクトンが魚のエラに詰まって窒息死を起こす」「無害だった貝類などが有毒化する」といった悪影響が出てきてしまいます。

また、赤潮によって景観が損なわれるというのもマイナスな部分です。

こうしたことから赤潮は漁業・水産業・観光業にとって忌避される存在となっているわけです。

ちなみに赤潮が発生しやすいのは窒素やリンといったプランクトンに必要な栄養素が留まりやすい海域とされています。

特に東京湾では多くの赤潮が観測されているため、東京都では以下のような基準を設けています。

○東京都の赤潮判定基準
・海水が、茶褐、黄褐、緑色などの色を呈していること。
・透明度が、おおむね1.5m以下に低下していること。
・顕微鏡下で赤潮プランクトンが多量に存在しているのが確認できること。
・クロロフィル濃度(Lorenzen法によるクロロフィルaとフェオ色素の合計)が50mg/m3以上あること。(ただし、動物プランクトン等クロロフィルを有さないものはこの限りではない)
参考:東京都環境局

なお、赤潮というと「生活排水や工場排水がすべての原因」と思われがちですが、奈良時代(西暦700年代)にはすでに赤潮と同じような現象が起きていたと過去の文献から分かっています。

つまり、自然な生活をおこなっていても赤潮が発生する可能性はあるということです。

赤潮の原因

赤潮

「植物プランクトンのエサとなる窒素やリンが大量に留まり、成長に適した温度が保たれている」というのが赤潮の主な発生原因となります。

潮流が少なく栄養素が溜まりやすい海域では植物プランクトンが増え、それをエサとする動物プランクトンや微細な生物が集まってきます。

こうしたプランクトン類が異常に増えることで赤潮という現象は起きるわけです。

なお、必要以上の栄養素が海中に溜まってしまう原因には「生活排水」「工場排水」の問題も挙げられますが、これがすべてというわけではありません。

地理的な条件や気温といった部分も赤潮の発生原因として考えられます。
(赤潮プランクトンと争う別のプランクトンの減少というのも原因のひとつ)

赤潮による影響

続いては赤潮による様々な影響についてご紹介していきます。

生態系や漁業への影響

赤潮が発生すると微細なプランクトンが魚などのエラに詰まり窒息死が引き起こされてしまいます。

これにより魚介類の漁獲量が減ってしまうというのが大きな問題です。

また、生物にとって有害なプランクトンが増殖した場合には窒息以外の悪影響も出てきます。

たとえば藻類や貝類の数が少なくなるとそれらをエサにする魚たちが飢える、もしくは生息場所を変えるといったことになるわけですが、これは生態系の維持という観点において非常に悪影響です。

もちろん魚たちが生息地を変えてしまえば赤潮発生時だけでなく、長期間にわたって漁業・水産業にダメージを与えます。

景観への影響

赤潮の発生は海の景観を壊すことにも繋がります。

異常増殖したプランクトンや魚の死骸が浮かぶ海を見たいという方はいませんので、結果的には観光業にも悪影響を与えることになるわけです。

赤潮の毒性と人体への影響

赤潮が頻繁に発生する海では、有害なプランクトンの影響によって藻類や貝類が有毒化してしまいます。

たとえばアレキサンドリウムなどの有毒な渦鞭毛藻類が増えると、それをエサとする貝類が毒を持つようになります。

当然、有毒化した貝類を人間が食べれば何かしらの症状を訴えることになりますので非常に危険です。

また、有毒化した藻類や貝類を魚たちが食べると生物濃縮が起こり、毒性がより増してしまうことも珍しくありません。

ちなみに有毒な魚や貝類を食べたときの主な症状としては呼吸麻痺・下痢・嘔吐などが挙げられます。

これは一般的な食中毒と同じような症状となりますが、有害な藻類を由来とする毒素はタンパク質毒素とは異なり「加熱処理」によって分解されることがありません。

とはいえ、日本の場合は漁獲物に対する定期的な検査がおこなわれているので、毒性を持つ魚や貝類が市場に出回る心配はないと言えます。

※こうした検査をおこなっていない国で海産物を食べるとお腹を壊す原因になります。

赤潮の対策方法

赤潮

日本では赤潮への対策として「排水基準の見直し」や「ウイルスによるプランクトンの抑制」などがおこなわれています。

また、河川が流れ込む水域の環境改善なども赤潮対策のひとつです。

赤潮が発生する主な原因には植物プランクトンのエサとなるリンの増加が挙げられます。

このリンを増やさないために、全国の排水施設では生活排水や工場排水の基準を適切なものとする取り組みがおこなわれています。

ちなみに以前は排水する水質の基準を高め、とにかく海をキレイな状態にするといった取り組みがおこなわれていました。

しかし、その方法だと無害な藻類・貝類・魚たちにとって必要な栄養素もなくなるということで、現在は基準値をあえて下げるところもあるようです。

そのほか、赤潮の原因となるプランクトンにとって有害なウイルスをあえて感染させるという方法も研究・実施されています。

赤潮のリアルタイム情報を確認する方法

赤潮が発生していると釣りや海水浴といったレジャーが楽しめなくなります。

そのため、赤潮が発生しているかどうかをリアルタイムで確認したい場合は「Twitter」などのSNSを活用してみましょう。

「○○(海や海岸の名前) 赤潮」で検索すれば、そのときの赤潮情報がアップされていることもあります。

海まで距離がある場合、数時間かけて海まで訪れる場合は事前に赤潮が発生していないかどうかを確認してください。

赤潮の中を泳ぐとどうなる?

「赤潮が発生している海で泳ぐとどうなるのか?」といった疑問を持っている方も多いようですが、赤潮の中を泳ぐことはおすすめしません。

まず、赤潮が発生している海は見た目が汚く、魚の死骸なども浮いている状態です。

また、大量のプランクトンが発生していることもあり、臭気からしても泳ぐ気がなくなると思います。

水中に漂うプランクトンの種類によって人体への影響は変わってきますが、確実に問題ないとは言えないので赤潮が発生している海域での遊泳は控えましょう。

まとめ

赤潮が発生する原因や周りへの影響、おこなっている対策について詳しくご紹介してきました。

ご覧いただいた通り、赤潮とは海中の栄養素が増えることによってプランクトンが異常増殖する自然現象を指します。

赤潮の原因には生活排水や工場排水の問題に加えて地理的な要因も含まれますが、どちらにしても海の生き物や人間にとって好ましい状態ではありません。

そのため、赤潮が発生しているときには海に近付かないよう心掛けてみてください。

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