親潮(千島海流)とは?名前の由来や黒潮との違いなど

この記事では日本の北側から南下してくる「親潮」に関する情報を詳しくご紹介していきます。

親潮は「千島海流」とも呼ばれる海流のひとつです。

千島列島からオホーツク海を超え、北海道・本州に流れてくる親潮はプランクトンが豊富で魚が育つには最適な環境とされています。

ここでは、そんな親潮の特徴や黒潮との違いを分かりやすくまとめてみました。

また、親潮にはどんな魚が生息しているのか?といった部分も解説していますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。

親潮(千島海流)とは?

親潮は千島列島から北海道を抜け、東北太平洋側へと流れてくる海流のことを指します。

日本の周りには様々な海流が存在しますが、親潮はその代表例のひとつです。

ベーリング海から南下してくる東カムチャッカ海流が親潮の大元となっていて、最終的には東北あたりで北太平洋海流に変わっていきます。
(北太平洋海流は太平洋を渡りカリフォルニアまで到達する)

なお、親潮が北太平洋海流となる際にぶつかるのが黒潮です。(厳密には緩衝海域があり直接ぶつかることは少ない)

親潮と黒潮が交わる東北三陸海岸沖や千葉県〜茨城県沖の海域は色々な魚が獲れる絶好の漁場として有名です。

ちなみに親潮が千島列島から東北まで流れ着く間には日本海側の暖かい海水を運ぶ「津軽暖流」も合流するため、青森県から宮城県にかけての沖合いは非常に複雑な海流を形成しています。

そんな親潮は海洋生物が生きるために欠かせない「栄養塩」がとても豊富です。

そのため、魚類だけでなく動物プランクトンも育ちやすい環境とされています。

東北や北海道の魚が「美味しい」と感じられるのは、こうした親潮の性質によるものと言えるでしょう。

親潮の名前の由来

「親潮」という名称は「魚を育てる親のような存在」といった理由から名付けられたものです。

北海道の釧路沖や東北の三陸沖は海水温と塩分濃度が低く、豊富な栄養塩を含んだ海域となっていますが、この海域や水塊自体を親潮と呼ぶこともあります。

親潮は暖かい季節になると太陽光を浴びる時間が長くなり、植物プランクトンが大量に発生します。

その植物プランクトンをエサとする動物プランクトンや小型の魚たちが集まり、豊かな生態系を維持しているわけです。

ただし、親潮のようにプランクトンが多い海域は太陽光を反射するため海水が濁って見えます。

南国の海が青く見えるのはプランクトンが少ないからであり、親潮はその逆の性質を持っているということです。

親潮の特徴

ここからは親潮の主な特徴について解説していきます。

親潮の流れ

日本の北方で発生する東カムチャッカ海流の一部が千島列島沿いに南下し、ウルップ海峡を超えて北海道東岸あたりに達すると親潮という海流に変化します。

北海道東岸まで到達した親潮は本州の三陸沖まで下り、その後は黒潮との潮目を境に「北太平洋海流」となります。

アメリカ大陸西岸に辿り着いた北太平洋海流はカリフォルニア海流に変わり、「北太平洋亜寒帯循環」と「北太平洋亜熱帯循環」に分かれて再び日本へと戻ってくるわけです。

・北太平洋亜寒帯循環:親潮の源となる海の流れ(反時計回り)
千島列島⇒北海道⇒東北⇒太平洋⇒カリフォルニア⇒バンクーバー⇒アラスカ湾⇒ベーリング海⇒オホーツク海⇒千島列島

・北太平洋亜熱帯循環:黒潮の源となる海の流れ(時計回り)
フィリピン海⇒東シナ海⇒九州⇒四国⇒関東・東北⇒太平洋⇒カリフォルニア⇒赤道付近⇒フィリピン海

ご覧の通り、北半球の太平洋内には反時計回りの大きな海流と時計回りの大きな海流の2つがあるということです。

親潮の栄養塩

親潮の特徴には「栄養豊富」という部分も挙げられます。

親潮の栄養塩は南方から訪れる黒潮の5倍~10倍と言われていますが、黒潮のような暖流に乗ってやってくるマグロやカツオなどは親潮で繁殖したプランクトンや小魚をエサにして大きく成長します。

このように、親潮は自身の海域だけでなく別海流に生きる魚たちの親でもあるわけです。

親潮の流速

親潮の速度はおよそ1ノット(時速2キロ弱)です。

対して南からやってくる黒潮は時速7キロほどなので、親潮はそこまで流れが強くない海流と言えます。

ちなみに親潮は1月ごろから南下を始め、4月ごろに三陸海岸のある宮城県付近へと到達します。

親潮の異常南下について

本来、4月ごろに東北太平洋側に辿り着く親潮ですが、稀に茨城県沖まで流れることがあります。

これを親潮の「異常南下」と呼びますが、親潮は冷たい海水を含む海流のため、通常よりも南下してしまうと茨城県〜千葉県沿岸部の漁業に悪影響をもたらしてしまいます。

また、親潮の引き上げ時期が遅れると東北地方が冷夏になるとも言われていますので、結果的には農業にもダメージを与えてしまうわけです。

親潮の異常南下が起きる要因は正確に分かっていませんが、冬の季節風の強さが親潮の南下を推し進めているのではと考えられています。

親潮と黒潮の違い

親潮と並び、日本近海で有名な海流が「黒潮」です。

黒潮はインドネシアやパプアニューギニアといった南の海域に発生する海流で、親潮より温度と塩分濃度が高いといった特徴を持っています。

また、黒潮の発生海域はマグロやカツオといった大型の魚が産卵する場所でもあり、こうした魚たちは暖かい海流に乗って日本近海へとやってきます。

そんな黒潮と親潮の違いは「栄養塩の多さ」です。

黒潮は塩分濃度こそ高いものの、プランクトンや魚たちのエサとなる栄養塩は多く含まれていません。

そのため、大型の回遊魚は豊富なエサを求めて北側へ移動するわけです。

ちなみにその他の違いとしては前述の通り「循環の方向(時計回り・半時計回り)」「海の色」などが挙げられます。

・親潮:半時計回りに循環し、海はやや緑掛かった色となる
・黒潮:時計回りに循環し、海は青と黒が混ざった色となる

さらに親潮と黒潮では育つ魚の種類も違いますが、その点については次項で詳しくご紹介していきます。

親潮に集まる魚・黒潮に集まる魚

親潮と黒潮に生息する主な魚の種類は以下の通りです。

親潮:マス、タラ、ホッケ、ニシン、カレイ、カジカ、サケなど
黒潮:カツオ、マグロ、イワシ、サンマなど

ご覧のように親潮と黒潮では生息する魚が異なります。

親潮には冷たい海に強い魚が集まり、黒潮には暖流を好む魚が集まるといったイメージです。

また、どちらかと言えば黒潮に生息する魚の方が大型であり、クジラ類も暖流に乗って北上してきます。

ちなみにホッケやニシンといった冷水性の魚は、茨城県~千葉県(銚子沖)が生息地の南限です。(日本海側では富山県あたり)

そのため、房総半島以南の海域では見かけることがありません。

関連記事:黒潮(日本海流)とは?特徴や大蛇行についても

まとめ

日本の周りを取り囲む海流の中でも代表的な「親潮(千島海流)」について解説してきました。

ご覧いただいたように親潮は栄養塩が豊富で、プランクトンや魚たちが成長する場として最適な環境を形成しています。

また、日本の南側から北上してくる黒潮と親潮がぶつかる「三陸海岸~房総半島」あたりの海域は、世界でも有数の漁場として知られています。

日本の食卓に美味しい魚が並ぶのはこうした親潮や黒潮のおかげと言えますので、ぜひ覚えておいてください。

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