この記事では数多く存在する魚の中でも珍しい能力を持つ「トビウオ」に関する情報をご紹介していきます。
ご存知の通り、トビウオは魚類でありながら水面上を滑空できる特殊な魚です。
日本では昔から食用魚として扱われていて、特に島根県ではトビウオが「県の魚」に認定されています。
ここでは、そんなトビウオの主な特徴や生態を詳しくまとめてみました。
「トビウオはどういったところに生息しているのか?」「トビウオはなぜ空を飛べるのか?」といった疑問を解消していきますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
トビウオとは?
トビウオは「ダツ目トビウオ科」に分類される魚の総称です。
温帯から亜熱帯の海域を好み、世界中の海に生息しているトビウオには、実に50を超える種類が存在します。
ちなみに日本近海だけでも30種類ほどのトビウオが観測されていますので、その数の多さが分かるはずです。
そんなトビウオはサンマやカツオといった魚と同じ「回遊魚」であり、季節ごとに移動しながら生活をしています。
日本近海でトビウオをよく見るシーズンは春先から夏にかけてのシーズンとなりますが、これは産卵のために日本近海へと北上してくるからです。
産卵を終えたトビウオは南下をはじめ、冬の間は日本よりも暖かい南側の海域で過ごします。
こうした理由もあり、市場でトビウオをよく見かけるのは初夏から初秋にかけての時期となっているわけです。
なお、冒頭でトビウオは島根県の「県の魚」に認定されていると伝えましたが、ほかにも京都府では「夏の県魚」、長崎県では「秋の県魚」になっています。
独自の進化
トビウオは「胃」を持たない魚です。
こうした魚を「無胃魚」と呼びますが、メダカや金魚も無胃魚の仲間なので、これ自体はそこまで珍しくありません。(ちなみにサンマも胃がない)
トビウオが少し変わっているのは真っ直ぐな形の消化器官(胃がない場合は腸)を持っているところです。
また、同じ重さの魚と比べて「骨の重量」が軽いところもトビウオならではの特徴と言えます。
もちろん、これは「水上を飛びやすくするため」にトビウオが独自に進化した結果です。
食べ物が身体に残ったままだと体重が重くなるので胃をなくし、さらに長い時間「空中」にいられることを目的として骨の重さや骨の量を減らしてきたものと考えられています。
トビウオの別名
地方によって異なりますが、トビウオは「アゴ」とも呼ばれている魚です。
また、別名としてはアキツトビウオやホントビといった呼ばれ方もされています。
ちなみに「アキツ」とはトンボのことであり、トビウオのヒレがトンボの羽のように見えることからその名前が付けられたようです。
トビウオはなぜ飛ぶ?
トビウオが海面上を飛ぶ理由は「捕食者から逃れるため」です。
トビウオの天敵はマグロやシイラといった肉食性の大型魚なので、そういった魚に食べられないよう空を飛んで逃げているわけです。
また、海面付近の表層にはトビウオがエサとする動物プランクトンがたくさん存在します。
そのため、より効率的にエサを食べるために海面近くを素早く動ける能力を身につけたとも言えます。
ちなみにトビウオは最長で400mくらいのジャンプが可能です。
時間にすると40秒以上の滑空を見せる個体も存在しますが、これほど長い時間のジャンプができるのはグライダーの役割を果たせる大きな胸ビレと腹ビレを持っているからです。
なお、トビウオは尾ビレを使って水中から空中へと飛び出しているのですが、着水の瞬間に尾ビレで海面を叩くことにより連続したジャンプもできるようになっています。
そんな特技を持つトビウオの最高速度はなんと時速60km前後です。
当然、人間とぶつかった場合は両者とも無事では済まない可能性があるので、船釣りをする際には注意が必要となります。
トビウオの特徴・生態
ここからはトビウオの特徴や生態をより詳しくご紹介していきます。
トビウオが生息している場所やトビウオの大きさ、さらにトビウオの種類をまとめましたのでご覧ください。
生息地
トビウオは温帯〜亜熱帯の海域に生息している魚です。
太平洋・大西洋・インド洋といった広い範囲を生息地としていますので、ほぼ全世界で見かけられる魚とも言えるでしょう。
日本では北海道から沖縄まで、すべての沿岸部でトビウオが観測されています。
また、日本の周りで考えると台湾近海・朝鮮半島・中国の北東部から南東部にかけての海域もトビウオの生息地となっています。
大きさ
トビウオの全長はだいたい30cm〜40cmくらいです。
なお、小さい種類だともう一回り小型のトビウオも存在します。
トビウオの見た目的な特徴は、正面から見たとき身体の形が逆三角形をしているところ、また身体全体が細長い筒状になっているところです。
この身体にグライダーのような胸ビレや腹ビレを備えています。
ちなみに水面から飛び出るときに重要な役割を果たす尾ビレは長く伸びたV字の形をしていますが、これは水に対して効率よくパワーを伝えるためです。
種類
全世界の海で考えると、トビウオの種類は全部で50種を超えるとされています。
そのうち日本でもよく見かけられる代表的な種類はホントビウオ、ツクシトビウオ、アヤトビウオ、ハマトビウオ、ホソトビウオなどです。
中でも日本でよく漁獲されているのはツクシトビウオで、これは「アゴ」と名の付く加工品に使われることが多い種類です。
ちなみにツクシトビウオと似たものがホソトビウオとなりますが、食用魚として扱われることが多いのはツクシトビウオの方となります。
なお、一般的なトビウオよりも身体が小さく、派手な胸ビレを特徴とするのがアヤトビウオです。
アヤトビウオの胸ビレは黄褐色をベースに茶色の斑点模様が入っていますので、他のトビウオと見比べたときすぐにその違いが分かります。
トビウオの旬と美味しい食べ方
ここからはトビウオの旬と美味しい食べ方に関する情報をご紹介していきます。
旬の時期
トビウオの旬は7月〜8月ごろです。
繁殖や産卵のために北上してきた初夏のトビウオは身が引き締まっていて、どんな魚料理にもよく合います。
また、子持ちのトビウオからは「トビッコ」と呼ばれる魚卵が取れますが、トビッコは珍味や寿司のネタとして扱われることが多い食材です。
こうしたメスのトビウオの味わいが深くなるのも初夏〜晩夏の時期なので、ぜひトビウオの旬を覚えておいてください。
美味しい食べ方
トビウオの食べ方としては「塩焼き」「フライ」が一般的です。
もちろん新鮮なトビウオであれば「刺身」で食べるのもおすすめと言えます。
また、地域によってトビウオの食べ方は異なり、八丈島や新島などではトビウオを「くさや」に加工します。
そのほか、千葉県の房総半島では郷土料理の「なめろう」にトビウオを使うこともあるようです。
ちなみに最近では「アゴ出汁」という言葉の知名度が上がり、トビウオの出汁で作ったラーメンもよく見かけるようになりました。
なお、トビウオの出汁自体は昔から各地域の郷土料理に使われていて、味噌汁やうどんのツユを作る際にアゴ出汁が使用されているところも少なくありません。
まとめ
海面スレスレを滑空する姿が印象的な「トビウオ」の特徴や生態をご紹介してきました。
ご覧いただいたようにトビウオは天敵であるマグロやシイラから身を守るために、海面上をジャンプしています。
中には40m以上のジャンプを見せるトビウオも存在し、群れで飛び回る姿はまさに圧巻の光景です。
そんなトビウオの旬は7月〜8月ごろなので、ぜひ夏の訪れと共に美味しいトビウオを味わってみてください。