この記事では刺されると非常に危険な毒を持つ「ハブクラゲ」についてご紹介していきます。
ハブクラゲは人間を殺傷できるほど強力な毒性を備えた海の生物です。
1.5mほどの触手を持つハブクラゲはほぼ透明の見た目をしているため、海の中では見つけづらく気付いたときには刺されているといったケースが少なくありません。
ハブクラゲに刺されると痛みやミミズ腫れだけでなく、患部の壊死や呼吸障害を引き起こすことがあり、夏場の海では十分な注意が必要となります。
ここではそんなハブクラゲの特徴や生息地、発生する時期などを詳しくまとめました。
ハブクラゲがよく見つかっている沖縄や奄美方面に旅行へ出向く方は、こちらで解説している注意点をぜひご覧になっておいてください。
ハブクラゲとは?
ハブクラゲは「箱虫綱ネッタイアンドンクラゲ目ネッタイアンドンクラゲ科ハブクラゲ属」に分類されるクラゲです。
箱型の傘と長い触手を持っているところが特徴的で、その触手には人間を死亡させるほどの毒性が備わっています。
ハブクラゲの大きさは傘の部分が10~15cmほどで、触手の長さはだいたい1.5mほどです。
光が当たる角度によってはほぼ透明化してしまうため目視が難しく、知らない間にハブクラゲの触手に絡まってしまうこともあります。
そんなハブクラゲが発生するのは、毎年初夏から秋ごろにかけての時期です。
ハブクラゲの発生時期と観光シーズンが重なっていることもあり、例年ハブクラゲに刺される事故が後を絶ちません。
なお、ハブクラゲという名前は本種と同じように強い毒を持つ蛇「ハブ」が由来とされています。
ハブクラゲとハブの毒は異なりますが、どちらも致死性のある毒なので注意が必要です。
また、ハブクラゲは大きなカテゴリーとして「立方クラゲ」「ハコクラゲ」とも呼ばれます。
立方クラゲの仲間にはハブクラゲを小さくしたような「アンドンクラゲ」という種類も存在しますが、このアンドンクラゲも毒を持つ生物なので絶対に触らないようにしましょう。
※沖縄や奄美などによく現れるのがハブクラゲで、房総半島以南の広い範囲に生息しているのがアンドンクラゲ。
ハブクラゲの特徴・生態
ここからはハブクラゲの特徴や生態をより詳しく掘り下げていきます。
「どんなところにハブクラゲが生息しているのか?」「ハブクラゲの毒性はどれくらい強いのか?」といった部分をご覧になっていってください。
生息地
ハブクラゲは熱帯性のクラゲで温暖な海域に生息しています。
日本で発見されるのは主に沖縄や奄美といった地域で、同エリア内の海では5月ごろから10月くらいまでハブクラゲが出る可能性があります。
また、ハブクラゲが大きく成長するのは6月~9月とされていますので、夏休みの間に沖縄や奄美に行く場合は最大限の注意が必要です。
毒性
ハブクラゲの毒には「溶血性」「神経毒性」という性質があり、刺された場合には強い痛みだけでなく皮膚が壊死する危険性が含まれています。
また、ハブクラゲに刺されるとアナフィラキシーショックを起こす可能性もあるため、被害に遭った際はすぐに病院へ行くようにしましょう。
とはいえ、海でクラゲに刺されたときは「どの種類のクラゲに刺されたのか?」を確認することが困難です。
そのため、以下のような症状や不安がある場合はハブクラゲに刺されたかどうか関係なく、病院で診察を受けることを推奨します。
・刺されたところがひどいミミズ腫れになっている
・6時間ほど経過した後、患部が水疱になっている
・意識障害や呼吸障害がある
ハブクラゲに刺された場合の症状
ここからはハブクラゲに刺された場合の症状をより詳しく解説していきます。
まず、ハブクラゲはこれまでに「3件の死亡事故」を起こすほど強い毒を持っているということを認識しておきましょう。(2023年5月時点)
そんなハブクラゲに刺されると主に以下のような症状が現れます。
・吐き気を伴う気持ち悪さ
・ハッキリと分かる頭痛
・血圧の低下
・痙攣
・呼吸困難
また、アナフィラキシーショックによるアレルギー反応がある場合は刺されてから数分以内に以下のような症状が出ます。
・咳やくしゃみを伴う呼吸障害
・全身性蕁麻疹
・吐き気や悪心
・心悸亢進
・全身の不安感
先ほどから触れているように、ハブクラゲの毒は非常に強力です。
特に子供が刺された場合には重篤な状態になる可能性もあるので、親が自己判断をせずにすぐ病院で診察を受けるようにしてください。
なお、ハブクラゲに刺されたまま治療をせず放置しておくと、ひどい場合には患部が壊死します。
壊死した皮膚は元に戻らず痕が残ってしまいますので、早めに対処するよう心掛けましょう。
※刺された当日に痛みや腫れが少なくても数日経ってから悪化するケースがあります。
ハブクラゲに刺された場合の対処法
続いてはハブクラゲに刺された場合の対処法をご紹介していきます。
ハブクラゲと思われる生き物に刺されたときはすぐに陸へと上がり、患部に食酢を掛けましょう。
ハブクラゲの毒には「食酢」が有効的です。
(食酢にはハブクラゲの触手から刺胞が出るのを抑える効果がある)
仮にハブクラゲの触手がくっ付いているときには手袋やタオルを用いて患部から剥がしてください。
また、患部が熱を持っている場合はビニール袋に氷を入れて簡易的な氷嚢を作り、患部を冷やしながら安静な状態を保ちます。
なお、数分以内にアナフィラキシーショックに該当するような症状が出たときには救急車を呼びましょう。
(監視員やライフセーバーがいるような夏場の海水浴場であれば事前に声を掛けておく)
幼児を含む小さい子供がハブクラゲに刺された場合は症状が悪化する危険性があるため、程度に関わらずすぐ病院で診察を受けてください。
ちなみにハブクラゲと同じくらい強い毒性を持つ「カツオノエボシ」に刺された場合は対処が変わってきます。
※カツオノエボシが持つ毒は食酢を掛けることによって刺胞の動きが活発化されるため、食酢の使用がNGとなっている。
ハブクラゲとカツオノエボシの違い
カツオノエボシは「電気クラゲ」とも呼ばれる危険生物で、ハブクラゲと同様に強い毒を持っています。
しかし、ハブクラゲとカツオノエボシの毒は性質が異なりますので、同じ対処法が使えません。
そのため、海で何かに刺されたときは「どんな生き物に刺されたのか?」を確認することが重要となってきます。
○ハブクラゲとカツオノエボシの違い
・カツオノエボシは沖縄や奄美だけでなく太平洋側沿岸部の多くの海域に生息している
・傘の部分に青っぽい色が見えた場合はカツオノエボシである可能性が高い
・カツオノエボシの触手は平均して10mほどと非常に長い
標本や水族館で見れば両者の違いがすぐに分かりますが、海だと判別が難しいこともあります。
そんなときには「傘の色」「職種の長さ」だけでも見ておいてください。
なお、カツオノエボシに刺された場合は「海水」を使って患部をよく洗い流し、タンパク毒を減らすために刺されたところを温める必要があります。(その後腫れを引かせるために冷却する)
まとめ
人間が死亡するほどの毒を持つ「ハブクラゲ」の危険性や刺されたときの対処法をご紹介してきました。
ハブクラゲに刺されたときはパニックにならず、冷静に対処することが重要となってきます。
近くに食酢があれば患部に掛けて、その後は氷水で刺された箇所を冷やすようにしましょう。
なお、自分では刺された生き物の種類が判断できない場合は、無理をせず近くの医療機関で治療を受けてください。