この記事では世界で2番目に大きい魚類である「ウバザメ」について解説していきます。
ウバザメは身体の大きさがジンベエザメに次ぐほど巨大なサメです。
ちなみにサメというと動きが俊敏で人間を襲うようなイメージがあるかもしれませんが、ウバザメはとてもゆっくり泳ぐサメで積極的に人間を攻撃することはありません。
ここではそんなウバザメの生息地や性格、寿命などに関する情報をまとめました。
また、ウバザメという名前の由来や面白い雑学もご紹介していきますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
ウバザメとは?
ウバザメは「ネズミザメ目ウバザメ科」に分類されるサメで、本種のみでウバザメ属を構成しています。
世界中の至るところに生息しているサメであり、日本近海で観察されることも少なくありません。
ウバザメは世界で2番目に大きい魚類となりますが、動き自体は非常に遅く、だいたい時速3~4kmのスピードで泳いでいます。
(最高速度でも時速6km程度)
ちなみにこのスピードは成人男性が歩く速度とほぼ同じです。
また、ウバザメは人間を襲うことがなく、むしろ人間に対して好意的な行動を取ります。
しかし、「ゆっくりとした動き」「おとなしい性格」という特徴を持つウバザメは人間にとって漁獲しやすい魚であり、歴史上の乱獲によって個体数を激減させています。
(皮膚は革製品の材料として売られ、体重の1/4を占めるほど大きな肝臓からは肝油が採取された)
なお、国や地域によってはウバザメを貴重な食料として扱うところもありますが、現在は多くの国や海域でウバザメの捕獲が禁止・規制されています。
ウバザメの見た目と食事方法
ウバザメの見た目としてもっとも特徴的な部分は「身体よりも大きく開く口」です。
ウバザメのような巨大魚類や海洋哺乳類は大量のプランクトンをエサとしますが、ウバザメの場合は海水ごとプランクトンを丸飲みして「鰓耙(さいは)」と呼ばれる器官で濾し取ります。(1時間に2000リットルほどの海水をろ過する)
そして、大きく開いた口の中には柱のように並んだ太い軟骨が見えるのですが、これもまたウバザメの特徴と言えるでしょう。
また、ウバザメは他のサメよりも鰓(エラ)の裂け目が大きく、ほぼ身体を一周するくらいの「鰓裂」を持っています。
ウバザメに関する雑学
ウバザメは性別ごとに3~4頭のグループを作って行動しますが、過去に何度かグループ同士(雌雄別)が同じ海域に集まりグルグルと泳ぎ回る姿が目撃されています。
これはウバザメのオスとメスが交尾する相手を見つけるためにおこなっているのではないかと考えられていて、さながら「合コン」のようなものと捉えられているそうです。
ちなみにウバザメのメスが持つ卵巣は片側しか機能していないという説があり、これもまた珍しい特徴として研究が進んでいます。
ウバザメの名前の由来
ウバザメという和名は身体に刻まれている大きな鰓裂が「老婆」のシワのように見えることから名付けられたものです。
また、ウバザメは海面近くに集まっているエサをゆっくりとした動きで捕食することがあります。
このとき簡単に捕獲できることから「バカザメ」と呼ばれていた時代もありました。
ちなみに今でも「バカザメ」という別名が使われることがあるそうです。
なお、ウバザメは英語で「Basking shark」と呼びますが「Bask」とは日光浴のことで、海面近くで活動する姿が日光浴をしているように見えることからその名前が付けられています。
※ウバザメの属名である「Cetorhinus」という名称はギリシャ語の「ketos(=海の怪物)」と「rhinos(=鼻)」を組み合わせたもの。
ウバザメの生態・特徴
ここからはウバザメの生態や特徴をより詳しく解説していきます。
ウバザメの大きさや生息地、性格や寿命に関する情報をまとめたのでご覧ください。
大きさ
ウバザメは魚類の中で2番目に大きな生き物として知られています。
(海洋哺乳類であるクジラ類を除いた順位)
ウバザメの平均的な大きさは5~8mで、大きなものだと10mを超える個体も存在します。
なお、過去に見つかったウバザメの中でもっとも大きな個体の全長はなんと約12.2mです。
※13m以上のウバザメが発見されたという報告例もありますが、これについては信憑性が低く正式には認められていない模様。
ちなみに日本近海で観測されたウバザメだと9mほどの個体が見つかっています。
このように魚類としては最大級のサイズを誇るウバザメはジンベエザメ・メガマウスと並び「世界三大ザメ」のひとつに数えられ、多くの方々から興味関心を持たれています。
生息地
ウバザメは水温8~14℃ほどの海域を好むサメで、世界中の亜寒帯~温帯に生息しています。
また、ウバザメは様々な海を渡り泳ぐ「回遊性」という特徴を持ちますが、一時的にプランクトンが集まりやすい湾内や沿岸部に留まることもあるようです。
ひとつの仮説として、エサの量が全体的に少なくなる冬の時期には深海まで潜り冬眠のような行動を取るとも考えられていますが、実際にウバザメが冬眠しているかどうかはハッキリと分かっていません。
なお、日本近海では千島列島から沖縄までの太平洋側がウバザメの生息地・回遊ルートとされています。
性格
ウバザメの性格は非常におとなしく、あえて人間に危害を加えるような行動は取りません。
むしろダイバーの周りをゆっくりと旋回するなど、人間に対しては好意的な生き物として知られています。
ちなみにウバザメの目は小さいものの視覚自体は発達していて、人間や船のことをちゃんと認識しているそうです。
しかし、船を見かけた場合は仲間と勘違いして近付き、ぶつかってしまうこともあります。
寿命
ウバザメの寿命は70~80年と言われていて、中には100年近く生きる個体も存在すると考えられています。
つまり、人間と同じくらい長生きをする生き物ということです。
とはいえ、ウバザメはたびたび乱獲の対象となるため、寿命まで生きられる個体は多くありません。
こうしたことから現在は多くの国でウバザメの保全活動がおこなわれています。
なお、ウバザメはレッドリストに登録されている「絶滅危惧種」のひとつで、このままだと近い将来に絶滅する恐れがある生き物として扱われています。
ウバザメがいる水族館はある?
茨城県の大洗水族館ではウバザメの標本(剥製)を展示していますが、日本国内で生きているウバザメが見られる水族館はありません。
ウバザメは身体が大きく飼育するための水槽を用意することが困難であり、また生態についても不明確な部分が多いというのがこの理由として挙げられます。
※ウバザメより大きいジンベエザメはある程度生態が分かっていて飼育が可能という理由から水族館で展示されているそうです。
まとめ
世界で2番目に大きい魚類である「ウバザメ」について詳しくご紹介してきました。
ご覧いただいたようにウバザメはジンベエザメの次に大きなサメで、その全長は10mを超えることもあります。
そんなウバザメの特徴は「おとなしい性格」「人間の歩行速度くらいゆっくりとしたペースで泳ぐ」といった部分です。
また、あえて人間に危害を加えることがないためダイバーからも人気が高く、一度はその巨大な姿を生で見てみたいと思わせるところがウバザメの魅力と言えます。
とはいえ、ウバザメに少しでもぶつかったらケガをする危険性があるので、ダイビング中に出会った場合には極力注意するようにしましょう