この記事ではペンギンのような見た目が特徴的な「ウミガラス」の特徴や生態をご紹介していきます。
ウミガラスは「国内希少野生動植物種」に指定されている海鳥の一種です。
「カラス」という名前が付いていますが、実際はカラスではなく「チドリ目・ウミスズメ科」に分類されています。
ウミガラスはその鳴き声から「オロロン鳥」とも呼ばれていて、日本では特に北海道でよく見かけられる鳥類です。
そんなウミガラスの生息地・食性・繁殖の仕方などを詳しくまとめました。
また、ウミガラスの大きさや種類、ウミガラスが見られる水族館の情報にも触れていますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
ウミガラスとは?
ウミガラスは「チドリ目・ウミスズメ科」に分類される「海鳥」です。
普通の鳥とは異なり、海洋付近に生息しているところが大きな特徴に挙げられます。
現在のところ、ウミガラスには主に2種が存在すると考えられていますが、その2種というのが「ウミガラス」と「ハシブトウミガラス」です。
・ウミガラス:背中の色がやや薄い、くちばしの根本に白い線が入らない
・ハシブトウミガラス:背中の色が黒く濃い、くちばしの根本に白い線が入る
2種のウミガラスはほぼ同じような見た目をしていますが、上記の部分が明確に異なるポイントです。
また、体長ではハシブトウミガラスの方がやや大きいといったデータもあります。
そんなウミガラスは群れを作って生活を送ることが一般的で、冬になると温暖な気候を求めて南下を始めます。
こうしたことから、ウミガラスは渡り鳥としての性質も持ち合わせていることが分かるわけです。
大きさ
ウミガラスの大きさは体長およそ40cm、体重およそ1.1〜1.5kgくらいです。
現在のところ生息しているウミスズメ類の中ではもっとも大きな種類とされています。
ちなみに遠くから見たときのウミガラスはペンギンと間違えるほどよく似ています。
とはいえ、動きや生態はペンギンと異なり、現生する多くのペンギンより小さいサイズです。
なお、2種のウミガラスに共通しているのは腹側が白く、背中側が黒い羽毛で覆われているところです。
そのほか長いクチバシと短い尾を持つところも同じとなります。
ウミガラスは飛べる?
ウミガラスとペンギンは見た目が似ていると説明しましたが、もっとも異なる部分は「ウミガラスは空を飛べる」という点です。
ウミガラスは短い翼を一生懸命羽ばたかせて、海面に近いところを飛び回ります。
また、海中ではこうした翼の働きを利用して泳ぐことも可能です。
3分くらいなら潜水もできるので、海の中のエサを見つけては捕食を繰り返します。
ちなみに空を飛べる分、ペンギンより陸上での歩行は苦手です。
このあたりもペンギンとの違いなので覚えておいてください。
鳴き声
ウミガラスという名前はカラスの鳴き声に似ていることが由来とされていますが、正確な理由は分かっていません。
実際にウミガラスの鳴き声を聞いてみると、カラスのように「カァーカァー」といった感じではなく「キューキュー」「クゥルゥゥー」といった感じに聞こえます。
ただし、たまにカラスに似た「クウァークウァー」という鳴き声も発するので、昔の人は海にいるカラスということで「ウミガラス」と名付けたのかもしれません。
ちなみにウミガラスをよく見かける北海道ではオロロン鳥とも呼ばれていますが、実際に「オロローン」と鳴いているようには聞こえないと思います。
ウミガラスの特徴・生態
ここからはウミガラスの生息地・食性・繁殖の仕方を詳しくご紹介していきます。
「具体的にウミガラスはどのあたりにいるのか?」「ウミガラスはどうやって繁殖するのか?」などの疑問を解消していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
生息地
ウミガラスは主に北太平洋〜北大西洋、北極海といった寒い地域に生息する海鳥です。
日本においては北海道の南西部に位置する「天売島(てうりとう)」を繁殖地としていて、そのほか北方領土の「歯舞群島(はぼまいぐんとう)」やロシア領・樺太の「海豹島(かいひょうとう)」で見かけることができます。
ちなみにハシブトウミガラスはより北側に生息し、北欧であるノルウェーの最北端などで繁殖活動をおこなっています。
なお、どちらのウミガラスも冬季になると南下をはじめますが、日本では北海道を超えて青森県あたりまでやって来ることもあるそうです。
食性
ウミガラスは「肉食性」の海鳥です。
主にシシャモやスケトウダラの稚魚、イカナゴやカジカといった魚を好んで食べます。
そのほか小型のイカやタコも捕食することが分かっています。
なお、ウミガラスは潜水ができるので、水中にいる魚でも捕まえることが可能です。
これまでの研究では最深180m程度まで潜水した記録が残っていて、その潜水能力や遊泳能力はかなり高いものと言えます。
ちなみにウミガラスは雛にエサを与えるために「捕まえた魚を半分ほどノドまで入れ、そのまま繁殖地へと戻る」といった行動も取ります。
親のウミガラスは子供のために頑張ってエサを獲ってくるわけですが、近年ではエサとなる魚の減少によって子育てがままならないケースも少なくないとのことです。
繁殖
ウミガラスは崖の上で繁殖をおこないます。
ほかの鳥のように産卵のために巣を作ることはなく、岩盤の上に卵を産み、そのまま抱卵を始めるというのが一般的な流れです。
なお、ウミガラスが岩の上で繁殖活動をおこなう理由は、卵を外敵から守るためと考えられています。
また、ウミガラスの卵はほかの鳥の卵より尖っているのですが、これは卵が崖下まで転がってしまうのを防ぐためとのことです。
ちなみにウミガラスは一度の繁殖時期に1個だけ卵を産みます。
しかし、様々な理由(落下、天敵からの攻撃など)によって卵が失われた場合は1回だけ産み直すといった行動を取ることが分かっています。
そのほか、集団(コロニー)を形成して卵を産み、集団で卵を守るといった部分もウミガラスの特徴と言えるでしょう。
親ウミガラスの献身によって孵ったヒナは生後3週間ほどコロニーで生活を送り、その後は親と共に海上へと飛び立っていきます。
ウミガラスの絶滅危惧種レベル
世界規模で見るとウミガラスは絶滅危惧種ではありませんが、日本を繁殖地・生息地とするウミガラスに関しては「環境省」によって絶滅危惧種の指定を受けています。
なお、日本の環境省が制定している絶滅危惧レベルは「CR」「EN」「VU」の3段階に分かれていますが、ウミガラスの絶滅危惧レベルは最高クラスの「CR(=絶滅の危機に瀕している種)」です。
つまり、このまま現状を放置していると近い将来に絶滅する可能性が高いということです。
そのため、日本ではウミガラスの繁殖地を保全する活動やウミガラスを外敵から守る活動が継続的におこなわれています。
ウミガラスが見られる水族館
野生のウミガラスは北海道や青森県まで行かないと見られませんが、以下3つの水族館であれば飼育されているウミガラスが見られます。
・東京「葛西臨海水族園」
・福島「アクアマリンふくしま」
・新潟「新潟市水族館マリンピア日本海」
ウミガラスは希少な生き物なので飼育している水族館が多くありません。
もしも上記の水族館に訪れることがあれば、ぜひ生のウミガラスをご覧になってみてください。
まとめ
ペンギンと似ているようで色々と異なる生態を持つ「ウミガラス」についてご紹介してきました。
ご覧いただいたように日本を繁殖地・生息地とするウミガラスは絶滅が危惧されています。
将来的には日本のウミガラスが見られなくなってしまう可能性もあるので、興味がある方は今のうちに生のウミガラスを見ておきましょう。