現在、世界中で深刻化している「海洋プラスチックゴミ問題」。放置されたプラスチック製品が海面から海中にまで分解されず漂い、海の生態系を破壊する現象として各国で問題となっています。ここでは、そんな海のプラスチックゴミ問題について、なにが原因でどんな影響があるのかをご紹介しています。また、今後私たちがどんな形で環境問題に対して行動ができるのか、という点についても触れていきます。
海のプラスチックゴミが世界中で深刻化
世界で深刻な問題として捉えられている海のプラスチックゴミ問題ですが、そのゴミが集積した地帯は「世界で7番目の大陸」といった表現がされるほど。特に1997年に北太平洋で発見されたプラスチックゴミが集積した地帯は、「ゴミベルト」ともいわれていて、その範囲は実に広さ340万平方キロメートル・深さ30メートルまでに広がっています。
これは単純に計算するとフランスの国土の6倍、日本の国土のおよそ9倍にまで及ぶ広さです。それだけの海域がプラスチックゴミによって汚染されているという事実を知ると、やはり誰もが驚くかと思います。ちなみにこの海域は、微生物であるプランクトンよりもマイクロプラスチックの方が多く存在していて、その数はおよそ10倍ともいわれています。
こうなるとやっぱり食物連鎖に支障をきたすようになりますので、海の生物たちが生きていくには厳しい環境になってきていると言えるでしょう。また、サイズが5㎜以下のプラスチックゴミをマイクロプラスチックと呼ぶわけですが、これに対してそれ以上のサイズであるマクロプラスチックはさらに直接的に生物の暮らしを脅かす存在です。
こちらのマクロプラスチックの代表例を挙げますと、一番多いものが漁具とされています。沖合で漁をする人間たちが、大きな漁網をそのまま放置することで発生するプラスチックゴミは大型の海洋生物にもダメージを与え、最悪の場合は死に至らしめることもあるわけです。
こうした形で海洋プラスチックゴミが発生するわけですが、ほかにも多くの原因がありますので、次にどのようにして海洋プラスチックゴミが生まれてしまうのかを詳しく見ていきます。
海洋プラスチックゴミ問題の原因は?
実は前述した漁を営む方々や釣り人が海に放置することで生まれる海洋プラスチックゴミというのは、ゴミ全体の20%にしかすぎません。ほか80%というのは陸から流入するプラスチックゴミとされています。これは使い捨てのプラスチック容器やビニール袋、さらには歯磨き粉や洗顔料に含まれるマイクロプラスチックを使った成分まで多種多様で、現在の我々の生活において切っても切り離せないものがたくさんあることが分かります。
そして、これらの製品が正しく処理されずに捨てられることによって、川を通してそのまま海へと渡っていってしまっているということになるわけです。そもそもプラスチックというのは、原油を材料にして炭素やケイ素を含んだ科学化合物の一種であります。
分類としてはポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリ塩化ビニル・ポリエチレンテレフタラートといった分け方がされますが、どれも自然分解が困難な材質です。ちなみに、日本ではこれらのプロダクトを一度ゴミ処理加工してから、「リサイクル資源」のひとつとして諸外国へ輸出していたりもします。
しかし、技術的に未発達なアジア諸国においては、リサイクル資源を活用しきれずにただのゴミとなってしまうことも多く、結果としては日本が多くの国々に対して海洋プラスチックゴミを散布してしまっているということになるわけです。もちろん日本だけでなく欧米諸国で同様の問題というのは発生していますが、トータルで見るとここ数年では毎年年間800万トンから1000万トンものプラスチックゴミが海へと流れ出ていってしまっていることが調査によって判明しています。
なかなか数字が大きすぎてピンとこないかもしれませんが、東京スカイツリーの重さが約4万トンとされていますので、毎年東京スカイツリー200~250本分がゴミとして海に流れていっているということですね。なお、プラスチックゴミが話題となってきたのは1960年代ごろからなのですが、これまでにトータルするとおよそ1億5000万トンのプラスチックゴミが海へと流れている計算となるようです。
海のプラスチックゴミはどんな影響が?
このように大量に海へと流入しているプラスチックゴミですが、それらが分解されるまでには少なくとも数年、さらに漁網など大きなものに関しては数百年掛かるとされています。ちょっとしたビニール袋でさえも、分解されるまでにおよそ20年掛かるということですから、その分解されるまでの時間というものの長さが分かっていただけるのではないでしょうか。
このように一度海に流れてしまったら長きに渡って存在し続けてしまうプラスチックゴミですが、魚などの海洋生物たちが誤って食べてしまうと死亡してしまうケースが多く、生態系に重大な影響を与えてしまっています。また、マイクロプラスチック程度であれば、魚たちは食べてもそのまま生き続けられますが、そのプラスチックが体内にどんな影響を及ぼすのかはいまだにはっきりと分かっておらず、さらにその魚を人間が食べることで起きる人体への影響というのも調査段階にあります。
先ほどご紹介したようにプラスチックというのは原油を材料に作られていますので、そのまま体内に入っていい影響があるわけはなく、海洋生物から人間までがそのリスクを背負っている状態にあると言えるわけですね。なお、プラスチックゴミは直接経口摂取しなくても網や釣り糸などが体に絡んでしまって、アザラシや海鳥、また大型のカメなどが溺死する事案が多く発生しています。こうした直接・間接問わずプラスチックゴミというのは知らず知らずのうちに、うみの生き物たちを苦しめているのです。
海洋プラスチックゴミ問題の対策!私たちにできることは?
便利になってしまった世の中で、いきなりプラスチックをすべて廃止するということは不可能です。そのため、プラスチック製品は正しく処理することが大前提にありますが、一度作られたプラスチック製品を長くリサイクルすることによって、新たなプラスチック製品を作らないようにするという取り組みも非常に大事とされています。
それがいわゆる産業における3Rというものですね。
○リデュース(Reduce)=出すゴミの総量を減らすこと
○リユース(Reuse)=再利用すること
○リサイクル(Recycle)=再生産に回すこと
やはり、この中で一番大事なことはリデュースです。とにかく地球上に放出するプラスチックゴミの総量を抑えることが第一に考えるべきことで、そのために普段私たちもビニール袋を安易に使用・廃棄しないなどのちょっとした気遣いを考えるべき時にきています。
すでに国内でもいくつかの自治体がプラスチック製品の使用を控える取り組みをおこなっていますが、個人個人の意識の中でもなるべく不当なプラスチックゴミを出さないように分別やリサイクルを心がけることが大切になります。