この記事では通称「イシモチ」と呼ばれる魚の特徴や生態をご紹介していきます。
イシモチは初心者でも釣りやすい魚の一種です。
鮮度が落ちるスピードが早いため生食用として出回ることはほぼありませんが、塩焼き用の魚としてはスーパーなどで安い価格で売られています。
ここでは、そんなイシモチの生息地・大きさ・産卵時期などを詳しくまとめました。
また、イシモチの釣り方や美味しい食べ方についても解説していますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
イシモチとは?
イシモチの正式名称は「シログチ」です。
シログチは「スズキ目ニベ科シログチ属」に分類される海水魚で、1年を通して釣れる食用魚として知られています。
そんなシログチがイシモチ(石持ち)と呼ばれるのは、数ある魚の中でも「大きな耳石」を持っているからです。
耳石とは炭酸カルシウムの結晶から構成される組織のことを指しますが、基本的に脊椎動物ならどんな生き物にも耳石が存在します。
魚の場合だと頭のあたりに3種類の耳石が含まれていて、シログチは扁平石と呼ばれる耳石のサイズが大きいため(主に関東で)イシモチと呼ばれているわけです。
※かつて武士の時代にはイシモチなどの耳石を刀の鞘の装飾に使ったという事例があり、工芸品としての価値があったことも確認されている。
ちなみにイシモチは浮袋を振動させることで「グーグー」といった鳴き声を発します。
これが愚痴を言っているように聞こえることから「グチ」という名称が付けられ、中でも体色が白いものをシログチと分類しています。
なお、シログチと同じ科に分類される「ニベ」のことをイシモチと呼ぶ地方もありますが、スーパーなどでイシモチとして売られている魚はシログチであることが大半です。
ニベとの違いは?
イシモチ(シログチ)とよく間違えられるニベは「スズキ目ニベ科ニベ属」に分けられる魚です。
同じニベ科ではありますが、属の分類が異なります。
ニベもイシモチ(シログチ)と同様に「グーグー」と鳴き、大きな耳石を持つ魚です。
ただし、イシモチ(シログチ)とは違ってニベには身体の側面に小黒色斑点列(黒い点の斑模様)があります。
こうした模様の違いを見ればイシモチ(シログチ)とニベを簡単に区別できるわけです。
また、ニベはイシモチ(シログチ)よりも大きく成長し、最大では全長80cmに達することもあります。
※地方によって「ホンニベ」「ハラカ」と呼ばれる魚はニベのことを指す。
韓国で人気?
イシモチは韓国でもよく釣れる魚で、安価な食材として人気があります。
また、韓国ではイシモチの亜種にあたる「キグチ」という魚が有名ですが、キグチは干物にして食べることが一般的です。
最近では漁獲量が減ってきたこともあり、キグチの干物は高級な贈答品として扱われています。
寄生虫はいる?
イシモチはごく稀に「アニサキス」または「フィロメトラ」という寄生虫を含んでいることがあります。
アニサキスは言わずと知れた有名な寄生虫であり、誤って食べた場合には嘔吐や下痢など典型的な食中毒症状が現れますので注意が必要です。
フィロメトラに関しては間違って摂取しても人体に害はないものの、心情的にはあまり食べたいものではありません。
どちらの寄生虫もイシモチを捌くときに目視で確認すれば発見できるので、刺身で食べるときにはよくチェックしましょう。
なお、アニサキスもフィロメトラも加熱または冷凍すれば死滅します。
(スーパーなどに並んでいるイシモチはだいたい加熱用なので、塩焼きや煮付けにすれば問題なく食べられます)
イシモチの特徴・生態
ここからはイシモチの生息地・大きさ・産卵時期など、詳しい生態をご紹介していきます。
生息地
日本の場合、イシモチは青森県〜九州地方までほぼ全国の沿岸部に生息しています。
主に生息しているのは水深10m〜150mくらいの浅瀬で、砂泥の海底を好むところがイシモチの特徴です。
水揚げ量が多い地域としては長崎県、香川県、愛媛県などが挙げられます。
イシモチは練り物の原料として使われることが多く、カマボコで有名な神奈川県小田原でも他県産のイシモチがよく利用されているそうです。
そのほか、国外では中国や韓国の近海にイシモチが生息しています。
大きさ
一般的に釣れるイシモチの大きさは20cm〜40cmくらいのサイズです。
40cm以上のイシモチが釣れた場合にはかなりの大物となりますが、その際はニベと間違えていないか確認してみましょう。
(ニベはイシモチより大きく成長し、見た目が似ているため)
ちなみにイシモチとニベはどちらも長い楕円形の身体をしていますが、イシモチの方が「体高がやや高い」といった特徴を持っています。
産卵
イシモチの産卵期は5月〜8月ごろで、岸から近い浅瀬や波の穏やかな内湾に浮遊性の卵を産みます。
孵化した稚魚は大きくなるまで生まれた場所で過ごし、成長に伴い沖合へと移動していくことが一般的です。
なお、同じイシモチという名前を持つ「スズキ目テンジクダイ科」の「クロイシモチ」は、メスが産んだ卵を「オスが口の中で孵化させる」といった特殊な生態を持っています。
孵化するまでの期間は約2週間で、その間オスは飲まず食わずの状態で卵の世話をするそうです。
イシモチの釣り方
イシモチはほぼ1年中釣れる魚です。
初心者でも釣りやすいため、釣り入門編の魚と言えるでしょう。
投げ釣りでは初夏から秋、沖釣りでは初冬から春までの季節がハイシーズンとなっています。
そんなイシモチを釣るときの主なエサはアオイソメです。
大型のイシモチを狙うときにはサンマなどの切り身を使うこともあります。
仕掛けは吹き流しの3本針、または胴突きの2本針にテンビンを用いることが一般的です。
竿を投げて着底したら、あとは竿先を上下に動かしながらエサに食いつくのを待ちます。
なお、海水に濁りが出るとイシモチが釣れやすいとも言われていますので、潮の流れが速いときは逆にチャンスと捉えましょう。
イシモチの味・美味しい食べ方
イシモチは白身の魚です。
基本的には塩焼きにすることが大半で、刺身で食べることはほぼありません。
しかし、これはイシモチの鮮度が落ちるスピードが早いからであり、釣ったばかりのイシモチであれば刺身でも美味しく食べられます。
(ただし、素人が捌くときには稀に存在する寄生虫に気を付けること)
そのほかイシモチの食べ方としてはフライや唐揚げが定番です。
あとはムニエルや煮付けといった調理法とも相性が良い魚と言えます。
ちなみに韓国ではイシモチをゴマ油で焼いて食べることが多いそうです。
イシモチは淡白な味わいなので、ゴマ油と合わせることでより味わいが濃くなるのかもしれません。
興味がある方はぜひ試してみてください。
まとめ
全国どこの沿岸部でも釣りやすい「イシモチ」の特徴や生態をご紹介してきました。
本文でも解説した通り、イシモチはスズキ目ニベ科シログチ属に分類される魚です。
正式名称は「シログチ」となりますが、頭部に大きな耳石を持っていることから「イシモチ(石持ち)」と呼ばれています。
イシモチは比較的安価な魚で、練り物の原料に使われることが大半です。
しかし、釣りたてのイシモチは刺身にして食べても美味しいので、ぜひ一度自ら釣ったイシモチを味わってみてください。