この記事では「海浜植物」の特徴や種類をご紹介していきます。
海浜植物とは名前の通り「海岸の砂浜に育つ植物」のことです。
海水の影響を受ける砂浜では一般的な植物が育ちません。
しかし、そうした特殊な環境でも自然と生育する植物があり、その種類や特徴は実に多種多様です。
ここでは、そんな海浜植物の基本概要や特徴、主な種類を分かりやすくまとめてみました。
浜辺に行く機会が多い方や海の散歩を趣味とする方などは、ぜひこちらの内容をご覧になってみてください。
海浜植物とは?
海浜植物とは砂浜に生育する植物全般を指す言葉です。
たとえば砂浜で小さいキクのような花を見かけたことがある人もいると思いますが、それは「ハマニガナ(別名ハマイチョウ)」と呼ばれる海浜植物です。
また、アサガオのような見た目の花を咲かす「ハマヒルガオ」や赤紫色をした花弁が特徴的な「ハマエンドウ」なども海浜植物の一種となります。
ちなみにこうした小さい植物だけでなく、海岸から少し離れたところに群生する「クロマツ」など大きな植物も海浜植物に含まれます。
このように海岸から近いところに自生する植物のことを「海浜植物」と呼ぶのですが、次にその主な特徴をご紹介していきましょう。
海浜植物の特徴
海浜植物は浜辺や海岸といった特殊な環境でも生長できるよう、内陸の植物とは異なる生態を持っています。
【主な特徴】
・直射日光に強い
・激しい風に耐えられる
・水が少なくても枯れない
・養分を求めて移動する
・食べられる種類が多い
海岸というのは直射日光が強いわけですが、こうした日差しに負けないよう厚く硬い葉を持つ種類が多いところが海浜植物の特徴です。
また、浜風によって折れないために必要以上背を伸ばさず、砂浜を這う形で生長する植物もよく見かけられます。
ちなみに海岸というのは真水が少ない環境であり、海浜植物にとっては雨などによって得られる水分がとても貴重です。
そのため、オカヒジキのように水分を溜め込み乾燥に強い多肉性の植物が自然と群生しているわけです。
さらに海岸では風によって植物が砂に埋もれてしまうこともあるのですが、こうした環境に適応するため地中に長い根を生やし、養分を求めて別の場所に葉を出す(移動する)といった能力を持つ海浜植物も存在します。
なお、このように独自の進化を遂げてきた海浜植物の中には食べられるものも多く、映画や小説などではサバイバル環境で生き抜くための食糧や薬用植物として描かれることも少なくありません。
ただし、すべての海浜植物が食べられるわけではないので注意しましょう。
海浜植物の主な種類
それではここから、主な海浜植物の種類をご紹介していきます。
「どういった見た目なのか?」「どんな特徴があるのか?」「食用や薬用として利用可能か?」などを簡単にまとめましたのでご覧ください。
ハマカンゾウ
「ハマカンゾウ」は主に海岸の斜面や崖地など日当たりの良いところに自生する海浜植物です。
7月頃になると橙色や黄色の花を咲かせる多年草で、背の高さは50cm〜100cmほどまで生長します。
葉は海浜植物らしく厚みがあり、さらに光沢を持つところが特徴的な部分です。
なお、地中に長く伸びた根茎は薬効(不眠症改善・利尿作用)があるとされ、若葉・若芽・花は食用にもなります。
ただし、必ずしも薬用の効果が得られるとは限りませんので、その点は理解しておきましょう。
オカヒジキ
先ほども少し触れた「オカヒジキ」は一年草の海浜植物で、見た目が海藻のヒジキに似ていることからその名前が付けられています。
そして海藻のヒジキ同様、昔から茎や葉っぱが食用として扱われているところがオカヒジキの大きな特徴です。
ちなみに日本は世界で唯一「オカヒジキを野菜として栽培している国」であり、自生種以外にも人の手によって育てられたオカヒジキが市場に流通しています。
なお、オカヒジキの産地として有名なのは山形県で、その生産量は国内シェア60%以上です。
日本全国どこの海岸でも見かけられる海浜植物ですが、沿岸部の開発などによってその自生地は減ってきています。
コウボウシバ
【6月例会中止】毎月第一土曜日に行っている定例の海浜清掃ですが、緊急事態宣言が延長されたため、今回は中止となります。ですが、各個人で清掃する分には密になることもないので、無理のない範囲で、みんなで海をきれいにしていけたらと思います。写真は #コウボウシバ。#西宮市 #御前浜 #香櫨園浜 pic.twitter.com/7pSCXKfWJd
— 浜・川・山の自然たんけん隊【公式】 (@hamakawayama) June 1, 2021
「コウボウシバ」は比較的背の低い多年草の海浜植物で「カヤツリグサ科スゲ属」の一種となります。
同属に分類される「シオクグ」と間違えられることが多いのですが、シオクグよりも背が低いのでそこを見分け方のポイントにしてみてください。
ちなみに名前は同じ海浜植物の「コウボウムギ」に対して実が小さいことからコウボウシバと名付けられたようです。
なお、コウボウシバとコウボウムギはどちらも食用には向きません。
ハマボウフウ
セリ科ハマボウフウ属に分類される「ハマボウフウ」は、北海道から南西諸島にかけて様々な海岸で自生している海浜植物です。
ハマボウフウは多年草で、5月〜7月ごろにかけてカリフラワーに似た白い花を咲かせます。
そんなハマボウフウは昔から食用・薬用として利用されることが多い海浜植物で、島根県松江市では人の手による栽培もおこなわれています。
そのまま食べても問題ありませんが、地方によっては天ぷらや酢味噌和えなどにすることが多いようです。
なお、ハマボウフウの根は解熱・鎮痛効果のある漢方として使われていて、日本でも生薬の一種として利用されています。
ただし、以前に流布された「糖尿病に効く」という噂は信憑性に欠け、実際にその効果を証明するデータはありません。
ハマヒルガオ
浜辺に淡い紅色の花を咲かせる「ハマヒルガオ」は、海浜植物の中でも代表的な種類のひとつです。
ハマヒルガオは浜辺の上に茎を伸ばし、砂で覆われたとしても別の場所に葉を開くことで太陽光を浴びています。
なお、丸くて厚みのある葉の形はまさに海浜植物の特徴を表す部分です。
日本全国どこでも観察できるので、おそらく見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。
ちなみに食用とする例はなく、食べるには不向きな海浜植物と言えます。
ハマゴウ
その独特な香りから線香の原料としても使われていたのが「ハマゴウ」です。
ハマゴウの名前は「浜香」に由来し、ユーカリの葉に似た香りを特徴としています。
また、ハマゴウには薬効成分があり古くから生薬や漢方薬として利用されてきました。
秋から冬にかけて採取されるハマゴウの果実は、乾燥させることで「蔓荊子(まんけいし)」という薬になります。
これには消炎作用・鎮痛鎮静作用があるとされ、煎じてお湯で溶かしたものを薬の代わりとして飲んでいたそうです。
ちなみにハマゴウから精製した精油は血行促進作用があり、入浴剤としても使えます。
ハマニガナ
「ハマニガナ」はオカヒジキなどと共に、比較的波打ち際に近いところで生長する海浜植物です。
キク科の多年草であり、黄色く小さい花を咲かせるところが特徴のひとつに挙げられます。
日本においては北海道から沖縄まで広い範囲に自生する海浜植物なので、こちらも見かけたことがある人は多いはずです。
浜辺を歩いていて黄色い花が咲いていた場合には、おそらくこちらのハマニガナである可能性が高いと言えます。
まとめ
海水や潮風にさらされる厳しい環境でも自生する「海浜植物」について詳しく解説してきました。
本文でご紹介したように海浜植物にはたくさんの種類があり、それぞれ独自の特徴を持っています。
なお、食用や薬用として昔から親しまれている海浜植物も多いのですが、無闇に採取するとその数が減ってしまいますので節度をもって扱うようにしましょう。