この記事では船舶の安全航行に必要な「灯台」に関する情報をご紹介していきます。
灯台は船舶の操縦者が岬や湾口の存在を確認するために建てられている建造物です。
その歴史は非常に古く、紀元前279年ごろにはすでに存在していたと考えられています。
ここでは、そんな灯台の役割や歴史をはじめ、日本の有名な灯台について詳しくまとめてみました。
近年、GPS技術の発達により灯台本来の役割は薄れてきたとも言われていますが、航路標識以外の価値についても見直されていますので、ぜひこちらの内容を通して灯台の魅力を知ってみてください。
そもそも灯台とは?
まずは「そもそも灯台とは何のために建っているのか?」について説明していきましょう。
灯台とは船舶が安全に航行をおこなうために必要な「航路標識」の一種です。
夜間や荒天のとき、何も目印がないと船舶は岬や暗礁などにぶつかり転覆してしまいます。
そうした事故を防ぐために灯台は、自身の外観や光を発することで「ここには岬があります」「このあたりは港湾付近です」といったメッセージを船舶の操縦者に送っているわけです。
船舶の操縦者は海図に記載されている灯台のデータをもとにして、暗礁への乗り上げなどの事故を回避しています。
灯台の構造
灯台は基本的に「塔の形」をしていて、もっとも高い位置から強力な「光」を発します。
GPSが発達する前は、こうした灯台の光を頼りに夜間の航行をおこなってきました。
ちなみに現在利用されている灯台のほとんどはコンクリート製ですが、古くから残っている灯台の中には石造・木造・鉄造のものもあります。
航路標識としての灯台
船舶が海の上で「自分の居場所」を知るために使われているのが「航路標識」です。
灯台は「航路標識」のひとつとなりますが、航路標識には以下のような種類があります。
・光波標識:灯台のように光を発するもの
・電波標識:無線信号所やGPSなど電波を発するもの
・音波標識:音で海上の位置を知らせるもの(視界が悪いときに使われる)
このほか船舶通航信号所など文字を使って情報を送る施設もあります。
ご覧のように灯台は光を発することで船舶に情報を与える「光波標識」として利用されてきました。
世界中どこの国にも灯台はあり、その大半は国の港湾行政を担当する省庁の管轄下に置かれています。(日本の場合はすべて国有財産として海上保安庁が管理している)
灯台の役割
船舶に対して沿岸部の情報を送り、航行を安全なものにするのが灯台の役割です。
しかし、海の上から陸地を確認したときにいくつかの灯台が同時に見えると「どれがどの灯台か分からない」といった問題が出てきてしまいます。
そんな問題を解決するために、灯台は「光り方」や「光が届く距離」を変えることで識別を可能としています。
灯台の光り方
・不動光:常に一定の光度を保っている
・明暗光:明るく光る時間が暗い時間よりも長い
・閃光:1秒ほどの強い光を発する
・互光:交互に違う色の光を発する
・モールス符号光:光でモールス信号を表す
灯台の光達距離
・光学的光達距離:18海里または23海里
・名目的光達距離:10海里
・地理的光達距離:灯台からの光が水平線に隠れない距離
※1海里=1852m(国際海里)
ご覧のような「光り方」と「光が届く距離」を組み合わせることで、近場にある灯台同士が見分けられるようになっています。
仮に遠くからでも見える光を頼りに沿岸部へと近づいていき、その隣に新しく別の光り方をする灯台が確認できれば、2つの位置関係から「自分の居場所」が分かるわけです。
とはいえ最近はGPS技術の発達により、こうした灯台の役割が終わりを迎えようとしています。
しかし、GPSで正確な位置情報が分かる時代になっても、実際の船舶操縦者からすると「灯台の存在」は必要とのことです。
これはモニターを見るために視線を落としているよりも、灯台の光を真っ直ぐ見つめた方が安全に操縦できるからだそうです。
観光資源としての価値
近年、本来の役割を終えた灯台が観光資源として再活用されるケースが増えてきました。
灯台はもともと海上保安庁が管理する国有財産となりますが、自治体へと払い下げることで灯台に新しい役割が与えられるようになってきています。
灯台の外観や敷地を利用したレストランや公園、またメディア用の撮影場所といった活用方法がその一例です。
こうした動きは地方の経済活動を後押しする上でも重要で、これから先も灯台には新しい価値が生まれていくと考えられています。
灯台の歴史
紀元前279年にエジプト・ファロス島に建造された「ファロス灯台」が世界でもっとも古い灯台と言われています。
ファロス灯台は世界の七不思議にも数えられる建造物で、その高さは135mに達していたとのことです。
このように灯台のベースとなった建造物は「紀元前の時代」から存在していましたが、日本において最初の灯台が建てられたのは700年代ごろの話となります。
当時、日本から中国へと渡航した遣唐使船が帰り際に行方不明となることが多く、そういった事故をなくすために九州地方の島や岬に灯台のような施設を造ったようです。
そこから900年~1000年ほど経ち、江戸時代になると石造りの小さな灯台で油を燃やす「灯明台」が建てられるようになりました。
(以前は木を燃やしていた)
この灯明台が現在における灯台の基礎となり、明治以降は洋式の灯台も造られるようになっていきます。
ちなみに灯台はもともと「灯台守」が常駐して火や光を管理していましたが、2006年に国内すべての灯台が無人化(機械制御)されました。
日本で有名な灯台
それでは最後に日本で有名な灯台をいくつかご紹介していきます。
観光地としても人気が高い灯台をぜひチェックしていってください。
犬吠埼灯台
明治7年に建てられた千葉県銚子市の「犬吠埼灯台」は日本に5つしかない第1等灯台のひとつです。(第1等レンズ使用)
初めて日本製のレンガを使って建てられた灯台でもあり、レンガ製の建造物としては日本2位の高さを誇ります。(塔高31.3m)
国の登録有形文化財に指定されていますが、実際に上まで登ることが可能で観光客にも人気です。
姫埼灯台
六角形の外観が特徴的な新潟県佐渡市の「姫崎灯台」は、日本最古の鉄造灯台です。
経済産業省の近代化産業遺産に登録され、「日本の灯台50選」にも選出されています。
敷地内には「姫崎灯台館」があり、灯台で使われているレンズや回転灯器といった貴重な資料を閲覧することが可能です。
神子元島灯台
静岡県下田市にある「神子元島灯台」は日本でもっとも古い「石造り」の灯台です。
いまでも現役の灯台として使われている神子元島灯台ですが、初点灯は明治3年とかなり古い歴史があります。
また、「世界歴史的灯台100選」に数えられ、国の史跡にもなっています。
美保関灯台
島根県松江市の「美保関灯台」は山陰地方でもっとも古い石造りの灯台です。
地元で採取される凝灰質砂岩を石材として使い、明治期の建築物として学術的価値も高いことから灯台として初めて登録有形文化財に指定されました。
常に灯台内部に入れるわけではありませんが、海の日だけは参観が可能となっています。
出雲日御碕灯台
最後にご紹介するのは島根県出雲市にある「出雲日御碕灯台」です。
出雲日御碕灯台は日本一の塔高を誇り、その高さは43.65mとなります。
また、耐震性を保つために灯台の内側はレンガ造り、外側は石造りといった二重構造になっているところも特徴的な部分です。
ちなみに出雲日御碕灯台は「参観灯台(=いつでも内部が見られる灯台)」なので、常時見学や参観ができます。
島根県に訪れた際は、ぜひ日本一高い灯台の景色を楽しんでみてください。
まとめ
海の安全を守る「灯台」の歴史や役割などをご紹介してきました。
ご覧いただいたように灯台には色々な種類があり、外観や光り方がそれぞれ異なります。
最近では観光地としても注目されていますので、近くに訪れた際はぜひ立ち寄ってみてください。