この記事では現存する生き物の中でもっとも大きな身体を持つ「シロナガスクジラ」についてご紹介していきます。
シロナガスクジラは海生哺乳類に分類され、現在は絶滅危惧種に指定されている生き物です。
世界的に保全活動が進んでいるため個体数は回復傾向にあると言われていますが、それでもまだ絶滅の危険性がある生き物として扱われています。
ここでは、そんなシロナガスクジラの生態・大きさ・生息地・寿命・天敵などに関する情報を詳しくまとめました。
「シロナガスクジラはどれくらい大きいのか?」「シロナガスクジラはなぜ絶滅寸前まで個体数を減らしたのか?」といった疑問がある方は、ぜひ最後までご覧になっていってください。
シロナガスクジラとは?
シロナガスクジラは「哺乳綱偶蹄目ナガスクジラ科」に分類される生き物です。
現在、地球上に存在する生物の中でもっとも大きな身体を持ち、その全長は25m前後とかなり巨大です。
一般的にクジラは「ヒゲクジラ類(亜目)」と「ハクジラ類(亜目)」の2グループに分けられますが、シロナガスクジラはヒゲクジラ類に属しています。
そんなヒゲクジラ類の特徴は「ヒゲ板」と呼ばれる器官を使って食事をするところです。
ハクジラ類のクジラは歯がありますので、人間や他の動物と同じようにエサを歯で噛んで食べます。(小さいエサなら丸飲みすることもある)
しかし、シロナガスクジラのようなヒゲクジラ類は海水ごとエサを丸飲みにして、ヒゲ板という器官で濾し取りながらエサと海水を分別します。
シロナガスクジラのヒゲ板は70cmほどあり、これが口元に並んで歯のような役割をしているということです。
なお、シロナガスクジラの身体は全体的に細長い造りとなっていて、背中側は灰色が混じった青色、お腹側はそれよりも少し明るい色をしています。
ただし、シロナガスクジラを含め多くのクジラたちにはその体表にフジツボやクジラジラミといった甲殻類が付着しているため、身体が白く見えることもあります。
シロナガスクジラの種類
シロナガスクジラは生息場所や遊泳する海域によっていくつかの種類(亜種)に分けられています。
・キタシロナガス:北半球に生息する個体群で、全長はおよそ25m前後と平均的。
・ピグミーシロナガス:南半球の低緯度に生息する個体群で、全長はおよそ20m前後とやや小さめ。
・ミナミシロナガス:南半球の高緯度に生息する個体群で、全長はおよそ26m前後と亜種の中では最大を誇る。
こちらはシロナガスクジラの亜種と呼ばれるものですが、上記に加え通常のシロナガスクジラにも北半球と南半球でそれぞれ別のグループが存在すると考えられています。
シロナガスクジラのエサや食性
シロナガスクジラの主食は「オキアミ」「カイアシ」といったプランクトン類です。
そのほか浮遊性の甲殻類やイワシなどの小魚類を食べることが分かっています。
これらのエサを大きな口で丸飲みし、ヒゲ板で濾し取りながら不要な海水や泥などを排出します。
ちなみにシロナガスクジラは直径10mほどまで口を開けられますので、1回に飲み込む量もかなり大量です。
また、成体となったシロナガスクジラは平均して「約16トン/1日あたり」のエサを必要とします。
単純に考えると少し大きめの牛が1頭あたりだいたい1トン(1000kg)なので、牛16頭くらいを食べている計算となります。
シロナガスクジラの声とコミュニケーション能力
シロナガスクジラはとても大きな鳴き声をあげる生き物です。
この音の大きさは生き物の中で最大とされ、これにより最長158km先の仲間とも連絡が取れると言われています。
シロナガスクジラの特徴・生態
ここからはより詳しくシロナガスクジラの特徴や生態をご紹介していきます。
大きさ
シロナガスクジラといえば、やはりその大きさがもっとも特徴的です。
シロナガスクジラの平均的な大きさは26m前後とされていますが、これまでに記録された最大の個体は「全長およそ33m」となっています。
また、重さで考えると「体重およそ190トン」といった別の個体も存在します。
シロナガスクジラは地球上に現存するすべての生物の中で一番大きな身体を持つ生き物です。(海中・陸上合わせて)
・シロナガスクジラ(海生哺乳類):最大全長およそ33m
・ジンベイザメ(魚類):最大全長およそ20m
・アフリカゾウ(陸生哺乳類):最大全長およそ7m
※ビルの高さで例えると30mは7~8階に相当する
魚類の中でもっとも大きいのはジンベイザメですが、それでもシロナガスクジラの大きさには及びません。
さらに陸上最大の生物であるアフリカゾウと比較してみると、よりシロナガスクジラの途方もない大きさが分かるかもしれません。
ちなみに人間と比べた場合はおよそ12倍~20倍くらいの大きさがあります。
なお、シロナガスクジラは人間を襲うことがありませんので攻撃される心配はないものの、仮にその巨体が船舶などにぶつかった場合は船も人間もダメージを受けます。
生息地
寒帯~熱帯の海まで適応しているシロナガスクジラは世界中どこにでも回遊できます。
とはいえ、かつては世界中の海に生息していたシロナガスクジラも、今では生息する場所が限定的となっていて、オホーツク海や日本海といった日本近海に定着している個体群は存在しません。
また、地中海やベーリング海といった海域にも生息はしていないようです。
それ以外の外洋ではシロナガスクジラの目撃例があり、カリフォルニア湾では沿岸部でもその姿を見られるとされています。
※海洋汚染や異常気象の影響を受けにくい外洋で生活するというのも生態のひとつと考えられる。
寿命
シロナガスクジラの平均的な寿命は80~90歳とされています。
なお、最長では118歳まで生きた個体も存在するようです。
ちなみにこれは野生下での寿命であり、仮に飼育が可能だった場合は寿命の長さにも変化があるかもしれません。
とはいえ、地球最大の生物であるシロナガスクジラを飼育できるような水族館はなく、今後も野生下での観察・データ収集がメインとなるはずです。
天敵
地球上でもっとも大きな生き物であるシロナガスクジラの天敵は「シャチ」と「人間」です。
野生下においてシロナガスクジラを捕食できるのはシャチのみで、特に若い個体は被害に遭いやすいとされています。
それ以外のサメや同属のクジラ類から攻撃を受けることはありません。
そんなシロナガスクジラの個体数を減らし続けてきたのは人間であり、シロナガスクジラからしても一番怖いのは人間になると思います。
シロナガスクジラは絶滅危惧種
前述の通り、シロナガスクジラは人間たちからの攻撃(捕鯨)によって個体数を激減させています。
特に1800年代後半~1900年代前半は近代的な捕鯨技術が開発され、多くのシロナガスクジラが商業利用のために捕らえられてきました。
こうした背景のもと、1966年に国際捕鯨委員会はシロナガスクジラを対象とした捕鯨を全面的に禁止しています。
また、国際自然保護連合はシロナガスクジラを「絶滅危惧種」に指定し、現在はその保全活動に尽力しています。
ちなみに今の個体数は5,000頭~15,000頭とされていて、徐々にではありますが個体数が増加傾向にあるようです。
まとめ
この地球上でもっとも大きな身体を持つ「シロナガスクジラ」について詳しくご紹介してきました。
ご覧いただいたようにシロナガスクジラは最大で30m以上に成長する生き物で、その大きさは7~8階建てのビルに相当します。
そんなシロナガスクジラも人間たちからの攻撃(捕鯨)には勝てず、昔より個体数を大きく減らしてきました。
今後、シロナガスクジラが絶滅しないためには、人間たちの保全活動が重要になってくると言えるでしょう。