この記事では細長い身体が特徴的な「タチウオ」の生態をご紹介していきます。
タチウオは日本人にとって馴染みがあり、昔から食用として扱われている魚の一種です。
大きなものだと体長が2m以上にまで成長するタチウオは、そのサイズと引きの強さから釣りのターゲットとしても人気があります。
ここでは、そんなタチウオの種類・生息地・美味しい食べ方などを詳しくまとめました。
タチウオがどういった魚なのか興味がある方は、ぜひ最後までご覧になっていってください。
タチウオとは?
タチウオは「スズキ目サバ亜目タチウオ科」に分類される魚です。
もっとも大きな特徴はその姿であり、普通の魚よりも細長い身体をしています。
また、身体が銀色に輝いているところもタチウオの特徴となりますが、これは「グアニン色素」と呼ばれるものの影響です。
(グアニン色素は銀色の塗料としてフェイクパールやマニキュアのラメなどに使用されている)
タチウオは生きている限り新しいグアニン色素を生み出し、その層によって身体が保護されています。
そんなタチウオの体表には鱗がありません。
胸鰭・腹鰭・尾鰭は退化していて、背鰭のみが大きく発達しています。
この発達した背鰭を使って身体を動かすところもタチウオならではの特徴と言えるでしょう。
タチウオは夜行性
タチウオは夜行性の魚です。
日が暮れる夕方ごろから朝方までの時間帯に、海の表層近くまで上がってきて捕食活動をおこないます。
夜中の間にたくさんのエサを食べたタチウオは夜明けと共に海の深いところまで潜っていき、昼間は群れを形成しながら休んでいるそうです。
種類
タチウオは世界中の海に存在する魚で、同じ科には少なくとも39種いると考えられています。
このうち日本人の間で一般的なものがタチウオ亜科に属する「タチウオ」です。
(ほかにオビレタチ亜科やクロタチモドキ亜科などが存在する)
日本近海に生息するタチウオは主に3つのグループに分けられますが、いまだに生物学上で明確な種類分けはされていません。
・タチウオ:一般的に見かける種類で、北海道〜九州あたりで釣れる。体長は1.5m前後。
・オキナワオオタチ:沖縄近海で釣れるタチウオ。尾鰭がなく普通のタチウオより目が大きい。体長は2m前後。
・テンジクタチ:屋久島・奄美大島・沖縄近海で釣れるタチウオ。オキナワオオタチよりサイズが小さく、身体や口元が黄色っぽい。体長は1m前後。
日本ではこれらの魚がすべて「タチウオ」という名称で売られています。
(沖縄ではタチヌイユなど方言が使われることもある)
そのため違いに気付くことは少ないと思いますが、漁師や釣り人の間ではそれぞれ異なる種類として認識されているそうです。
食性
タチウオは小さなアジやイワシなどをエサとする「肉食性」の魚です。
そのほか小さいカニなどの甲殻類やイカ、動物プランクトンを主食としています。
タチウオの特徴でもある尖った歯はエサとなる魚などを噛みちぎるためにあり、こうしたことから「海のギャング」とも呼ばれています。
※ただし、タチウオは泳ぎが得意ではなく、エサの捉え方も上手ではないといった説もある。
タチウオの名前の由来
タチウオの名前の由来は2つあります。
ひとつはその細長い身体が「太刀」に見えることから「太刀魚=タチウオ」と呼ぶようになったという説です。
もうひとつは海面に向かって立ち泳ぎをする姿から「立ち魚=タチウオ」と名付けたという説です。
ちなみに英語圏ではタチウオのことを「サーベルフィッシュ(西洋刀)」や「カットラスフィッシュ(舶刀)」と呼びます。
このように身体の見た目から名前を付けるのは万国共通と言えるかもしれません。
なお、タチウオが海面に向かって立ち泳ぎをするのは頭上を通る小アジやイワシに向かって突進するためと考えられています。
ただし、潮の流れが速いところでは立ち泳ぎができないそうです。
タチウオの特徴・生態
続いて、タチウオの特徴や生態をより詳しく見ていきましょう。
「タチウオは最大でどれくらいまで成長するのか」「タチウオはどういったところに生息しているのか」といった疑問を解消していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
大きさ
一般的なタチウオの体長は1m〜1.5mほどで、大きなものだと2.3m以上に成長する個体もいます。
そんなタチウオはオスよりもメスの方が大きくなりやすい魚です。
そのため、大型のタチウオはメスである可能性が高いと言えます。
また、タチウオの成長速度は3年で1mくらいと考えられていますので、1.5mサイズのタチウオは4〜5年以上生きていると予想されます。
釣り人の間では大型のタチウオを「ドラゴン」と呼ぶこともありますが、ドラゴンクラスのタチウオは比較的長生きをした個体と言えるでしょう。(ちなみにタチウオの寿命は6~7年)
生息地
タチウオは世界中の海に生息する魚で、主に温帯〜熱帯の海域を好んで回遊しています。
日本では北海道〜沖縄まで全国どこの海でも見かけられますが、特に瀬戸内海では漁獲量が多いようです。
また、鹿児島〜沖縄に近い海域では「オキナワオオタチ」や「テンジクタチ」といった一般的なタチウオと少し異なる種類も生息しています。
産卵
タチウオは生息する場所や海域によって産卵期が変わります。
日本では5月〜6月がタチウオの産卵期とされていますが、中には10月ごろまで産卵をしないメスもいるようです。
そのため、夏過ぎに卵を持つタチウオが釣れることも珍しくありません。
産卵後、孵化したタチウオの幼魚は動物プランクトンや甲殻類の幼生を食べて成長します。
1年くらい経過すると50cm前後まで成長しますので、タチウオが大きくなるスピードはなかなか早めと言えるでしょう。
タチウオの釣り方
タチウオは沿岸部に生息する魚なので堤防と沖の両方から釣れます。
堤防釣りではイワシなどをエサにしたウキ釣りが主流です。
なお、堤防釣りはタチウオが活動をしはじめる夕方から夜間にかけておこないます。
船釣りではタチウオが休息している日中に仕掛けることが一般的で、タチウオがよくいる水深50m〜100mあたりに2本針や3本針を垂らしてアタリを狙います。
中にはルアーフィッシングのターゲットとしてタチウオを選ぶ方もいますが、ルアーでもタチウオを釣ることは可能です。
タチウオの美味しい食べ方
タチウオは昔から食用として扱われてきた魚です。
塩焼きやバター焼きなど定番かつシンプルに調理するのが美味しい食べ方とされていますが、唐揚げや天ぷらといった揚げ料理とも相性は抜群です。
また、新鮮なものであれば刺身や寿司のネタにもなりますので、幅広い食べ方ができる魚と言えるでしょう。
そのほか地方によってはタチウオの身と骨をすり潰して揚げカマボコにするなど、郷土料理の材料としても使われています。
まとめ
銀色に輝く細長い身体を持った「タチウオ」の特徴や生態を詳しくご紹介してきました。
タチウオは見た目や立って泳ぐ姿からその名前が付けられた魚です。
平均的な体長は1m〜1.5mくらいで、大きなものでは2mを超える個体もいます。
そんなタチウオはフィッシングのターゲットとして人気があり、釣れた場合にはそのまま捌いて食べられる魚です。
ただし、タチウオには鋭い歯がありますので、釣り針から外すときには十分に注意しましょう。