この記事では日本沿岸部でも観測されている「アオウミガメ」の特徴や生態について詳しく解説していきます。
現在のところ、世界中の海に存在するウミガメの種類は全部で7種類です。
そのうちもっとも大きなものがアオウミガメとなりますが、ウミガメ科の生き物はほぼすべて絶滅危惧種に指定されています。
当然、日本を産卵地のひとつとして選んでいるアオウミガメも絶滅の危機に瀕しているわけですが、ここではそんなアオウミガメの現状をまとめました。
また、アオウミガメの大きさ・生息地・食性・産卵・寿命といった部分も分かりやすくご紹介していきますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
アオウミガメとは?
アオウミガメは「爬虫綱カメ目ウミガメ科アオウミガメ属」に分類される生き物です。
アオウミガメ属に分けられるのはアオウミガメのみで、ウミガメ科全体ではほかに5種類のウミガメが存在します。
〇ウミガメ科(6種)
アオウミガメ、アカウミガメ、タイマイ、ケンプヒメウミガメ、ヒメウミガメ、ヒラタウミガメ
〇オサガメ科(1種)
オサガメ
アオウミガメは亜熱帯〜熱帯の海域に生息するウミガメで、比較的水深の浅いところを回遊しています。
なお、アオウミガメはウミガメ科の中で唯一「草食性」のウミガメなので、海藻が豊富な沿岸部を好むようです。
(草食性ではあるが小型の生き物を捕食することもある)
そんなアオウミガメは他のウミガメより「低温に強い」といったところが特徴的です。
他のウミガメでは生息できないとされる海水温が低い海域でもアオウミガメの姿は確認されています。
ちなみにアオウミガメの英名は「Green Sea Turtle=緑色のウミガメ」となっていますが、これは実際に身体の色が青や緑に見えるからです。
アオウミガメは主に海草類を食べているので、その色素が脂肪に反映されて同様の色合いになります。
ただし、すべての個体が同じような色をしているわけではなく、棲んでいる場所や食べ物の影響で身体が黒く見えるアオウミガメも発見されているそうです。
(太平洋東部に生息する黒色が強いアオウミガメを「クロウミガメ(独立種)」とする説もある)
寿命
アオウミガメの寿命はおよそ80年です。
人間と同じように70歳〜80歳まで生きる動物はそこまで多くありませんので、ウミガメはかなり長寿な生き物と言えるでしょう。
ただし、アオウミガメを含めウミガメ科の生き物が「大人になれる確率」は1000分の1〜3000分の1くらいと考えられています。
つまり大人まで成長して天寿を全うできる個体は圧倒的に少ないということです。
アオウミガメとアカウミガメの違い
アオウミガメと同じように日本の沿岸部で見られるのが「アカウミガメ」です。
アオウミガメとアカウミガメはどう違うのか?といった疑問を持つ方も多いようなので、簡単にその違いをまとめてみました。
・アオウミガメは甲羅の大きさが90~110cmくらいまで成長する
・アカウミガメの甲羅は70~90cmくらいなので一回り小さい
・アオウミガメは草食性で海藻類を好んで食べる
・アカウミガメは肉食性でエビやカニが好物
・アオウミガメは身体が大きいため両手を一緒に出して進む
・アカウミガメは左右の手を交互に出して進む
そのほか甲羅の形が丸いのがアオウミガメ、甲羅がハート型っぽく見えるのがアカウミガメといった判別方法もあります。
アオウミガメの特徴・生態
ここからはアオウミガメの具体的な生息地・大きさ・食性などをご紹介していきます。
生息地
アオウミガメの生息地は太平洋・インド洋・大西洋です。
具体的な生息地や産卵地は以下を参考にしてみてください。
・インドネシア、マレーシア、オーストラリアなどの太平洋南西部~インド洋東部
・ガラパゴス諸島、ブラジルなどの太平洋東部
・アメリカのフロリダ州などの大西洋西部
日本では主に「小笠原諸島」や「南西諸島(奄美大島や沖縄)」の近くでアオウミガメの回遊や産卵が確認されています。
また、近年では伊豆諸島の「八丈島」や愛知県豊橋市の「表浜海岸」などでもアオウミガメの産卵が確認されていて、活動範囲の広域化や個体数の増加が期待されています。
大きさ
アオウミガメはウミガメ科の中で最大種です。
甲羅の大きさは最大で1.5mまで成長し、重さは200kg前後に及びます。
なお、平均的な大きさの個体でも甲羅の大きさは1m前後、体重は100kg〜150kgくらいです。
大人のウミガメは人間ひとりで持ち上げられないほどの大きさとなりますので、水族館で飼育されているウミガメを世話するのもなかなか大変だと思います。
ちなみにアオウミガメは生息する場所によって大きさが変わり、もっとも成長するのは大西洋の個体群とのことです。
(平均的な体長は太平洋⇒インド洋⇒大西洋の順番で大きくなる模様)
食性
アオウミガメは唯一「草食性」のウミガメとされていますが、主食であるアマモなどがない場合は小型の生き物も捕食します。
というのも、もともと生まれたばかりのアオウミガメは「雑食性」です。
アオウミガメの幼体は小さなカニやエビといった甲殻類、貝類、魚卵やクラゲなどを食べて成長します。
その後、大きくなったアオウミガメは幼体のときに過ごした場所を離れ、海藻類が多い場所へと移動していくそうです。
なお、水族館で飼育されているアオウミガメには、海藻類のほか魚類やイカなどを混ぜ込んだ配合飼料が与えられています。
産卵
アオウミガメは卵生の生き物です。
それぞれの個体群は産卵する場所を決めていて、外洋で交尾をおこなったメスが産卵地へと移動し、海岸に穴を掘ってからそこに卵を産み落とします。
(産卵のシーズンは生息する地域によって異なる)
日本の小笠原諸島で産卵をおこなうアオウミガメは6月〜9月ごろにかけて、数回にわたり産卵をおこないます。
1回に産み落とす卵の数はだいたい100個前後、卵の大きさは4cm〜5cmで生まれたばかりの幼体は手の平に収まるほどの小ささです。
アオウミガメは絶滅危惧種
アオウミガメは絶滅危惧種に指定されている生き物です。
なお、ウミガメ科に分類されるウミガメは、ヒラタウミガメを除きすべて絶滅危惧種として扱われています。
(ヒラタウミガメは情報不足のため絶滅危惧種に指定されていない)
アオウミガメは昔から食用や商用として捕獲されていましたが、特に1700年代から1900年代にかけての乱獲によってその個体数が激減しました。
現在はワシントン条約によってアオウミガメの取引が国際的に禁止されているものの、食糧難にあえぐ発展途上国(主に島国)では貴重な獣肉としてアオウミガメが捕獲され続けています。
なお、日本にもアオウミガメを食用とする文化はあり、年毎に捕獲できる頭数制限を課せながらアオウミガメ漁がおこなわれています。
※獲っていいアオウミガメの大きさを制限し、稚ガメの放流や人工孵化などをおこなうことで日本近海の個体数は安定傾向にある。
まとめ
アオウミガメの特徴や生態、生息地や寿命などを詳しくご紹介してきました。
ご覧いただいたようにアオウミガメは日本でも見られるウミガメの一種です。
日本ではアオウミガメの産卵地を守る活動を通して個体数の安定に努めていますが、世界規模で考えるとまだまだアオウミガメは絶滅の危機から脱していません。
アオウミガメの未来を守るためには、自分たちができる保全活動に興味を持ち、行動に移すことが重要と言えるでしょう。