この記事では水族館などで見られる海洋生物の中でも少し変わったビジュアルをしている「マンボウ」について解説していきます。
マンボウは身体の大きさが全長3.3メートルを超す世界最大級の「硬骨魚類」です。
円盤型をした胴体部分が特徴的で、一般的な魚より独特な見た目をしていることから人気があります。
そんなマンボウには「海の生物の中で最弱説」という噂がネット上で流れているのですが、ここではその噂に関する真相もまとめてみました。
水族館などでマンボウを見るときには、こちらの内容を参考にしながら豆知識を披露してみてください。
そもそもマンボウとは?
それでは初めに「そもそもマンボウとはどういった魚なのか?」から見ていきましょう。
マンボウは「フグ目マンボウ科マンボウ属」に分類されている魚です。
もともとは陸地から近いところに生息していたフグが外の広い海へと棲み処を移した結果、そこに適用するために進化した魚がマンボウと言われています。
そんなマンボウは温帯・熱帯の外洋に生息していて、基本的には世界中どこでも見られる魚の一種となっています。
ちなみにマンボウ属には「マンボウ」「カクレマンボウ」「ウシマンボウ」の3種類が分類されていますが、このうちもっとも個体が大きくなりやすいのはウシマンボウです。
また、海の中にはマンボウ属と名前が似ている「ヤリマンボウ」「アカマンボウ」という魚もいますが、これらは生物学的にヤリマンボウ属やアカマンボウ目に分類されるため普通のマンボウとは異なる魚種となります。
フグ目に分類されるマンボウ・カクレマンボウ・ウシマンボウの特徴は、横から観察したとき円盤型に見える身体のフォルム、そして発達した背びれと尻びれを持っているところです。
マンボウには他の魚のような腹びれや尾びれがないのですが、独自に進化した背びれと尻びれを巧みに動かすことで推進力を得ています。
なお、このあと解説するマンボウの生態でも触れますが、ゆったりとした動きが印象的なマンボウでも背びれと尾びれを同調させることでそれなりの遊泳力を発揮することが確認されています。
マンボウの生態・特徴
ここからはマンボウの生態やさらに詳しい特徴をご紹介していきます。
世界最大級の硬骨魚
マンボウは世界最大級の硬骨魚であり、これまでに発見された個体の中でもっとも大きいものは体長「3.33メートル」を記録しています。
また、体重に関しては最重量2.3トンとなっていますが、これは「ウシマンボウ」の個体による記録です。
なお、2017年に千葉県鴨川沖で2.3トンのウシマンボウが発見されるまでは「マンボウ」が世界で一番重い硬骨魚とされていました。
とは言え、どちらにしてもマンボウ属の魚は大型になりやすい特徴を持っていて、水族館などで見ると迫力のある姿に感動できます。
食性について
マンボウは海の中で動物プランクトン・クラゲ・イカ・イワシ・イカナゴなど、柔らかいものか小型の魚を食べて生活をしています。
また、カニ・エビといった甲殻類、ホタテなどの貝類もマンボウが食べるもののひとつに含まれるようです。
ただ、マンボウは消化能力が低いため硬い殻を持つ大型の甲殻類を積極的に食べることはないと考えられています。
同様に消化吸収効率が悪い海藻も好んでは食べません。
なお、前述の通り普段は受動的に海を漂うマンボウでも、エサを捕食する際には海流に逆らうほどの遊泳力を見せます。
ちなみに水族館で飼育されているマンボウには、主にすり潰したエビなど消化に良いエサを与えているとのことです。
産卵数が多い!?
ネット上では「産卵数が非常に多い」という点もマンボウの特徴として挙げられていますが、この情報は定かなものではありません。
マンボウは産卵数が多いというのは1920年代に発表された論文が元となっていて、これによるとマンボウの卵巣には3億個の卵が存在すると語られています。
しかし、実際にすべての個体が3億個前後の卵を持っているわけではなく、またその数についても正確な数字ではないことが現在の調査で分かっているようです。
とは言え、日本では「3850万個の卵とその他未成熟卵多数」「重量法により推定8000万個の卵」を持つマンボウが確認されています。
※すべての卵を一度に産卵するわけではなく、複数回に分けて多くの卵を産むようですが、詳しい生態についてはまだ研究段階とのこと。
マンボウは弱い?
あるときからマンボウはネット上で「海の中で最弱の生物」として話のネタにされるようになりました。
これは「マンボウはジャンプした後、その着水の衝撃で死ぬ」という情報がウィキペディアに掲載され、それを面白がったネット住人たちが勝手に拡散した噂です。
実際にマンボウは身体についた寄生虫を取り除くために海面に浮かんだりジャンプしたりするのですが、その衝撃で死ぬということはありません。
ちなみにこうした噂が出回ったことにより、マンボウに対しては以下のような都市伝説も広まっています。
〇皮膚が弱すぎて触れただけでも死ぬ
マンボウの皮膚表面は硬くザラザラしていますが、確かに皮膚自体は弱く、強く押すと跡が残ります。
傷が付くと治りにくく、そこから病気に罹り死亡することはあるものの触れただけで死ぬというのは誇張表現です。
〇魚の骨がのどに詰まって死ぬ
マンボウは消化能力が低いため、大きい魚を分解して吸収することが出来ません。
比較的大きい魚を丸ごと飲み込むと腸で分解されず、その骨が腸を傷つけ死亡する例はあるようですが、小魚程度の骨をのどに詰まらせて死ぬことはないと言われています。
〇太陽光を浴びると死ぬ
これに関しては完全なるデマ情報です。
マンボウは身体に付着した寄生虫を取り除くため、海面に浮かび身体の表面を太陽光にさらします。
この姿が死んでいる様子と捉えられてデマ情報が広がったのかもしれません。
〇海水温の低さで死ぬ
深海まで潜ったマンボウが海水の冷たさで死ぬといった噂も出回っていますが、これも完全にウソです。
マンボウは水深800m程までを活動範囲としているため、深海の冷たさで死ぬということはありえません。
〇ストレスやちょっとしたショックで死ぬ
これについては何を元ネタとしているのか分からないレベルのデマ情報です。
ストレスに弱いのは他の魚も同じであり、ちょっとしたショックで死ぬのであれば水族館まで運ぶことも不可能と言えるでしょう。
なお、マンボウが弱いと噂されるのは「目が悪い(目に寄生虫がつき視力がほぼない)ため水族館ではよくガラスにぶつかる」「ぶつかった衝撃で皮膚を傷め、そこから衰弱していく」というものが理由だと推測できます。
マンボウは食べられる?美味しい?
マンボウは食用として出回ることがほとんどない魚です。
その理由としては「獲れてから時間が経つとあまり美味しくない」というものが挙げられます。
マンボウは獲ってからすぐに捌いて食べればそれなりに美味しいのですが、鮮度が落ちるスピードが早く一般的な魚と同様に市場へ流すのが難しい魚です。
なお、鮮度が落ちると「水っぽく」なり、ベシャっとした食感になってしまいます。
しかし、海から近い地域の中にはマンボウを食べる文化が残るところもあり、三重県の一部沿岸地域ではマンボウのフライを定食として提供するお店もあるようです。
また、台湾では日本と比べてマンボウを食用とする率が高く、炒めものやフライで食べることが多いそうです。
まとめ
独特なフォルムとゆったりとした動きが特徴的なマンボウに関する情報をご紹介してきました。
ご覧いただいたように「マンボウ最弱説」の噂はその大半がデマであり、実際にはそこまで弱い魚ではありません。
ただし、目が悪いため水族館ではよくガラスにぶつかるというのは本当なので、水族館でマンボウを見るときにはそういった部分も観察してみてください。