この記事では「ベラ」の特徴や生態をご紹介していきます。
ベラは全国各地で釣れる魚です。
世界中には500種類を超えるベラの仲間が存在し、日本近海でも100種類以上のベラが生息しています。
ここでは、そんなベラ科に属する魚の種類や生息地、大きさや食性などを詳しくまとめてみました。
また、合わせてベラの美味しい食べ方やベラの雑学もご覧いただけますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
ベラとは?
ベラは「スズキ目ベラ亜目ベラ科」に分類される魚の総称です。
ベラと名が付く魚は非常に多く、日本でもたくさんのベラを見かけます。
そんなベラは漢字で「倍良」と書きますが、これはあくまで当て字です。
本来は「靴ベラのように薄くて平たい」ことから「ベラ」と呼ばれるようになったそうなので、その場合は「平」(ひらが転じてべら)という漢字が適切と言えるでしょう。
ちなみにベラ科の魚は種類が豊富なので、すべてが平たい身体をしているわけではありません。
平べったいベラ科の魚としては「キュウセン」「ニシキベラ」などが代表格に挙げられますが、中には「メガネモチノウオ(通称ナポレオンフィッシュ)」のようなずんぐりとした体形の魚も存在します。
また、ベラは一部の釣り人から嫌われている魚としても有名です。
ベラが嫌われ者となっているのは「本命の魚のために用意したエサ」を全部取っていってしまうという理由からであり、それほど何でも食べる魚ということでもあります。
そのほか中部・関東以北では臭みがある、食べ馴染みがないといった理由からベラを敬遠する釣り人が多くいます。
ただし、関西の食文化ではベラを一般的な食用魚として扱う習慣があり、旬のベラが高値で出回ることも珍しくありません。
関西に程近い瀬戸内海ではベラを専門的に狙う釣り船が出されるくらいなので、食べたことがない方はぜひ一度ベラを味わってみてください。
ベラに毒はある?
いまのところ、日本近海に生息するベラ科の魚で毒を持っている種類は存在しないとされています。
ただし、同じスズキ目の「ベラ亜目ブダイ科」に属する「アオブダイ」には猛毒があるので注意が必要です。
ベラやその他の魚を釣ろうとしてアオブダイが掛かる可能性は低いものの、万が一釣り上げてしまった場合にはそのまま逃がしましょう。
なお、アオブダイに含まれているのは「パリトキシン」という毒です。
こちらの毒は食中毒症状を引き起こす危険性が非常に高く、過去にはアオブダイを食べたことで死亡した方がいるほどです。
※パリトキシン以外にもフグ毒と同じテトロドトキシンが検出された事例もあります。
ベラの性転換とは?
ベラの中には成長することで性転換をおこなう種類も存在します。
性転換するベラはメスからオスに変わるものが多く、オスになるとメスを惹き付けるために身体の色が派手になるといった特徴が見られます。
若いうちはメスとしてたくさんの子供を産み、成長に伴いオスへと性転換して繁殖活動をおこなうというのもベラの少し変わった生態と言えるでしょう。
ベラは高級魚?
多くのベラは夏に旬を迎えます。
7月〜8月ごろには至るところでたくさんのベラが釣れますが、漁業資源としての価値はそれほど高くありません。
ただし、これは関東や東北あたりの話であり、関西以南では高級魚として扱われることもあります。
ベラの種類・仲間
ベラ科の魚を細かく分けると、全部で「4亜科・60属・約500種類」になると考えられています。
このうち、日本近海で確認されているのは130種類程度です。
ベラは海水魚の中でハタ科・ハゼ科と並び種類が多い魚として知られています。
そんなベラ科のうち、代表的な魚をいくつかまとめてみましたのでご覧ください。
コブダイ(ベラ科コブダイ属)
コブ鯛と表記されるため鯛の仲間のように思えますが、コブダイはベラ科の魚です。
オスの額に大きなコブがあることからその名前が付けられました。
コブダイは最大1mくらいまで成長する魚で、旬を迎える冬には高級魚として扱われます。
キュウセン(ベラ科キュウセン属)
キュウセンは北日本から西日本まで幅広い海域に生息しているベラです。
地方によってはこの「キュウセン」をベラと呼ぶことが多く、ベラ科の中でも知名度が高い種類となっています。
ちなみにキュウセンは瀬戸内海でよく釣れるベラです。
同地域ではキュウセン狙いで釣り船を出すこともあります。
なお、キュウセンの旬は夏であり、寒い時期になると海底の砂に潜って冬眠するといった特徴を持っています。
ホンソメワケベラ(ベラ科ソメワケベラ属)
ホンソメワケベラは全長12cm程度の小さいベラです。
他の魚にまとわりつき、相手の口や体表に付いている微生物・食べ残し・寄生虫などを捕食するといった特殊な生態を持っています。
また、こうした生態から「掃除魚」とも呼ばれています。
ホンベラ(ベラ科ホンベラ属)
ホンベラはキュウセンと並びメジャーなベラ科の魚です。
全長は13cm程度で、温帯の海域を好むといった特徴を持っています。
ニシキベラと似ていることから混同されがちですが、ニシキベラはホンベラより大きく、腹部が青いため、比較的簡単に見分けられます。
メガネモチノウオ(ベラ科モチノウオ属)
「ナポレオンフィッシュ」という別名でも有名な魚が「メガネモチノウオ」です。
太平洋やインド洋のサンゴ礁エリアに生息することが多いので、日本近海で見かけることは稀な魚となります。
メガネモチノウオはオスの方が大きく成長し、最大で2mを超えることもあります。
ベラの特徴・生態
ここからはベラの生息地・大きさ・食性といった生態をご紹介していきます。
生息地
ベラは熱帯〜温帯といった暖かい海域・気候を好む魚です。
基本的には海底が砂地になっている浅瀬、サンゴ礁、岩礁のあるエリアを生息地とします。
なお、ベラの中には寒さに強い種類も存在するため、日本の場合は北海道から沖縄まで全国各地の沿岸部でベラの仲間を確認することが可能です。
大きさ
ベラ科の魚は種類によって大きさがバラバラです。
多くのベラは体長10cm〜30cmくらいですが、中にはメガネモチノウオのように最大2mを超す種類も存在します。
ちなみに釣りの対象となるベラの大きさは20cm程度で、これくらいのサイズであれば食用として持って帰る価値が出てきます。
食性
基本的にベラは「肉食性」の魚です。
だいたいの種類は頑丈な歯を持っていて、砂地に隠れている小さな貝類や甲殻類などをエサとしています。
また、ゴカイなどの生物もベラの好物です。
釣りの場合にはサンマなどの切り身やイソメなどをエサとして使います。
ベラはそのほとんどが日中に活動するため、釣りをする際は昼間の時間帯を狙いましょう。
ベラの味・食べ方
関東ではあまり馴染みがないベラですが、関西では一般的な食材として扱われています。
そんなベラは皮にヌメリが多い魚なので、調理するときは丁寧にヌメリを取りましょう。
なお、身には水分が多く含まれているものの、新鮮なベラなら刺身にしても美味しくいただけます。
また、ヌメリを取った後に皮つきの状態から湯引きをして、そのまま食べるというのもおすすめです。
そのほか、塩焼き・煮付け・唐揚げなどもベラの美味しい食べ方として挙げられます。
まとめ
日本全国どこの海でも見かける「ベラ」の特徴や生態を詳しくご紹介してきました。
ベラは釣り人の間で「外道」として知られる魚ですが、旬の時期や調理方法を一考すれば美味しく食べられます。
特に関西のベラは高級魚として扱われていますので、食べたことがない方はぜひ一度試してみてください。