魚介類を生で食べる習慣があるのが我々日本人ですが、生魚を食べるときに気を付けたいのが「アニサキス」による食中毒です。
アニサキスは海水魚・回遊魚に寄生する線虫で、人間の体内に入り込むとアレルギー症状による腹痛などを引き起こします。
実は日本で発生している食中毒の4~5割はアニサキスが原因となっているのですが、ここではそんなアニサキスに関する情報を詳しくまとめました。
アニサキスは死んだ魚の身でもしばらくは生き続けられる寄生虫です。
「アニサキスの付いた刺身などを食べたらどうなってしまうのか?」「アニサキスによる食中毒への対策は?」といった部分をご紹介していきますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
アニサキスとは?
アニサキスは長さ15mmくらいの白い糸状をした寄生虫です。
昔から食中毒の原因として知られるアニサキスですが、実は最近になってその存在がよくニュースで取り上げられるようになりました。
アニサキスは最終的にクジラやイルカといった大型の海生哺乳類を宿主として成長しますが、その前の幼虫段階でサバやイワシといった魚に寄生をします。
こうしたアニサキスが寄生している魚介類をそのまま生で食べると人間はアレルギー反応を起こし食中毒を発症してしまうわけです。
【アニサキスの一生】
「産卵されたアニサキスが海に漂う」⇒「オキアミなどの甲殻類に寄生」⇒「サバ・イワシ・サケ・タラ・サンマ・イカなどに寄生」⇒「クジラやイルカに寄生」⇒「成長したアニサキスが卵を産み、排泄物と共に海へと撒かれる」⇒繰り返し
上記は分かりやすくまとめたアニサキスの一生です。
アニサキスが寄生した魚を人間が獲り、それが食卓まで届いてしまうと食中毒の原因となってしまうのですが、アニサキスは人間の身体の中では成長できません。
人間の体内では1週間ほどで死滅するといったデータがありますので、アニサキスが身体の中で成虫となるような心配はないわけです。
また、アニサキスを体内に取り込んだとき、すべての方が食中毒の症状を発症するとは限りません。
中にはアニサキスが付いた魚介類を食べても無症状のまま終わり、そのまま体外へと排泄するケースも珍しくないということです。
ただし、やはりアニサキスによる食中毒というのは非常に怖いものであり、出来る限り対策を講じておきたいものと言えるでしょう。
ちなみに令和になってからの数年間では国内の食中毒事例のうちおよそ4~5割はアニサキスが原因となっています。
毎年300人~400人くらいの方がアニサキスによる食中毒を訴えていますので、生の魚介類を買ってきて自分で調理するとき、または刺身などを買ってきたときには注意してください。
引用:厚生労働省
なお、アニサキスは生きた魚の中では内蔵に寄生していて、魚が死ぬと筋肉の方へ移動します。
そのため、新鮮だからといっても生の魚介類の内蔵をそのまま食べることにはリスクがありますので気を付けましょう。
(むしろ新鮮で生の魚介類こそアニサキスが生きている可能性が高い)
身の方へ移動してきたアニサキスに関しては、刺身にしたときよく見れば白い糸状のようなものとして目視が出来ます。
光に透かしてみると発見できる確率がアップしますので、不安な方はそうした予防策を取ってみてください。
それでは次に、アニサキスによる食中毒の症状を詳しく見ていきましょう。
アニサキスによる食中毒の症状
アニサキスが原因で食中毒を引き起こした場合には、以下のような症状が出ます。
〇急性胃アニサキス症
アニサキスによる食中毒症状でもっとも多いのがこちらの急性胃アニサキス症です。
アニサキスが寄生する魚やイカなどを食べておよそ数時間~十数時間後に悪心・みぞおちあたりの激しい痛み・嘔吐などが生じた場合には急性胃アニサキス症を疑いましょう。
この急性胃アニサキス症は口から入り込んだアニサキスが胃の内部に突き刺さることで発症するわけですが、これは胃の内部を刺されている痛みではなく胃壁がアニサキスによるアレルギーを感じて様々な症状を生み出していると考えられています。
そのため、胃の中からアニサキスを取り除くことがもっとも効果的な治療法とされ、内視鏡によってアニサキスを除去すれば比較的すぐに症状が緩和されるとのことです。
ちなみに先ほども軽く触れましたがアニサキスを口にした人すべてがこうした症状を訴えるわけではなく、中には無症状のまま終わる方もいます。
その差については研究段階ということですが、症状の原因がアレルギーだとすると体質などによっても痛みの度合いなどが変わってくるのかもしれません。
〇急性腸アニサキス症
胃の内部で消化されなかったアニサキスが腸まで辿り着くと、こちらの急性腸アニサキス症を発症します。
急性腸アニサキス症の場合は胃よりも発症までの時間が長く、食後十数時間~数日経ってから症状を感じることが多いようです。
急性腸アニサキス症を発症した場合には激しい腹痛(特に下腹部)、腹膜炎の症状が感じられます。
人によってはごく稀に腸穿孔や腸閉塞を引き起こすケースがあり、こうした重い症状になった場合には入院が必要となりますので早めに受診をおこなうようにしましょう。
〇消化器外アニサキス症
上記2つよりも症例が少ないものの注意したいのが消化器外アニサキス症です。
こちらは消化管を突き破り、腹腔へと飛び出したアニサキスが各箇所に寄生して発症する食中毒症状となります。
生の魚介類を食べたあとに内蔵のどこかで違和感や痛みが生じた場合には、出来るだけ早く診察を受けましょう。
〇アニサキスアレルギー
身体がアニサキスに対してアレルギー反応を見せると蕁麻疹や呼吸不全、血圧の低下といった症状が起こります。
最近ではサバなどの特定の魚に対するアレルギーかと思っていたら「アニサキスアレルギーだった」といった事例もあるようです。
〇アナフィラキシーショック
アニサキスアレルギーの方が気を付けたいものが「アナフィラキシーショック」です。
アナフィラキシーショックは非常に重たいアレルギー反応であり、場合によっては重篤な状態になる危険性もあります。
そのため、生魚などを食べたあとにアレルギー症状を感じる方は一度検査をした方が良いかもしれません。
なお、ここまで色々な食中毒症状を紹介してきましたが、経口感染したアニサキスは数日以内に体内で死滅します。
何かしら原因となりそうな魚介類を食べてから3~5日ほど経過した後アレルギー症状や腹痛を感じた場合は、アニサキスではなく別の病気の可能性もありますので速やかに受診をしましょう。
アニサキスが寄生しやすい魚
海水魚・回遊魚といった魚はすべてアニサキスに寄生される可能性があります。
その中でもアニサキスが寄生しやすいのは以下のような魚なので参考にしてみてください。
・サバ
・サンマ
・サケ
・タラ
・イワシ
・ホッケ
・イカ
・ホタルイカ
ご覧の通り中には刺身ではあまり食べる習慣がない魚介類もいますが、イワシやイカなどは生食する機会が多いと思いますのでスーパーなどで買ってきた際には気を付けるようにしましょう。
アニサキス対策
アニサキスへの対策としては以下のような方法が有効的とされています。
・生の丸魚を買ってきた場合にはすぐ内臓を取り除く
・刺身にした場合は身にアニサキスが付着していないか確認する
・-20℃の状態で24時間以上冷凍する
・70℃以上もしくは60℃で1分加熱する
・内臓は生のまま食べない
アニサキスは冷凍または加熱によって死滅します。
また、天然ものの魚より養殖ものの方がアニサキスに寄生されている可能性が低いため、そういった魚を選ぶというのも対策のひとつと言えるでしょう。
ちなみに北海道では冷凍したサケなどを「ルイベ」と呼び、郷土料理として昔から食べられていますが、これにはアニサキスを予防する意味合いもあるようです。
アニサキスの間違った対策
「酢で締める」「塩や醤油漬けにする」「殺菌作用のあるワサビと一緒に食べる」などの調理方法・賞味方法はアニサキスの対策にはなりません。
アニサキスは食用の酢や塩では殺せませんので、目視して取り除くか冷凍・加熱といった手段を取ってください。
また、よく噛めばアニサキスが死ぬといったものも迷信です。
アニサキスは非常に小さい線虫ですので、よく噛んだとしても生きたまま胃の中に入り込む可能性が高いと言えます。
なお、家庭用の冷凍庫は-18℃以下を基準として作られていますが、開け閉めによって温度が上がることも考えられます。
家庭で-20℃をキープしながら24時間経過させる方法は少し難しいかもしれませんので、気になる方は最初から冷凍ものの刺身を買うというのもひとつの手です。
まとめ
食中毒のニュースでよく見聞きする「アニサキス」について詳しくご紹介してきました。
ご覧いただいたようにアニサキスは海の魚であればどれにでも寄生している可能性があります。
そのため、釣ってきた魚や丸のまま買ってきた魚を調理するとき、また冷凍ものではない刺身を買ってきたときにはよくチェックするようにしましょう。