この記事では観賞用の海水魚として人気が高い「ナンヨウハギ」について詳しく解説していきます。
ナンヨウハギはディズニー・ピクサーのアニメーション映画「ファインディング・ドリー」の主人公・ドリーのモチーフとなった魚です。
鮮やかな青色の身体に黒や黄色のラインが入った見た目は、まさに観賞用の海水魚にぴったりといった印象があります。
ここでは、そんなナンヨウハギの特徴・生態・飼育方法などを分かりやすくまとめてみました。
これからアクアリウムを始めたい方、ナンヨウハギを飼育してみたいといった方はぜひこちらの内容を参考にしてみてください。
ナンヨウハギとは?
「ナンヨウハギ」は生物学上「スズキ目ニザダイ科ナンヨウハギ属」に分類される魚です。
ちなみにナンヨウハギ属にはこのナンヨウハギしか分類されていませんので、それだけ特徴的な魚であることが分かります。
そんなナンヨウハギの見た目としては青をベースとした身体に黒い曲線が入り、尾ビレと胸ビレに黄色が混じっている個体が一般的です。
このように青・黒・黄色のカラーリングが絶妙に混じり合った見た目が観賞用として高い人気を誇っている理由だと思います。
また、冒頭でも紹介した通り映画「ファインディング・ドリー」の主人公・ドリーのモチーフがナンヨウハギだったことも知名度アップに一役買っていたと考えられますが、実際のナンヨウハギはアニメのように目が大きくありません。
身体の黒模様が目のあたりまで掛かっている個体だと、目と模様がほぼ同化しているようにも見えます。
こうした独特な見た目をしているナンヨウハギですが、海の中では主に浅瀬のサンゴ礁に群れを作って生息しています。
なお、群れを作って生活するのは幼魚のナンヨウハギを守るためです。
サンゴ礁の隙間に身を隠しながら幼魚を育てるナンヨウハギは、大きいものだと30cmくらいにまで成長します。
ナンヨウハギは基本的に憶病かつ温厚な性格をしているので、自分より大きな外敵に襲われそうになるとサンゴ礁へ逃げ込むことが普通です。
しかし、身体が大きな個体の場合は自分より小さな魚などに攻撃する習性も持ち合わせています。
さらに、いざ外敵と戦うとなった場合には鰭に付いている棘を使って反撃するのですが、この棘には毒があることが判明しています。
そのため、スキューバダイビングをしているときにナンヨウハギを見かけても、素手では触らないよう気を付けてください。
それでは次に、ナンヨウハギのより詳しい生態を解説していきましょう。
ナンヨウハギの特徴・生態
ナンヨウハギはインド洋や太平洋など幅広い海に生息する魚です。
また、生態としては「主に幼魚期はサンゴ礁に隠れて生活する」「毒のある棘で外敵から身を守る」といった点が挙げられます。
寿命は平均して8年~10年ほどと言われていますが、中には20年近く生きる個体も存在するようです。
主な生息地
ナンヨウハギの主な生息地はインド洋・太平洋となっていますが、日本でもナンヨウハギを見ることは出来ます。
ナンヨウハギが生きていける海水温は25℃前後と言われていますので、比較的温暖な海域で幼魚を育てられるサンゴ礁がある場所ならナンヨウハギは生息可能です。
日本でこの条件に合う場所だと、やはり沖縄諸島・小笠原諸島あたりになるでしょう。
また、世界で考えてみるとアフリカ大陸の東岸、オーストラリアの北岸までナンヨウハギの生息地は広がっています。
なお、群れを形成しながらサンゴ礁に隠れて生活するナンヨウハギですが、食性は雑食性で主に動物性プランクトンや藻などを食べて成長していきます。
こうしたナンヨウハギのエサとなる動物性プランクトンや海藻類が豊富な海域であれば繁殖や子育ても容易となるため、生息地として選ばれる傾向にあるということです。
ちなみにナンヨウハギは外敵に襲われたときだけでなく、夜も身を守るためにサンゴ礁に隠れながら横になって寝ます。
自身で飼ってみると分かりますが、その寝姿もまた多くのファンから愛される理由と言えるかもしれません。
トゲを隠し持っている
ナンヨウハギはインド洋に生息するパウダーブルーサージョンフィッシュと同じニザダイ科に属する魚です。
パウダーブルーサージョンフィッシュは背鰭や尻鰭に棘を持つ魚なのですが、ナンヨウハギも同じく各鰭に棘を隠し持っています。
また、この棘には毒性があることが近年分かっていて、ナンヨウハギは棘と毒の両方を使って外敵から身を守っているそうです。
ちなみにこの毒は人間に致命傷を与えるほど強くはありません。
ただし、毒性のある部分を残したナンヨウハギを食べれば食中毒のような症状に見舞われますので注意しましょう。
(棘に触ると痛みや痺れを感じるので釣りあげてしまったときは要注意)
体調によって色が変化する
ナンヨウハギは青色の身体が特徴的な魚ですが、体調の変化によってその色が白っぽくなったりします。
体調に問題ないときは鮮やかな青、体調が悪いときは白っぽい色になると覚えておくと飼育する際すぐ異変に気付けます。
ただし、普通に寝ているときでも身体が白っぽく変化することがあるようなので、そのあたりは日中のエサの食べ具合などから判断しましょう。
ナンヨウハギの飼育方法
それでは次にナンヨウハギの飼育方法をご紹介していきます。
ナンヨウハギはサイズによって価格がバラバラですが、だいたい2,000円~6,000円くらいで購入可能です。
なお、水槽やその他設備などを一から揃える場合はおよそ3~4万円ほどの費用が掛かります。
水槽・設備・環境
ナンヨウハギを飼育する場合は、最低でも90cmサイズの水槽が必要となります。
先ほども軽く触れましたがナンヨウハギは成長すると20~30cmくらいにはなるので、飼育する数との兼ね合いを考えながら大きめの水槽を用意してあげましょう。
また、ナンヨウハギは糞の量が多いので、水質を保つためのフィルターが必須です。
ろ過フィルターには様々な種類がありますが、ナンヨウハギを飼育するなら上部式のフィルターがおすすめと言えます。
なお、ナンヨウハギは動物性プランクトンやバクテリアが豊富な海に生息する魚です。
そのため、水槽に人工海水の素やライブロック、マリンプランツを入れてしばらく経ってからナンヨウハギを移すようにしましょう。
(いきなりキレイすぎる水の中に入れられるとストレスが掛かってしまう模様)
ちなみに野生のナンヨウハギはサンゴ礁の隙間に隠れて寝る習性がありますので、水槽で飼育する際にもライブロックを設置するなど環境づくりが大切です。
水の温度は25℃前後が適温であり、季節に合わせてヒーターや冷却ファンを活用してみてください。
餌
野生のナンヨウハギはサンゴに付着した藻類や海に漂うプランクトンを主にエサとしています。
しかし、ナンヨウハギは基本的に雑食性なので飼育時はエサ選びに困りません。
自宅で飼育する場合には、オキアミなど動物性のエサやレタスなどの野菜を与えることが一般的です。
もちろん人工飼料を与えても問題ないので、市販されているメガバイトグリーンなどもエサとして使えます。
なお、ナンヨウハギの飼育には1日3回適量の食事が必要です。
エサが不足するとすぐに痩せてしまいますが、一度に大量のエサを与えても食べきれず水質を汚すだけとなってしまうのでエサやりのタイミングは注意しましょう。
混泳について
まだ幼魚のナンヨウハギであれば性格が温厚のため多種との混泳も可能ですが、大きく成長すると小さい魚を攻撃してしまうので基本的には混泳に向きません。
同種のナンヨウハギ同士を飼育する際は小さいときから一緒に育てるとケンカをしないとも言われていますが、身体の大きさに違いが出てくるとやはり小さい個体がいじめられてしまう可能性が高いようです。
どうしてもナンヨウハギと多種を混泳させるのであれば大きめの水槽を用意して、ナンヨウハギと同じかそれ以上の大きさの魚(ヤッコ類やベラ類など)を選ぶのがベターだと考えられます。
まとめ
カラフルな見た目が印象的な「ナンヨウハギ」について詳しくご紹介してきました。
「サンゴ礁に隠れながら生活する」「夜になると横になって寝る」といった特徴を持つナンヨウハギは観賞用の魚として人気です。
複数の魚同士で混泳させるには不向きですが「まずは1匹から魚の飼育を始めてみよう」という方にはおすすめなので、ぜひ一度お店などで生のナンヨウハギをご覧になってみてください。