水先人とは?仕事内容・年収は?免許・試験についても

この記事では「水先人」という大型船の航海に関わる仕事についてご紹介していきます。

港に到着する船を安全に所定の位置まで案内するのが「水先人」の主な仕事です。

水先人は1級~3級といった形で階級が分かれていて、それぞれ請け負える仕事や扱える船の大きさが変わってきます。

当然、1級水先人になるためには相応の実務経験と知識が必要です。

また、外国からの船を招き入れる際には英語などの語学力やコミュニケーション能力も重視されます。

ここでは、そんな水先人の仕事内容・年収・資格の取り方などを詳しくまとめました。

海や船に関わる仕事を目指してみたいという方は、ぜひこちらの内容を参考にしていってください。

水先人とは?

港にやって来る大型船の船長に対して船舶の操縦や安全な航路をアドバイスするというのが「水先人」の仕事です。

アドバイスというと簡単に思えてしまうかもしれませんが、水先人の仕事は非常に重要であり、そのアドバイスや指示によって船同士の衝突などを未然に防いでいます。

ちなみに日本には全部で35ヵ所の「水先区」があり、そのうち10ヵ所は「強制水先区」となっていて必ず水先人が乗船しなければなりません。

そのため、日本に着港したい大型船の船長はまず各水先区に所属している水先人へと要請を出すわけです。

要請を請け負った水先人はその船舶へと乗船し、船長に対して近海・港・海峡の情報を記載した「水先情報カード」を渡します。

そして、船長から水先人に対しては積荷の内容や船舶の操縦機能について書かれた「パイロットカード」が渡され、双方の情報を共有した上で水先人は船長に安全な形で接岸する手順をアドバイスしていくということです。

なお、水先人として活動するには国家資格が必要であり、その仕事内容はとても公共性の高いものと言えます。

しかし、水先人はそれぞれが個人事業主という立場になっていて、どこかの会社や企業に属しているわけではありません。

このあたりが非常に特殊な仕事と言える部分なのですが、そんな水先人の資格所有者も法的には「水先人会」という団体に所属することが求められます。
(水先法で定められている)

各水先区に設定された「水先人会」には定員があり、定員に空きがあれば入会が認められ晴れて開業の運びとなるわけです。

それでは次に水先人の詳しい仕事内容や作業を請け負うまでの段取りについて見ていきましょう。

水先人の主な仕事内容

水先人の主な仕事内容は港への着岸を要望する船舶、または港から離岸する船舶を安全な形で誘導する事となります。

その手順を以下にまとめましたのでご覧ください。

〇仕事の流れ
1.船会社などから水先業務の要請を受ける
2.業務を要請してきた船へと向かい乗船する
3.船長と情報を交換して安全な航行計画をアドバイスする
4.針路や速度に注意しながら目的の場所へと船を誘導する
5.入港や着岸の作業をおこなう
6.船が無事に係留したら作業完了

水先人への業務依頼は各水先区の「水先人会」に電話やFAXで届きます。

水先業務の依頼を受けた水先人会では船舶の大きさや取り扱う積荷の内容によって仕事を請け負う水先人を決定、その後水先人はパイロットボート(水先案内船)で要請をしてきた船舶へと向かうわけです。

相手の船に乗り込んだ水先人は船長に対して周辺水域の情報や安全な針路を提案し、船長は水先人に対して船舶の性能や操作方法を伝えます。

あとは地上と連絡を取りながらGPSなどの機器、着港を支援するタグボートなどを使って慎重に着岸を進めていくという流れです。

なお、水先人の仕事は船を無事に係留させることが出来たら業務完了となります。

ちなみにこの際、何かしらの理由によって船舶同士が衝突するなどの事故が起きた場合は業務を依頼した船会社が責任を負う契約となっていますが、水先人の故意による過失や無謀な判断があったと認められた場合には賠償責任が生じます。

もちろん船舶事故の賠償金となればその金額は個人で支払えるものではありませんが、それだけ水先人の仕事には大きな責務があるということです。

それでは次に、重大な責任を負う水先人の給与や年収について見ていきましょう。

水先人の平均給与・年収

ここでは水先人の平均給与や年収をご紹介していきます。

まず、20代~40代の水先人の平均的な月収をまとめてみましたのでご覧ください。

水先人の平均給与

・20代:58万円~
・30代:75万円~
・40代:125万円~

こちらの平均給与は推定とされますが、それでも一般的な職種より高い給与水準であることが分かります。

20代のうちに水先人の資格を取得した場合、その推定年収は少なくとも600万円~700万円になると考えられますのでかなり高収入な部類に入ると言えるでしょう。

また、年齢が上がるにつれて順調に給与が上がっていくところも水先人という仕事の特徴です。

なお、これは3級から2級、2級から1級といった形で資格の階級が上がっていることも要因となります。

水先人の推定年収

・1級水先人:1500万円~2000万円以上
・2級水先人:1000万円~1500万円
・3級水先人:600万円~1000万円

ちなみに1級水先人では平均的な年収が1500万円前後になりますが、この額は所属する水先区によっても変動します。

東京湾のように貨物船などが頻繁にやって来る水先区となると、年収2000万円を超える1級水先人も少なくありません。

水先人が個人事業主である以上、やはり高い収入を得るためには仕事量が多い水先区を選ぶことが重要と言えそうです。

水先人になるには?

水先人になるには国家資格を取得するため試験を受ける必要があります。

水先人の試験には一次試験と二次試験があり、一次試験の時期は5月中旬~6月上旬ごろです。

東京でおこなわれる一次試験に合格すると11月~1月までの間に実施される二次試験を受ける事になります。(二次試験の場所は地方運輸局所在地)

なお、試験科目は身体検査・筆記試験・口述試験などに加えて英会話といった項目も含まれています。

免許について

水先人は所有する免許(資格)によって携われる業務に制限が出てきます。

・1級水先人:制限なし
・2級水先人:上限5万トンまでの船舶、ただし危険物積載船は上限2万総トンまで
・3級水先人:上限2万トンまでの船舶、ただし危険物積載船は不可

水先人になるためにはまず3級水先人の試験に合格しなければなりません。

しかし、水先人の資格というのは試験を受けるだけでもかなり高いハードルが設けられています。

次に水先人の免許を取得するまでの流れを見ていきましょう。

免許取得までの流れ

3級水先人の受験資格を得るまでの流れを以下にまとめたのでご覧ください。

・商船関係の大学や高専学校にて専門の教育を受け3級海技士の試験に合格する
・実務経験を積みながら2級海技士⇒1級海技士の資格を得る
・「総トン数1,000トン以上の船舶への1年以上の実務経験」「登録先水先人養成施設で3級水先人養成過程を修了」すると3級水先人の受験資格が得られる

3級水先人に合格した後は一定の実務年数を積むことで2級、1級と段階的に昇級試験が受けられる仕組みになっています。

このように水先人の資格を得るためには相応の時間と経験が必要となりますので参考にしてみてください。

まとめ

船に関する仕事「水先人」について詳しくご紹介してきました。

ご覧いただいたように水先人の業務は港の安全にとって非常に重要なものであり、また試験を受けるだけでも難しいということが分かったかと思います。

もちろんその分、平均給与や年収は一般職より高く設定されているため、やりがいのある仕事とも言えるでしょう。

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