この記事では可愛らしい見た目が特徴的な「ラッコ」の生態を解説していきます。
ラッコはアラスカやカムチャッカ半島に生息する海洋哺乳類(海獣)の一種です。
日本の北海道周辺でもラッコは目撃されていて、根室市のモユルリ島や浜中町の霧多布岬では繁殖活動をおこなう姿も確認されています。
そんなラッコはお腹の上で貝類などを割り、器用に食事をすることでも有名な生き物です。
ここでは、様々な特徴を持つラッコの歴史・生息地・食性・性格・寿命などを詳しくまとめてみました。
また、国内でラッコが見られる水族館についてもご紹介していきますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
そもそもラッコとは?
ラッコは「食肉目イタチ科ラッコ属」に分類される海洋哺乳類です。
ラッコ属に分類されるのはラッコのみで、単一の種のみで構成されています。
・アラスカラッコ(キタラッコなど)
・ロシアラッコ(チシマラッコ、アジアラッコなど)
・カリフォルニアラッコ(ミナミラッコなど)
ちなみにラッコは上記の通り、3つの種類に分けられています。
(書籍やサイトによっても呼称が変わります)
もっとも個体数が多いのはアラスカラッコで、その数はおよそ10万頭前後です。
北海道でも見かけられるロシアラッコは1~2万頭、カリフォルニアラッコは3000頭ほどとなっています。
そんなラッコの平均的な体長は100センチ~130センチほどです。
体重に関してはオスで30キロ前後、メスで25キロ前後となります。
なお、ラッコの脇腹には若干たるんでいる部分があり、そこをポケット代わりにして食べ残したエサやお気に入りの石などをしまっています。
ラッコの歴史
ラッコの祖先はカワウソ(獺)と同じと考えられています。
そのため、漢字ではラッコのことを「海獺」「獺虎」と書きます。
今から500~700万年前に生きていたカワウソの祖先が進化し、そこからさらに時間を掛けて現在のようなラッコが誕生したそうです。
ちなみにラッコの祖先はもともと陸上で生活をしていましたが、「外敵から身を守る」「エサを獲得する」といった目的のために海へと進出していきました。
その結果、現在のラッコは冷たい海でも生活できる身体を持っているわけです。
ラッコの身体や特技
ラッコの身体は8億本もの体毛に覆われています。
人間の髪の毛は平均10万本~15万本くらいなので、ラッコがどれだけ体毛が多い生き物なのかが分かると思います。
なお、「冷たい海でも体温を保つ」「体毛に空気を含ませ浮き輪代わりにする」というのがラッコの体毛が多い理由です。
そんなラッコは冷たい深海でエサを探せる優れた潜水能力も持ち合わせています。
だいたいのラッコは水深20メートルくらいまで潜れますが、過去には水深97メートルまで潜水した個体もいたそうです。
ちなみにラッコは海水を飲むことで水分補給をおこないます。
海水ばかりを飲んでいると本来は健康を害するわけですが、ラッコは過剰に摂り過ぎた塩分を排出するために一般的なカワウソ類の2倍ほどの大きさをした腎臓を持っています。
ラッコの生態・特徴
続いて、さらに詳しいラッコの生態や特徴についてご紹介していきます。
生息地
先ほど少し触れた通り、ラッコは3種類に分けられます。
・アラスカラッコ:アリューシャン列島からアラスカ、ほかオレゴン州やカナダのブリティシュコロンビア州など
・ロシアラッコ:カムチャッカ半島から千島列島、ほかコマンドルスキー諸島など
・カリフォルニアラッコ:カリフォルニア州中央部
それぞれのラッコが生息する場所は上記の通りです。
ラッコは岩場のある海岸から1キロ圏内、また海藻が多く茂っている沿岸部に生息しています。
ちなみに海藻が多いところに生息するのは「寝ている間に流されないよう、身体に海藻を巻き付けるため」「海藻が豊富なところにはエサとなる甲殻類や貝類が多い」といった理由があるからです。
食性
ラッコの食性は肉食で、1日に体重の1~2割ほどのエサを食べます。
平均的な体重が25キロ~30キロと考えると、エサの量は1日あたり約2キロ~5キロになる計算です。
これは体重70キロの人が1日10キロくらい食事をするのと同程度の量となります。
そんなラッコが好んで食べるのはウニや貝類です。
特にウニが好物というラッコが多く、場所によってはラッコがウニを食べつくしてしまい害獣扱いされることも少なくありません。
ウニがない場合にはカニなどの甲殻類や小魚をエサにします。
また、個体によっては海面近くを飛ぶ鳥を捕らえてエサにすることもあるようです。
ちなみにラッコというとお腹の上に置いた石を使って貝類や甲殻類を叩き割り、中身を取り出して食べる姿が有名です。
霊長類以外の哺乳類で道具を使う生き物は極めて稀で、このことからラッコは高い知能を持つと考えられています。
性格
前述の通りラッコはとても賢い生き物で、ある程度は人間とコミュニケーションが取れます。
性格に関しては温和であり、捕食以外の目的で他の生き物を攻撃することはほぼありません。
また、ラッコは個体ごとに趣味嗜好が異なっていて、お気に入りの石をポケットにしまって隠したりする行動も確認されています。
そのほかエサの好みも個体によって分かれ、基本的には好きなものばかりを食べる偏食家な一面も持ち合わせているとのことです。
繁殖
ラッコは交尾によって幼獣を産む「胎生」の生き物です。
出産は海でおこなわれ、子育ては基本的にメスが担当します。
ちなみにオスは1回の交尾が終わると別のメスを探しに行きますので、形としては一夫多妻制となります。
ただし、ラッコには夫婦という概念があまりなく、普段は別々に生活することがほとんどです。
そんなラッコの妊娠期間はおよそ7~9カ月で、1回の出産で生まれるのは1頭のみです。(稀に2頭産む場合もある)
ラッコの寿命について
ラッコの寿命はオスで10~15年、メスで15~20年ほどです。
ただし、これは野生下で天寿を全うした場合の寿命であり、外敵からの攻撃や乱獲によって亡くなる可能性を考えると平均して生きられる年数はもっと短いと考えられます。
なお、そんな中でもこれまでには野生で23年生きたラッコもいました。
(野生のラッコとしてはかなり長寿な個体)
また、シアトルの水族館では飼育したラッコが28年生きた例もあります。
ラッコは絶滅危惧種?
ラッコは2000年から絶滅危惧種に指定されている生き物です。
1800年~1900年ごろまでラッコは世界中で乱獲されていました。
目的はラッコの毛皮で、かつては乱獲の影響によりオレゴン州にいたラッコが絶滅した事例もあります。
また、日本では1900年代初頭に「ラッコは絶滅した」と考えられていました。
しかし、1980年ごろになると再び北海道でラッコの姿が確認されるようになり、そこから現在までラッコの生活や生息地を保護する活動が続いています。
そして、それほど数が減少したラッコに追い打ちをかけたのが1989年にアラスカ近海で起きたタンカー座礁事故です。
この事故によりタンカーに積載されていた原油が海へと流出し、数千頭のラッコが亡くなる事態となりました。
こうした事故の影響もあり、ラッコは2000年にIUCN(国際自然保護連合)によって絶滅危惧種として認められたわけです。
まとめ
意外と知られていませんが、ご覧いただいたようにラッコは絶滅危惧種に指定されている生き物のひとつです。
世界的に見ても個体数の減少は深刻であり、日本でも水族館で飼育されているのは3頭しかいません。(※)
今後、目の前でラッコを見られる機会はなくなってしまうかもしれませんので、いまのうちにぜひ生のラッコを見に行ってみてください。
※2022年末時点、福岡のマリンワールド海の中道(1頭)、三重県の鳥羽水族館(2頭)のみ