この記事では食用としても扱われている「ナマコ」の種類や生態について解説していきます。
ナマコは棘皮動物に属する生き物のひとつで、分かりやすく言えばヒトデやウニの仲間です。
世界の海には1500~2000種類のナマコが存在していて、日本近海でもそのうち200種類ほどのナマコが確認できます。
そんなナマコの中には変わった特徴を持つものも多く、種類によっては毒性があるため無闇に触るのは危険です。
ここでは、様々な種類が存在するナマコの生息地・食性・寿命・繁殖方法などを詳しくまとめました。
海の生物の中でも特徴的な見た目をしているナマコの生態をぜひご覧になっていってください。
そもそもナマコとは?
それではまず、ナマコの基本的な情報から見ていきましょう。
ナマコは「棘皮動物・ナマコ網」に分類される生き物です。
背骨がないので無脊椎動物の一種としても扱われています。
一般的にナマコというと黒くて棒状の形をしている種類を想像すると思いますが、それは食用としても扱われている「マナマコ」です。
日本人からするともっともポピュラーなナマコと言えますが、冒頭でも伝えた通り世界中の海には約2000種類のナマコが存在しています。
中には深海を生息域とする「身体が光るナマコ」や「足のような器官を使って歩くナマコ」なども確認されていて、一目見ただけではナマコと認識できないものもたくさんいます。
ナマコの体長や体重
ナマコは種類によって体長や体重が大きく異なりますが、平均的なナマコの大きさは体長30センチ程度・太さ・6センチ程度・体重500グラム程度です。
ちなみにナマコの身体は約9割が水分で出来ています。
また、身体の表面の6~7割はコラーゲン(タンパク質)で構成されているので、食べることを考えたときには非常にヘルシーな食材と言えるでしょう。
ナマコの歴史と名前の由来
四方を海で囲まれた日本では、昔から身近な生き物としてナマコが認識されていました。
もっとも古い記述としては西暦712年に編集された「古事記」にもナマコの名前は登場しています。
なお、古事記ではナマコのことを「海鼠」と表現していますが、当時はこれだけで「コ」と読んでいたそうです。
ここから「生のコ=ナマコ」と呼ばれるようになり、ナマコの内蔵を塩辛にした料理「このわた」も「コの腸(はらわた)」という意味からその名前が付けられています。
ちなみにナマコは英語で「Sea Cucumber(海のキュウリ)」と呼ばれていますが、これはナマコの体表がキュウリのようにデコボコしているからです。
ナマコのキュビエ器官
海にいるナマコを触ったり踏んだりしたときに「白い糸状のなにか」を吐き出された経験がある人もいると思いますが、それはナマコの内臓です。
正確には「キュビエ器官」という糸状の組織を指しますが、これを吐き出すことでナマコは外敵から身を守っています。
なお、キュビエ器官はエラや腸が変化したものです。
ナマコの中にはキュビエ器官を持たない種類も存在しますが、そういったナマコは代わりに腸を放出します。
どちらにしても内臓組織を体外に放出して相手の動きを抑えることに違いはありませんが、吐き出されたキュビエ器官や腸はだいたい1~2ヶ月ほどで回復するそうです。
ナマコの種類
続いてはナマコの種類について見ていきましょう。
ナマコは触手の形や管足の有無によって、大きく「楯手亜綱」「無足亜網」「樹手亜網」という3種類に分けられます。
ちなみに食用として知られる「マナマコ」は「楯手亜網・楯手目・シカクナマコ科」に属するナマコです。
食べられるナマコはだいたいこの科に属していて、形も似たようなものが多い印象を受けます。
【ナマコの種類の大別】
・楯手亜網:シカクナマコ科、クロナマコ科、カンテンナマコ科など
・無足亜網:クルマナマコ科、イカリナマコ科、イモナマコ科など
・樹手亜網:フラスコナマコ科、キンコ科、スクレロダクティラ科など
なお、冒頭で少し触れた身体が光るナマコは「ヒメカンテンナマコ」という種類です。
水深500メートル前後の深海に生息するナマコで、外的刺激を受けると身体が発光する仕組みとなっています。
生きたヒメカンテンナマコが捕獲されると、ときおり水族館で展示されることもありますので興味がある人はぜひご覧になってみてください。
ほかにもナマコには足のような器官を使って歩く「センジュナマコ」やヒレを使って泳ぐ「ユメナマコ」といった少し変わったナマコがたくさん存在します。
ナマコの生態・特徴
ここからはナマコの生息地や食性、寿命や繁殖方法といった生態や特徴をご紹介していきます。
生息地
ナマコは海水域にしか生息しない生き物です。
そのため、湖や川といった淡水域にはナマコに属する生物が存在しません。
また、基本的には温帯の海域を好む生き物ですが、ほぼすべての海域でナマコの存在は確認されています。
つまり世界中どこの海にもナマコはいるということです。
ちなみにナマコを食用として扱うのは日本以外だと中国が有名で、その消費量は世界トップクラスです。
最近では中国の富裕層が黒いマナマコ(クロ)を好むことから、高級食材として輸出入されるようになってきました。
食性
ナマコは海底に沈んだプランクトンやその他の有機物(デトリタス)をエサとしています。
多くのナマコは海底の泥や砂ごとエサを食べていて、その砂の量は年間30キロに及ぶとのことです。(種類によっても異なる)
なお、こうしたことからナマコは「デトリタス食性」の生物と考えられています。
エサの食べ方については口を海底に付けてそのまま舐めとるように食べる種類もいれば、触手器官を使って器用にエサを捕食する種類もいます。
ちなみに大半のナマコはゆっくりと動くため消費エネルギーが少なく、そこまで大量のエサを必要としません。
こうしたことから、ナマコはある程度の期間であれば絶食状態でも生存可能と言われています。
寿命
ナマコの寿命はだいたい5年~10年です。
これは野生下における寿命となりますが、飼育下であればもう少し長く生きるかもしれません。
ちなみに一般的なナマコが快適に生活できる海水温は23℃~26℃くらいとされています。
そのため、仮にナマコを飼育する場合には上記程度の水温が保てる設備を用意してあげましょう。
繁殖
ナマコは雌雄異体の生き物です。
大半のナマコの生殖方法は体外受精となっていて、オスとメスがそれぞれ精子と卵子を放出することで繁殖をおこなっています。
ナマコの繁殖期間は3月~8月くらいで、マナマコの場合は1回で2000万個ほどの卵を産みだすそうです。
なお、ナマコのオスとメスを見た目から判断するのは困難で、解体しない限りはその区別がつきません。
毒性
前述の通りナマコにはたくさんの種類が存在しているため、中には毒性が強いナマコも当然います。
そのうち有名なものが「ニセクロナマコ」で、このナマコはホロツリンと呼ばれる毒を持っています。
ホロツリンは人間の皮膚に触れると痛みや炎症を引き起こし、食べた場合には消化器系へのダメージを与えるため注意が必要です。
ちなみに食用として扱われているマナマコにも少量のホロツリンが含まれているそうですが、その量はごくわずかなので食べても問題ないとされています。
まとめ
独特な見た目をしている海の生き物「ナマコ」に関する情報を詳しくご紹介してきました。
ご覧いただいたようにナマコにはたくさんの種類が存在していて、それぞれ異なる特徴を持っています。
深海に生息しているようなナマコの中には詳細な生態が分かっていない種類もいますが、そんなところも未知なるロマンを感じる部分でありナマコの魅力と言えるかもしれません。