イタヤ貝とは?名前の由来やホタテとの違いなど

この記事ではあまり市場に流通しない「イタヤ貝」に関する情報をご紹介していきます。

イタヤ貝は「ホタテ貝」によく似た貝の一種で、サイズは小ぶりなものの濃い旨味と様々な料理に使える万能性を特徴としています。

しかし、イタヤ貝を専門的に養殖しているところは少なく、実際に食べる機会というのはそこまで多くありません。

ここでは、そんなイタヤ貝の生態や産地、名前の由来や美味しい食べ方をまとめてみました。

イタヤ貝は稀に潮干狩りなどでも獲れる貝ですが、料理に使用する際は正しい知識を持って調理しましょう。

イタヤ貝とは?

イタヤ貝は「イタヤガイ目イタヤガイ科」に分類される二枚貝です。

基本的には食用として扱われますが、サイズはそこまで大きくありません。

貝自体の大きさが10cm程度なので、食べられる部分はベビーホタテくらいのサイズといったイメージです。

あまり市場に出回ることがないため食べたことがある人は少ないと思いますが、味の質的にはホタテと同じくらいの美味しさを感じられます。

なお、流通する数が少ない理由としては「専門的な養殖業者がほぼいない」「自然環境下においては大量に獲れる年もあればまったく姿を見かけない年もある」など、漁獲量が安定しないといった点が挙げられます。

ちなみにイタヤ貝には「杓子貝」という別名もありますが、これは貝殻に一定の深さがあり、昔は「杓子(しゃくし)」として使われることが多かったからです。
(そのほか油を浮かべて火を灯す「灯明皿」としても使用されていた)

また、イタヤ貝には以下のようなちょっとした逸話もあります。

○「ヴィーナスの誕生」に描かれているのはイタヤ貝?

おそらく誰もが一度は「貝殻の上にヴィーナスが立っている絵画(=ヴィーナスの誕生)」を見たことがあると思いますが、実は昔から「この貝はイタヤ貝なのでは?」という意見が一部で流れています。

ヴィーナスの下に描かれている貝は一般的に「日本のホタテ貝とは異なる地中海産のホタテ貝種」と言われているものの、外見的な特徴がホタテ貝よりイタヤ貝に似ていることから「イタヤ貝説」がいまだに残っているとのことです。
(イタヤ貝とホタテ貝の違いにて詳細を解説)

イタヤ貝の名前の由来

イタヤ貝という名前は、貝殻の見た目が「板で葺いた屋根(板屋葺き)」に似ていたことから名付けられたとされています。

おそらくイタヤ貝の殻に映る文様と戸板の線から連想したものと考えられますが、板屋葺きの屋根は少なくとも700年代からありますのでその歴史はかなり古いものと言えそうです。

なお、古い文献ではイタヤ貝のことを「いたらがい」と記述するものもありますが、漢字では「板屋貝」と書きますので板屋葺きの屋根が由来というのは間違いないと思います。

ちなみにイタヤ貝には「杓子貝」の他に「柄杓貝(ひしゃくがい)」といった別名もあります。
(杓子も柄杓も水をすくうものとして使うので意味は変わらない)

イタヤ貝の特徴・生態

ここからはイタヤ貝の特徴や生態について解説していきます。

イタヤ貝の見た目

イタヤ貝はホタテ貝を小さくしたようなフォルムで、サイズはおよそ10cm程度です。

殻の色は黄白色または白色をしていますが、暗色の斑模様が入るものも多々見かけられます。

また、殻には放射線状に8本~10本の線が伸びています。

生息地

イタヤ貝の生息地は北海道の南部から九州までの海域で、基本的には水深10m~80mくらいの浅瀬に生息しています。

海底が砂になっているところ、または泥質なところを好み、砂や泥の上で生活を送るのがイタヤ貝の特徴です。

なお、イタヤ貝は海底に漂う植物プランクトンを主食とする「草食性」の生き物となります。

産地

イタヤ貝をメインとして養殖業をおこなっているところは多くなく、ほとんどの場合は海苔や牡蠣などの養殖と並行してイタヤ貝を取り扱っています。

そうした中、島根県では天然の稚貝を使ったイタヤ貝の養殖にいち早く成功し、その後は人工種苗の開発にも乗り出しています。

このほか石川県から山陰地方にかけての日本海側では天然のイタヤ貝が獲れるケースが多いようです。

また、青森県、愛知県、福岡県、鹿児島県などでもイタヤ貝が獲れることが多いとされていますが、場所によってはそのまま破棄されることも珍しくないとのことです。
(サイズが不ぞろい、流通量が確保できないなどの理由により市場価値が付かないと判断される)

イタヤ貝の旬

イタヤ貝は冬に産卵期を迎えることから、産卵に向けて栄養を蓄える「初夏~秋ごろが旬」と言われています。

その前の秋ごろが旬と言われています。

なお、気候が温暖な西日本では、稀に潮干狩りでイタヤ貝が獲れることもあるようです。

旬のイタヤ貝はホタテ貝にも負けないほどの旨みが感じられ、様々な料理に使うことができます。

雌雄同体

イタヤ貝は「雌雄同体」の生き物なので、オスとメスの区別がありません。

そのため、どの個体でも産卵をおこなう可能性があります。

ちなみに食用とされる貝類のほとんどは「雌雄異体」なので、イタヤ貝は少し特殊な貝と言えるかもしれません。

イタヤ貝とホタテの違い

イタヤ貝とホタテ貝は同じ二枚貝に分類される生き物です。

また、ホタテ貝はイタヤ貝と同じく「イタヤガイ科」に分類されますので、系統に関しても似ていることが分かります。

ただし、イタヤ貝とホタテ貝では以下のような点が異なります。

雌雄同体か雌雄異体か

前述の通りイタヤ貝は雌雄同体ですが、ホタテ貝は雌雄異体です。

つまりホタテ貝にはオスとメスの区別があるということです。

ちなみに日本のホタテ貝は白い卵が雄となり、赤い卵が雌になります。

大きさと貝殻の模様

イタヤ貝の大きさはだいたい10cmほどですが、ホタテ貝の大きさはその倍にあたる20cmほどまで成長します。

また、貝殻に刻まれる放射線状の模様もホタテ貝の方が多くなります。(イタヤ貝は線が10本前後、ホタテ貝は線が20本以上)

ちなみに、先ほど有名な絵画である「ヴィーナスの誕生」に描かれている貝は「イタヤ貝ではないか?」という説をご紹介しましたが、これは描かれている線の数がホタテ貝よりイタヤ貝に近いという理由からです。

産地の違い

イタヤ貝は全国どこにでも生息していて、他を目的とした漁網に引っ掛かり水揚げされることが多々あります。

対してホタテ貝の主な産地は北海道と青森県です。

ホタテ貝は寒冷な地域でよく育つ貝なので、暖かいところでも繁殖できるイタヤ貝とは異なる性質を持っています。

イタヤ貝の食べ方

様々な料理に使えるところがイタヤ貝の特徴です。

鮮度が良いものであればそのまま刺身として食べられますが、稀に食中毒で「あたる」こともあるので基本的には加熱したものを食べます。

調理法としては「酒蒸し」「焼き」「フライ」といったところが定番で、そのほかベビーホタテのようにブイヤベースやパスタの具材に使っても美味しく食べられます。

なお、殻ごと蒸す・焼く以外の料理に使うときは、むき身にしてからよく砂を洗い落としましょう。

まとめ

一見するとホタテ貝によく似た「イタヤ貝」に関する情報をご紹介してきました。

ご覧いただいたようにイタヤ貝はホタテ貝と同じ科に分類される貝で、北海道南部から九州地方までならどこにでも生息している可能性があります。

味についてはホタテ貝に負けず劣らず美味とされていますので、飲食店や鮮魚店で見かけたときはぜひ一度味わってみてください。

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