天気予報を見ていると前線という言葉をよく耳にするかと思います。しかし毎度前線そのものの説明がなされることはないため「前線とは何か」という疑問を持ち続けている人もいるのではないでしょうか。ここでは前線の正体やその種類、特徴について解説していきます。さらに前線が波に与える影響についても併せて紹介していきます。

そもそも前線とは?

前線とは何か、簡単に説明すると「暖かい空気と冷たい空気がぶつかる境界面が地表と接する線」のことです。しかし、寒い部屋の中で付けたエアコンの温風によって前線ができるとは一般に言いません。空気と言っても前線という言葉が使われるのは気団レベルの衝突であり、多くの場合複数の都道府県をまたぐ長さ、日本列島全体にかかるような長さになります。

下の図を見てみましょう。日常的に見ている天気図よりも広範囲の例になります。青色や赤色で描かれているのが前線です。

天気図
出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/FSAS_kaisetu.html)

前線の発生やその位置は常に一定ではないため図はあくまで一例に過ぎませんが、日本付近は前線ができやすい場所でもあります。大陸でできた気団、それと海洋でできた気団とが衝突しやすい場所なのです。

前線の種類とは?

前線には気団の動きやその性質などの違いからいくつかの種類があります。そしてそのうちもっとも馴染みがあるのは「寒冷前線」と「温暖前線」でしょう。寒冷前線は、冷えた気団が比較的暖かい気団へもぐり込むようにして進むことで形成される前線です。一方温暖前線はその逆で、暖かい気団が比較的冷えた気団を登るようにして進むことで形成される前線です。
下図のようなイメージです。

前線
出典:Wikipedia  Kzhr CC 表示-継承 2.5, Link

この上図で雲が描かれているように、前線付近では雲が生成されやすく天候は崩れやすいという特徴があります。さらに寒冷前線近辺では強い雨、温暖前線の進行方向側やや広範にわたり弱い雨が降るのが典型例です。また、寒冷前線では前線の前後50㎞程度で降水があるのに対し、温暖前線では前線の進行方向側に数百キロに渡り降水があるという特徴を持ちます。

次に閉塞前線について説明しましょう。閉塞前線は、温暖前線と寒冷前線が重なり合うようにして形成される前線です。温暖前線は比較的進行速度が遅く、寒冷前線はこれより早いため前線面が接触することがあります。そのため接触の仕方によってどちらかの性質が強く表れることとなります。

閉塞前線付近で寒冷前線通過時のような強い雨が降る場合もあれば、温暖前線が付近にやってきたときのように弱い雨がしばらく続くこともあるといった具合に様々です。ただし、どちらの前線であっても下に冷たい空気、上に暖かい空気があることに違いはありません。そのため閉塞前線ができると天候が荒れることもありますが長くは続かず、前線が消失していくことが多いです。

次に停滞前線についてです。温暖・寒冷前線は暖かい気団、もしくは冷たい気団のどちらかが優位となり一方の気団へ突入していきます。しかし性質の異なる気団の勢力が等しければその接触面の位置は維持され、長い間前線が形成されたままになります。このときの前線を停滞前線と呼びます。

実は停滞前線は、体感できるほど私たちの日常生活と強い関係性を持っています。なぜなら「梅雨」と呼ばれる時期はこの停滞前線が影響しているからです。そこでその時期にできる停滞前線は梅雨前線とも呼ばれます。秋雨についても同様にその時期の停滞前線のことを秋雨前線と呼ぶこともあります。

停滞前線ができるとその付近では長い間天候は崩れたままになり、雨の日が優勢となります。雷雨を伴うこともありますが、基本的には温暖前線が付近にある場合の天候に近く、比較的弱い雨が長時間続くようになるでしょう。

ちなみに梅雨前線は夏の暖かい空気が南からやってくることで春のやや冷えた空気と衝突してできると言われていますが、厳密には気温差だけで形成はされていません。特に西日本では湿度差が主な原因で梅雨前線が形成されています。

前線と波の関係は?

それでは前線が波にどのような影響を与えるのか考えてみましょう。そもそも波の発生には海流も関係していますが、主に風が原因である時期や日ごとの様子は変わってきます。短絡的に言うと、実感している通り「風の強い日は波も強い」ということになります。あとは風向きがその風力の効率を決定づけてきます。

例えば海から陸に向かって真正面から強い風が吹けば当然大きな波ができやすくなります。一方で陸から海に向かって吹く風だと風力があっても海岸では大きな波ができにくいです。また風の吹き方やそのほか様々な要因が波の性質を決めるため確定的に波を予想することはできません。ただし、おおよそであれば前線との位置関係から予想することもできます。

温暖前線は南の暖かい空気が北向きの要素を持ってやってきます。そのため、前線の南側では南東から南西寄りの風が吹き、太平洋側では波も成長しやすくなります。一方前線北側にいる場合には北向き要素の風が優勢となり太平洋側では離岸流となりやすいです。つまり大きな波は立ちにくくなります。

寒冷前線の場合は北の冷えた空気が南向きの要素を持ってやってきます。そのため前線の北側では北寄りの風と波ができやすく日本海側で波が成長しやすくなります。実際には、前線が綺麗に南北に移動することは少なく、日本列島に沿うように、南西から北東へと反時計回りにねじれながら移動する傾向にあります。

そのため太平洋側において温暖前線が北側にあったとしても西寄りの風と波ができ、場所ごとに波の大きさが異なることも珍しくありません。低気圧ができている場合には特にその中心に向かって反時計回りに風が吹くようになり、前線の存在のみで風向きを予想することは難しくなります。

さらに、前線は冷暖の気団が衝突する向きであるときのみ形成されるものではありません。冷暖の風は逆向きでも前線と並行に吹いている場合には衝突はしていません。ただし気温差は大きくなっているため天気図上では同じような記号で描かれています。このあたりは略式的な天気図からは読み取りにくいポイントです。

また、前線が遠く離れていたとしても波が小さいとは限りません。波の大きさは風が強くなくても、長時間・長距離、同じ向きに吹くことで大きく成長します。そのため、例えば寒冷前線によって大雨・強風となっていたとしても風向きが安定せず局所的に吹き荒れているのであればそれほど大きな波にはならないかもしれません。海の表面で白波が立つ、波の形状が不規則に尖っているような場合には「風浪」と呼ばれます。

一方で遠くの波が伝播されてやってきた場合には「うねり」と呼ばれ、安定した大きな波が来ることもあります。数百キロから数千キロメートル離れていてもうねりとして伝わることがあるため、前線から波を予測するのであれば日本近海だけでなく広範にチェックしてみると良いでしょう。

前線同士の影響も関係するためやはり見る範囲は広く、そして様々な気象現象を総合的に見ることでおおよその波の予想が立てられるようになるかもしれません。ただし地形が特徴的であれば波の性質も海岸付近で変化するため局所的なポイントも見逃せません。

まとめ

前線はその通過前後で天候が大きく異なります。雨が降るかどうかではなく、気温や風向きの変化が前線においては特徴的と言えるでしょう。そのため前線との位置関係によって波が大きくなりやすいかどうかが変わってきます。

ただし注意したいのは前線や風向きなどだけで波の性質を完全に予想することはできないということです。波の場合には特に地形も大きく影響するため、局所的な地形や風向きの変化が影響して予想通りの波とならないケースもあるでしょう。

前線の進行方向と位置、他の前線との位置関係、低気圧の有無、さらに波がやってくるその場所における地形などを考慮するといいでしょう。

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