日本だと夏になると毎年台風がやってきます。何度もやってきては大きな被害をもたらすことも珍しくありません。これはどこの国でもある話ではなく、日本特有の気候だと言えます。それはなぜなのでしょうか。ここでは台風がどのように発生・移動しているのか、そのメカニズムを解説していきます。
そもそも台風とは?
「台風」は、熱帯低気圧のうち、北西太平洋または南シナ海に存在して強い風を持つものを言います。
「熱帯低気圧」とは熱帯の海上で発生する低気圧のことですが、熱帯で発生する低気圧すべてを無条件にそう呼ぶのではなく、熱帯特有の性質を伴う場合に呼ばれます。日本付近でできる温帯低気圧のように温度差のある複数の気団で形成されるのではなく、暖気のみで形成されるという性質を持っています。
このほか潜熱と呼ばれるエネルギーを水温の高い海からもらい、活動を維持していることも特徴的な性質と言えるでしょう。また等圧線も温帯低気圧のようにいびつではなく、同心円状に分布する点で異質と言えるでしょう。
この熱帯低気圧が台風と呼ばれるには、さらに位置と風速の要件を満たす必要があります。位置に関しては北西太平洋または南シナ海と言いましたが、厳密に言うと赤道より北で東経100度から180度の間で発生した熱帯低気圧である必要があります。
風速についても最大風速17.2m/s以上とされています。仮にこの台風と呼ばれているものが東経180度より東に移動しアメリカに近づいた場合にはハリケーンと名前が変わります。ただしハリケーンと呼ぶには最大風速が33m/sでなければなりません。北インド洋に発生したものであればサイクロンとなります。
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[blogcard url=”https://naminorihack.com/archives/1088″]台風発生・移動のメカニズム
台風のもととなる熱帯低気圧は暖気のみで形成されます。そのため暖かい場所で発生しやすく、赤道付近から発生・成長して台風となり日本にやってくるケースが多いです。ただし赤道付近というのは赤道から少し距離を置いた北緯5度以上のことです。
赤道に近すぎると逆に発生しにくくなるのです。なぜなら台風などはただ暖かいだけで発生するのではなく、回転する向きの風が必要だからです。そして風が向きを変えるためにはコリオリ力が必要になります。コリオリ力とは地球の自転が影響して作用するもので、簡単に言えば北半球で移動するものに対して右向きに働く力のことです。
しかし赤道上、もしくは赤道に近すぎる場所だとこのコリオリ力がほとんど作用しないため回転する力が不足してしまうのです。そこである程度コリオリ力が強く働く北緯5度以上から多く発生します。
また、台風を発生させるためには大きなエネルギーが必要になります。勢力を保って日本にやってくることを考えれば、発生後衰退させるどころか発達させながら何日も活動を行っていることが分かるかと思います。
前項でも触れたように、台風のエネルギーは潜熱と呼ばれるものから供給されています。これは物質が相変化する際の熱エネルギーのことで、例えば水が蒸発するときに奪う熱などのことを言います。
濡れた肌が冷えるのは体感したことがあるかと思いますが、これはこの潜熱による吸熱が起こっているからです。
液体が気体として放たれて空気中に飛び出すためには分子に運動のエネルギーが必要なため熱からこれを取り出すのです。台風発生の過程では湿気のある空気が上昇気流で持ち上げられ凝結(蒸発とは逆の現象)が起こり、その空間は熱エネルギーを補給することになります。この潜熱を効率よく得るには海面水温が26℃から27℃以上の海域でなければならず、暖かい海が台風の発生条件となっているのです。
これらのことを踏まえて台風が発生するまでの流れをまとめると以下のようになります。
1:北西太平洋は海水温が高く周囲の空気は熱に加えて湿気も得る
2:赤道付近のためこの空気はよく温められる
3:温められた空気は軽くなり上昇
4:上昇により気温低下、水蒸気は凝結、雲が生成される
5:凝結により空気は潜熱を得てさらに上昇する力を得る
6:この過程で空気密度が小さくなり気圧が下がる
7:周囲と気圧差ができることで風が生じる
8:風はコリオリ力により曲げられて回転しながら吹き込むことで収束する
9:収束した空気は逃げ場がなくなり上空へと移動する(上昇気流)
台風の構造
出典:mizkan(http://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no56/04.html)
こうした過程が繰り返されることで雲が生成され続け、大きくなり、やがて台風が発生します。
厳密にはもっと様々な要因が絡まり合って発生や成長を続けます。例えば赤道に近く気温が高い、海水温が高い、ということだけでなく地球規模で起こっている空気の循環も関係しています。貿易風という地上の風が収束して上昇気流を強化しているのです。
またご存知のように台風は移動をしています。移動のきっかけにはベータ効果とベータジャイロなどが関係しています。ベータ効果はコリオリ力の差から生じる効果で、台風のような大きな渦には西に向かって移動しようとする性質が備えられるというものです。そして台風が渦になっていることで北に移動しようとするベータジャイロの性質も兼ね備えます。この両者の性質があるため台風は発生後北西に進んでいく傾向にあります。
台風がもたらす波の特徴
波を発生させる主な要因は風です。そして台風は風を発生させます。というより定義上風を発生させなければ台風ではないため当然に風を伴うと言えます。そのため台風が発生すると大きな波を発生させやすくなります。
沿岸波浪図(左)と地上天気図(右)
出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/5-1.html)
さらに台風は中心に近づくほど低圧であるため海水面が上昇しているという特徴もあり高潮を伴う高波が発生しやすいという特徴も持っています。このときの海面上昇は1hPaにつき約1㎝ですので、台風中心が近いと数十㎝上昇することもあるでしょう。
台風との位置関係によっても波の状態は変わります。台風の東側のほうは西側に比べて風が強く危険半円と呼ばれ、逆に西側は可航半円と呼ばれ比較的風が弱いです。台風周辺には反時計回りの気流があり東側では北向き要素を持って吹きますが、近くにある太平洋高気圧から吹き出す気流もこれに合流してくるため風が強化、波も高くなるのです。西側だと風が強化されないだけでなく南向き要素を持って風が吹く傾向にあるため離岸流となりやすく太平洋側で波が比較的発達しにくいのです。
日本で台風が多い理由は?
日本は世界的にも台風が多い地域に位置していますが、これは北西太平洋で熱帯低気圧が発生しやすいことに由来します。同じ赤道近くの緯度帯と比べても暖かい海域が広いのです。さらに日本で多い理由は台風の進路も関係します。台風は北西に向かう性質を持っていると言いましたが、これは上空の風が弱いときに顕著です。
逆に言えば日本のように上空で強い西風(偏西風)が吹いている場所だとこの風に流されて進路はすぐに変わってしまいます。さらに夏の日本付近は太平洋高気圧の縁に位置しており、上空では北東に流れるような気流が生じています。
台風の月別の主な経路
出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-4.html)
この西風および太平洋高気圧の影響を受け、発生当初北西にゆっくりと移動した台風は急激に進路を変更して日本列島へと向かってくるのです。
まとめ
台風は暖かい空気と暖かい海、そして上昇気流など、これらの条件が揃いやすい赤道付近で発生します。主なエネルギー源は海から補給して発生・発達・維持をしています。特に日本の南のほうでは暖かい海域が広がっているため発生しやすく、さらに偏西風や太平洋高気圧の影響もあり毎年これだけ多くの台風が日本にやってきているのです。
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