スローフードの魅力とは?日本での取り組みや実践方法も

ここ10年ほどの間で「スローフード」という言葉を見聞きする機会はとても増えてきたように感じられます。「スローフード」は、元々イタリアの小さな町で起こった社会運動から誕生した言葉です。

その小さな町で発生した取り組みは、現在では世界160ヵ国以上に認められ国際的な組織にまで発展しました。

そんな「スローフード」の魅力とはいったい何なのか?

また、日本ではどういった取り組みがされているのか?

この記事では以上のことをテーマに、スローフードに関するお話をしていきますので、どうぞ最後までご覧になっていってください。

スローフードとは?

なんとなくスローフードという言葉は聞いたことあるけれど、その明確な定義や意味はよく分かっていないという方も多いですよね。そこでまずはスローフードとは何なのか?という定義から説明していきたいと思います。

定義

イタリアから始まり世界中の人間が共感を示したことで普及されるようになった「スローフード」という概念は、3つのコンセプトによって成り立っています。

・「GOOD(おいしい)」=美味しく、風味があり、新鮮で、感覚を刺激し、満足させること
・「CLEAN(きれい)」=地球資源、生態系、環境に負担をかけず、また、人間の健康を損なわずに生産されること
・「FAIR(ただしい)」=生産から販売及び消費にわたって、全ての関係者が適正な報酬や労働条件にある、社会的公正を尊重すること

こちらはスローフード日本のHPより抜粋した言葉です。

スローフードというのは概念であり社会運動のひとつでもあるのですが、こちらの3つの言葉はスローフード活動のスローガンにもなっています。

簡単に言えば「人間の健康を維持するために適切な食材を作る生産者を正しく評価し、その食事を美味しくいただく」といったイメージですね。

また、「食」を通じて食材の産地であるその土地の文化を見直そうというのもスローフード活動の一環に含まれています。

どうしてその食材が土地に根付いて生産がされているのか?

今後その食材を作る農家などは生き残っていけるのか?

100年後の未来にもこの食材は食べられるのか?

こうしたことを考えながら消費活動をおこない、生産者を後押しすることで後世に今の美味しい食材を残していくというのもスローフードを実践する意味と言えるでしょう。

そして、なにより「食事自体を楽しむ」というのもスローフードの定義のひとつです。忙しなく働き生きる現代人にとって、食事というのはただの栄養補給になってしまいがちです。

そうした生活の中では食事をゆっくりと楽しむ時間もあまりありません。ファストフードで食欲だけを満たして効率的な時間の使い方をするというのは合理的な考え方かもしれませんが、そんな現代だからこそ食事に時間を掛けゆっくりとそれを味わうというのが求められていると言えるわけです。

発祥

スローフードが誕生したのは1980年代のイタリアでのことです。1986年にイタリア・ローマのスペイン広場前に大手ハンバーガーチェーンであるマクドナルドが開店したことによって、イタリアの食文化がファストフード文化に飲み込まれることを懸念したカルロ・ペトリーニによって提唱されたのがスローフードの始まりとなります。

ちなみにカルロ・ペトリーニという人物はイタリアの食文化雑誌の編集者でもありました。また、このスローフードという概念には1800年前後にフランスで活動していた「ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン」の思想も影響を与えていたと言われています。

なお、ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランというと「あなたが普段から食べているものを教えて欲しい。それであなたがどんな人であるか当ててみせよう」といった金言を残したことでも有名です。

こうした思想から生まれたスローフードという概念ですが、元々は地域の食文化を守りゆるやかに食事を楽しむという意味合いが強かったとされています。

そして、このスローフードという考え方はそこからさらに社会的な思想にまで発展していき、1989年に国際的な会議の場で認められるまでとなりました。

その後、ヨーロッパを中心にアメリカなどでもスローフードという考え方が浸透していき、日本では2004年に「スローフードジャパン」が設立することとなっています。

なお、現在の日本ではスローフードジャパンから「スローフード日本」という形にその名称が変更されています。そんなスローフード日本の取り組みを含め、国内におけるスローフードへの考え方というのを次に見ていきましょう。

スローフードに関する日本での取り組み

日本にスローフードという概念が伝わってきたのは2000年代前半ごろとされています。ただ、日本というのはもともとスローフードの考え方がある程度浸透している国と言えますので、呼び方と取り組み方を変えて伝わっていったという方が正しいかもしれません。

実際、1982年に出版された水上勉著「土を喰う日々: わが精進十二ヵ月」には、「食事というのは人生の一大事」という言葉が書かれていて、これはスローフードの概念に一致するものと言って良いでしょう。

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そんな国内におけるスローフード活動ですが、現在のところスローフード日本では以下のことに関する取り組みをおこなっています。

・地球環境に配慮した農法・漁法の小規模生産者の支援
・フードシステム(生産・流通・消費までの食糧供給の流れ)の構築
・食に関するキーパーソンのプラットフォーム機能
・政策提言
・教育、啓発活動
・国際ネットワークとの連携
・先住民族のエンパワメント
・自治体・企業へのフードコンサルテーション

ちなみに日本だとあまり先住民族という言葉がピンとこないかもしれませんが、これはアイヌ民族や琉球民族といった方々を指しています。

先祖代々伝わる食文化からその土地の歴史を学び環境を守ろうという取り組みも、スローフード日本がおこなっている活動のひとつです。

また、ほかにも小規模生産者が携わっている野菜・肉・魚などの情報を全国から集め、それらを発信するといった活動もおこなっています。

なお、こうした大きな取り組みもスローフード活動の一環なのですが、自分たちで実践するスローフードにはどういったものがあるのか?というのも疑問のひとつですよね。

そこで、最後に自分でも出来るスローフードというものをご紹介していきたいと思います。

スローフードの実践方法

スローフードの実践方法と言っても難しいことはありません。地域で生産されている農作物などを使い、自分で調理をし、その料理をゆっくりと味わいながら食べる。

簡単に言ってしまえば、これだけでもスローフードを実践していることになります。こう考えると、スローフードという概念がとても身近なものに感じられますよね。

もちろんこれを毎日毎食おこなうというのは難しいと思います。ただ、週末の1日だけでもこうした考え方を基にした食事を摂ってみてください。

それだけでも十分立派なスローフード活動に繋がります。あとはなるべくゆっくりと食事を楽しむこと、そしてその食事に使われている食材がどこからやってきたのかを少しでも考えてみること。

このちょっとしたことを実践するだけで心にゆとりが生まれ、メリハリのある生活が送れるようになります。スローフードの魅力というのはこうした点にあると言えますので、ぜひ忙しい方こそ試してみてはいかがでしょうか。

まとめ

スローフードの意味や魅力などについてご紹介してきました。忙しく日々を過ごす現代人にこそスローフードという考え方は大切だと思います。

まずは時間のある週末だけでもスローフード的な食生活を送ってみてください。きっと最近気付いてなかった発見や食事の楽しみ方が見つかると思いますよ。

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