人工リーフのメリットとは? 離岸堤との違いも

日本は海岸線の延長距離が世界で第6位というほど海に囲まれた島国です。そんな日本では近年、海岸浸食や津波の被害を防ぐために人工リーフの設置がおこなわれるようになってきています。

人工リーフとは浜辺から少し離れた海の中に、海岸線と並行の形で設置する「幅広型の潜堤」のことです。波の力や勢いを打ち消すというのが主な役割となっていますが、人工リーフを作るメリットというのは他にどういったものがあるのか?

ここでは、そんな人工リーフに関する情報や離岸堤との違い、また人工リーフが設置されることによってサーフポイントがどう変化するのかということについて解説しています。

人工リーフとは?

それでは最初に「人工リーフがどういったものなのか?」という点を見ていきましょう。まず人工リーフの「リーフ」というのは、簡単に言えばサンゴ礁のことです。

つまりサンゴ礁の役割を模した人工建造物を海の中に設置したものが人工リーフということになります。とは言っても、もちろんその形はサンゴ礁のような形をしているわけではありません。

基本的には自然の石や破砕した石をマウンド状に積み上げ、その表面に水を吸い出す加工を施したものが人工リーフの構造となります。

また、人工リーフは他の消波・防波ブロックなどより幅が広く作られているところも特徴のひとつです。これは、面積を広くすることによって波に対する緩衝エリアを増やす効果を狙っています。

そして、この幅広の人工リーフは海岸線と並行に設置されていて、さらに海面より下にあるため景観を損ねないという点でも評価されています。

こうした人工リーフは日本だけでなく世界の国々でも作られているわけですが、次にその主なメリットについて解説をしていきましょう。

人工リーフのメリット

人工リーフを海中に設置するメリットというのはいくつかありますので、ひとつずつ順を追ってご覧いただきたいと思います。まず、人工リーフは他の海岸保護のための建造物と違って、海中にあるというのが大きな特徴です。

そのため、景観を維持できるというメリットがあります。次に人工リーフは幅が広く作られているため、広域に渡っての消波・防波効果が期待できます。

さらに人工的に浅瀬を作るということにもなるので、急な高波などによる水難事故も防げるというのが人工リーフを設置するメリットです。

これは海岸へやってくる波の高さを抑えるということでもありますから、たとえば堤防で釣りをやっている方々が高波にさらわれるような事故も減らしてくれると考えられるわけですね。

また、人工リーフのおかげで波の勢いが和らぐことによって、海岸浸食の被害を防ぐことにもなります。海岸浸食というのは近年、非常に問題視されている自然現象のひとつで、海浜の砂が海へと流出してしまうことを指します。

冒頭でも軽く触れましたが、日本は海に囲まれた島国のため、海岸が浸食されると国土面積自体が少なくなるというリスクがある国です。

国土面積が小さくなると自国の海域として権利が主張できる「排他的経済水域」が少なくなることに繋がり、漁業や天然資源の確保にも影響を及ぼしてしまいます。

ちなみに日本は海岸線の延長距離と同様に、この排他的経済水域とほぼ同様の意味を持つ「200海里面積」が世界で第6位となっています。

つまり、海岸が浸食されることはそのまま国の領海が減ることを意味し、国力の低下にもなるため、国や各自治体はその防止に努めているわけです。

また人工リーフには海洋生物の繁殖を助ける役割も持っていて、養殖業を営む沿岸部の方にとってもメリットのある建造物となっています。

このように人工リーフには多くのメリットがあるわけですが、同じように消波・防波の役割を果たしている離岸堤とはどう違うのか?という点を次に解説していきたいと思います。

離岸堤との違い

離岸堤というのは、人工リーフと同じように海岸と並行して海に作られる人工建造物のことです。人工リーフとの大きな違いは、離岸堤は海面の上にその姿を出しているという点で、海浜から見ても「設置されていることが分かる」というところが大きな特徴となります。

なお、離岸堤は捨て石などによって土台を積み重ね、その上に消波ブロックなどをさらに上乗せした簡易的な防波堤です。

主な役割は人工リーフと同じですが、人工リーフよりも海浜の砂の流出を防ぐ効果が高く、波の勢いを完全に消滅させることをメインとしていないところが両者の違いともされています。

また、離岸堤は海面より上にブロックが出ているため、人工リーフより波の流れに影響を与えやすいというのも特徴のひとつです。

特に離岸堤の間では離岸流が発生しやすく、あまり遊泳やサーフィンには適さない環境が出来上がってしまうこともあります。

ちなみにこれは人工リーフでも起こり得る現象で、サンゴ礁が多い海外の海などではこれを「リーフギャップ」と呼んでいます。

ただし、リーフギャップの場合は原因が海中にあるため見えづらく、離岸堤による離岸流は陸からでも分かりやすいというのが大きな違いです。

これに関してはどちらにも一長一短があるといったところなのですが、それでも海岸浸食を防ぐための効果は両者ともにあるので、全国でその設置がおこなわれるようになっています。

人工リーフでサーフポイントは作れる?

防波堤や護岸を目的とした人工リーフですが、サーファーにとって気になる点は「人工リーフはサーフポイントに影響を与えるのか?」という部分です。

結論から先に申し上げますと、海外では人工リーフを作ることによって理想に近い波を起こすことに成功しています。

オーストラリアのゴールドコーストでは総工費120万ドルほどをかけて作った人工リーフが、地元のサーファーも満足するような海の状態を維持していると言われていますので、日本でも人工リーフを作ることで「海岸を守りながらサーフィンに適した環境」を生み出すことが可能と言えるでしょう。

ただし、やはりそのためには莫大な費用が掛かるため、サーファーのためだけに大型の人工リーフを作るというのは難しいかもしれません。

実際にカリフォルニアの一部の沿岸部ではサーファーたちによる人工リーフ建造プロジェクトが立ち上がったものの、その建設規模が小さすぎるため波質の向上までには至っていないという結果も出ています。

また、前述もしましたが人工リーフにはリーフギャップが発生するデメリットも考えられるため、その建設には慎重な判断も必要と言えるでしょう。

なお、海外の事例を参考にしてみると、波の流れを変えるほどの人工リーフを作るためにはおよそ500万ドル(5億円以上)が掛かると言われています。

仮にこうした費用が賄えるとしても、日本の場合はさらにその海域を管理する自治体などとの交渉も必要となってきますので、かなりハードルが高いという現実があるわけですね。

まとめ

波の勢いを打ち消し、海岸浸食の被害を抑える役割を持つ人工リーフについて解説をおこなってきました。人工リーフは海岸および国土を守るために必要な防波堤の一種です。

メリットが多い反面、リーフギャップといったデメリットも存在しますが、それでもやはり海浜の安全を守るためには重要な役割を持っていると言えるでしょう。

また、サーファーにとってはサーフポイントへの影響も気になると思いますが、ご覧いただいたように波の流れ自体に影響を与えるほどの人工リーフを作るには莫大は費用が必要となります。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

おすすめの記事