海岸侵食とは?原因・影響・対策を解説

この記事では近年の日本で問題となっている「海岸浸食」という現象について解説しています。周りを海で囲まれている島国・日本にとって、海岸浸食というのは非常に重要な問題です。

なお、ここ15年の間では海岸浸食の影響によって「毎年およそ160ヘクタール」もの国土が減少しているといわれています。

こうした海岸浸食がなぜ起きるのか?またその原因と私たちの生活への影響は?といった気になる点について詳しく見ていきますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。

海岸侵食とは?仕組みは?

海岸浸食というのは、簡単に言えば海岸線がどんどんと後退していき陸地面積が減っていく現象のことです。海岸浸食が発生するメカニズムというのは非常にシンプルで、単純に海岸にある土・砂が波によって海へと流されてしまうことで起きます。

この仕組みをもう少し詳しく見ていきましょう。まず、本来海岸には「砂浜」「浜崖」「砂丘」といったものがあります。砂浜というのは波の威力を抑える役割を持っていて、波から居住区までの距離を遠ざけるためにも必要な部分です。

そして砂浜の土や砂が溜まって出来たものが「砂丘」で、その傾斜部分を「浜崖」と呼びます。砂丘や浜崖は低地にある居住区を波から守るための砦であり、なくなってしまうと付近一帯のエリアで浸水などの被害が拡大します。

次に海岸浸食が進むと、これら砂浜・浜崖・砂丘にどういったことが起きるのかを解説していきましょう。海岸浸食が進むと、まず砂浜エリアがどんどんと減少していきます。

そして、波を抑え込んでいた砂浜という部分がなくなることで、波がダイレクトに砂丘や浜崖部分に当たるようになるわけです。こうなると浜崖の根本部分がえぐれていき、砂丘自体の高さが低くなってきます。

最終的に砂丘が崩壊することで海抜の低い居住区は波の影響を受けるようになり、浸水などの被害に困るようになるということです。

ちなみに日本の国土にあたる海岸線をグルっと回ってみると、その2/3が自然海岸となっていて、残りの1/3が人工海岸となっています。

人工海岸ではこの海岸浸食のための予防策や対策が講じられていますが、多くの自然海岸ではまだまだ海岸浸食への対策というのがおこなわれていません。

もちろん各自治体によって何かしらの策を講じている海岸エリアもあるのですが、毎年160ヘクタールもの海岸が海へと流されていってしまっているというのは事実です。

さらに最近では海面上昇という現象によって、波の力がなくても陸地が浸食され始めています。この海面上昇という現象と海岸浸食という現象がさらに進行すると、今よりも毎年うしなわれていく土地の面積が多くなっていってしまいます。

こうした観点から見ても島国である日本は特に海岸線の浸食をどうにか食い止めなければいけないわけですが、そのためにも海岸浸食が起きてしまう「原因」というものをご覧になっていってください。

海岸侵食の原因

海岸線浸食という現象のメカニズムを説明しましたが、なぜいまさらになって問題視されるようになったのか?というのも気になる部分だと思います。

まず海岸浸食という現象はここ数十年で急激に進み始めた現象です。この原因というのには国内におけるダム建設、河川工事などが挙げられます。

本来であれば砂浜というのは山から川を渡って流れてきた土砂などの堆積によって、一定の量が保たれるようになっています。しかし、高度成長期を含む時代から、日本では数多くのダム建設や河川の工事などがおこなわれるようになりました。

このことによって、山から流れてくる土の量というのが著しく減ったわけです。つまり、ここ数十年の間に日本の海岸線では「山から流れ着く海岸を作るための土砂の量<波によってさらわれている砂浜・土の量」という計算式が成り立つようになってしまったということです。

また、ほかにもコンクリートの材料として砂浜や河川の砂利・土砂などが使われるというのも海岸浸食の要因のひとつに挙がっています。

そして、このまま海岸浸食が進行していくとどういった影響が表れるのか?という部分を次に解説していきたいと思います。

海岸侵食による影響

海岸浸食が進行するとどういった影響が表れるのか?という点ですが、もっとも大きな問題は津波・高波による沿岸居住エリアの「浸水被害拡大」です。

先ほども説明したように海岸というのは居住エリアと波との間にある緩衝エリアです。この海岸面積が減っていくと当然のことながら波のパワーを抑えることが出来なくなるため、ダイレクトに波が陸地へと流れ込むようになります。

特に海抜0メートル前後といった低地にある居住エリアに関しては、その被害拡大が懸念されています。なお、「砂浜がなくても防波堤があれば波を防げるのでは?」と考える方もいるかもしれません。

たしかに人工的な防波堤というのも高波や津波に対する備えとしては有効的です。ただし、それらの人工的な建造物というのは、もともと砂浜などによって威力が抑えられた波をさらに防ぐために造られているものです。

砂浜がなくなることによって威力が落ちていない波を受け続ければ、どう考えても劣化のスピードが早くなり、有事の際に機能しなくなるリスクが高まります。

また、劣化スピードが早くなれば再度工事をしなければいけないということにもなり、余計にコンクリートなどの材料を使うことにもなるわけです。ちなみに砂浜というのはただ波のパワーを落とすだけではありません。

砂浜は海水を吸収する役割を持っているので、砂浜があるのとないのとでは押し寄せる波の水量にも違いが出てくると指摘されています。こうしてあらためて見てみれば、海岸というのが自然に完成された防波堤だということに気付くはずです。

そのため、海岸の保護活動というのは怠ってはいけないものなのです。

海岸侵食の対策

海岸浸食への対策には大きく分けて2つの方法が考えられています。ひとつは海岸の土が流れないようにするための方法、そしてもうひとつが海岸の土をうまく増やす方法です。土が流れないようにするための方法というのは、海岸に突堤や人工岬を造ることを指します。

つまり波によって海に流される土・砂の量を人工物の建造でコントロールするという考え方です。この方法には色々なものが試されていて、離岸式ヘッドランド工法や人工リーフ工法、またワイングラス型防波堤といったものが挙げられます。

次に土の量を増やすという方法ですが、こちらはダムの放流の仕方や時期などを計算することで海岸に堆積される土・砂を増やそうとするものです。

ただし、ダムには大きな岩や木などをせき止める役割もありますので、放流の仕方というのには慎重な判断と計画が必要となります。

海岸侵食について知っておこう

海岸浸食という現象について解説をしてきましたが、日本に住んでいる以上は決して他人事ではない問題だということが分かってもらえたかと思います。

波によって海岸部分が減っていくというのは仕方がないこととも言えますが、問題はやはり自然のサイクルを乱している点です。

不要なダムの建設や河川の工事などをおこなうことで、必要な工事が増えてきてしまうのでは本末転倒と言えます。こうしたことを理解した上で、ぜひ地域の環境保全活動などに役立てていってください。

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