「二酸化炭素=CO2」が増えると地球が温暖化され環境的によくない!こういったことをなんとなくの知識として知っている人は多くいると思いますが、具体的に何がどう地球に影響を与えるのか?ということをご存知でしょうか。
また、二酸化炭素が増えると大気だけでなく海にまで影響を与え、将来的に私たちが現在食べているようなウニや貝類が絶滅するかもしれないということもあまり知られていない事実です。この記事では地球の温暖化原因でもある二酸化炭素が海にもたらす「海洋酸性化」という現象について詳しくご紹介しています。
海の生態系を守るためにも、海に囲まれた日本に住む私たちはその現状を知る必要があると思いますのでぜひご覧ください。
海洋酸性化とは?仕組みは?
「海洋酸性化」というのは大気中に存在する二酸化炭素=CO2が海の中へと溶け込み、海全体を酸性にしてしまうという現象です。通常の海中にはカルシウムイオンと炭酸イオンという2つの成分があり、この2つが結合することで炭酸カルシウムという物質を生み出します。
この炭酸カルシウムというのは貝類やさんご礁が骨格や殻を形成する上で必要不可欠なものなのですが、この炭酸カルシウムの生成を妨害しているのが、現在地球上で増え続けている二酸化炭素です。二酸化炭素というと大気中に含まれる空気の一部のようなイメージがありますが、液体にも溶け込むことができます。
そして大気中に二酸化炭素が多くなればなるほど、海中にも多くの二酸化炭素が浸透していくというわけです。まず、二酸化炭素が海中に溶け込むと、炭酸カルシウムを作るために必要な炭酸イオンに働きかけ、その数を減らしていきます。
そうなるとカルシウムイオンは結合する相手を失うことになり、いつまで経っても海洋生物の栄養として吸収されなくなります。そして、二酸化炭素によって酸化された炭酸イオンはそのまま留まることにもなりますので、海全体が酸性化していくといった流れになるわけです。
また、本来海中というのはアルカリ性で保たれているのですが、こうした酸性濃度が高まるとそのペーハー値(ph値)が下がっていってしまいます。これは二酸化炭素と海中の成分が反応することで水素イオンが増えることに由来し、アルカリ性として示される海のペーハー値は年々低下しているというのが現状です。
ちなみに産業革命以前と現在との差を見てみると、0.1ほどペーハー値が低下しているのですが、これは海中の水素濃度が26%ほど増加していることを表しています。ここまでが海洋酸性化の仕組みと概要となりますが、次に海洋酸性化が与える影響というものもご覧いただきましょう。
海洋酸性化の影響
まず海洋酸性化が進むとどういった影響を与えるのかといいますと、極論をいえば「貝やサンゴ」といった生物が絶滅します。もちろん段階を追って最終的に絶滅へと進むだけで、食い止める手段というのはもちろんあります。
ただし、人間がこのまま何もしなければウニやアワビといった身近な食材がなくなることも現実的に起こり得ます。というのも炭酸カルシウムが不足した海域(水素濃度が高い海)では、実際にウニやアワビといった生物の成長が著しく悪くなることが分かっているのです。
これは通常の海と酸性化が進んだ海の2つを人工的に作り上げ、その2つで同時観察した結果でも判明していますので間違いはありません。酸性化が進んだ海では貝類やサンゴなどにおける殻の部分が上手く成長せずに不完全な形で骨格を成型していくことになります。
こうなると生物としても正常な成長が出来てない上、外敵からも身を守れなくなってしまいますので、最終的に淘汰されていってしまうということになるわけです。しかし、このように海中に生息する一部の生物にとっては非常に悪い影響を与える酸性化ですが、実は一方で成長が促進される生物の存在も確認されています。
それが藻類や海草といったものなのですが、こうした光合成を必要とする生物たちは二酸化炭素濃度が高いほど発育がよくなるそうです。また、海中に二酸化炭素が溶け込むことにより、大気中の二酸化炭素濃度が薄れ温暖化が軽減するといった研究結果もあります。
ただ、もちろんこれは副産物的な影響ですので、結局のところ二酸化炭素の全体量は減らした方が確実に良いということは理解しておきましょう。
海洋酸性化の原因
それでは何故こうした海洋酸性化が急速に問題となり始めたのかといいますと、それは地球で生み出されるエネルギーに関連しています。現在、世界中で危惧されている地球温暖化の原因の根本は「石油などによる発電およびそのエネルギーから排出される二酸化炭素」によって引き起こされているわけですが、海洋酸性化の原因もこれと同じです。
たとえば身近なもので言えば、ガソリン車から排出されるCO2やゴミを燃やしたときに発生するCO2というのが海洋酸性化の原因にあたります。石油がエネルギー資源として注目をされるようになった産業革命以後は、こうしたCO2の排出量がそれまでと比べ物にならないほどに肥大化し、結果として海洋酸性化という問題も招いてしまいました。
普段何気なく「ゴミをあまり出さないようにしましょう」「公共の乗り物を利用しましょう」といった言葉を耳にすることがあると思いますが、それはこうした海洋酸性化を防ぐためでもあるということを理解しておいてください。
海洋酸性化の対策
海洋酸性化を防ぐための対策というのは、排出する二酸化炭素量を減らすしかありません。私たちに出来ることといえば先ほども触れたようにゴミを余分に出さない、必要以上に車やバイクに乗らないといったことが挙げられますが、ほかにもリサイクルへの意識を高めることが重要とされています。
また、電気自動車の購入・利用というのも一般人にとって身近なエコな活動のひとつです。しかし、この電気自動車を製造して利用するまでの過程の中には問題点もいくつかあります。
というのも、電気自動車を作るために大量の工場で石油エネルギーを用いて車を製造していては意味がないからです。こうした観点から近年では、製造業を含めた多くの企業でなるべくクリーンな電気エネルギーを使うことが心がけられるようになってきました。
一例を挙げると太陽光発電や風力発電といった昔ながらの自然エネルギーというのが、その価値を再確認され始めていますし、またここ数十年では海洋温度差発電という海の力に頼った新しいエコ発電システムが注目されてきています。
[blogcard url=”https://naminorihack.com/archives/5761″]このように海洋酸性化を防ぐための対策としては、個人レベルの努力から国家レベルの取り組みまでが必要です。私たちとしては限りある資源を少しでも有効活用するように、日々の生活の中でエコな活動をするしかありませんが、そうした小さな努力が100年後やさらに先の未来の海を作り出します。
ぜひ、こうしたことを理解した上で、自分の孫やその子供たちの世代にキレイな海を残せるように努力をしていきましょう。
海洋酸性化について知っておこう
地球温暖化と並んで心配されている海洋酸性化の問題についてご紹介してきました。温暖化問題が大きく取り上げられる一方で、あまり知られていないのがこの海洋酸性化問題です。
普段、海の近くに住む人やサーフィン・釣りといったものを趣味としている人にとっては、他人事ではない問題でありますが、もちろんすべての人たちに知っておいてもらいたい問題でもあります。ぜひ、こうした問題の内容を理解してエコ活動に取り組むようにしてみてください。