「海ほたる」という言葉を聞くと、多くの人が東京湾上にあるパーキングエリアを想像するかと思います。
そんな海ほたるの名前の元となった生物が「ウミホタル」です。
ここでは、生物としての「ウミホタル」に関する情報を詳しくまとめました。
ウミホタルはその名前の通り一定の条件下において発光をする生物です。
その仕組みや生息地を分かりやすく解説していきますので、どうぞ最後までご覧になっていってください。
ウミホタルとは?
ウミホタルは生物学上「甲殻類」に分類される生き物で、その大きさは3~4mmほどと肉眼で確認できるサイズとなっています。
ちなみに細かく分類すると「甲殻亜門 顎脚綱 貝虫亜綱 ミオドコパ上目 ウミホタル科」の生物が「ウミホタル」です。
そんなウミホタルは2枚の透明な背甲を持っていて、米粒のような形をしているところが特徴的な部分です。
簡単に言えば二枚貝に似た外殻をまとったミジンコのような生物が「ウミホタル」となり、自分で遊泳してエサを捕食しに行くことで生命活動を維持しています。
なお、食性は雑食でイソメやゴカイといった釣りのエサになるような生物を好んで食べるようです。
また、ウミホタルは死肉を捕食する性質があり、海中で死んだ魚などを食べることもあります。
ウミホタルは日中の間「海底の砂地」に紛れて生活をしていて、夜になると自らの付属肢を使い遊泳行為をおこないエサを求めて活動を始めます。
こうした活動が頻繁におこなわれるのは春~秋の期間とされていて、海水温が低くなる冬場には冬眠こそしないものの活動する時間が極端に短くなるそうです。
寿命に関しては詳しいことが分かっていないようですが、ウミホタルを飼育観察したところ「成体で半年以上」の生命活動が確認されたとのことです。
そんなウミホタル最大の特徴と言えば、やはり身体が青く発光する部分となります。
その仕組みを次に詳しく見ていきましょう。
ウミホタルの発光の仕組み
ウミホタルが発光するのは「ルシフェリン」という発光物質を分泌するからです。
ルシフェリンは酸化することで発光しますが、ウミホタルが放出したルシフェリンは「ルシフェラーゼ」という酵素の働きにより海中の酸素と激しい反応を見せます。
こうした物質同士の反応の結果、ウミホタルの周りは青白く光って見えるわけです。
なお、ウミホタルが発光するのにはいくつかの理由があります。
【ウミホタルが発光する理由】
自分にとって敵となる生物への威嚇
仲間に対して危険を知らせるサイン
オスの個体の場合は求愛目的として発光する
ウミホタルは刺激が与えられると危険を察知してルシフェリン-ルシフェラーゼ反応を強く見せます。
外敵への威嚇と仲間への危険信号を同時に出しているといったところは非常に興味深い性質で、そこには意思のようなものすら感じられます。
また、ウミホタルは交配によって子孫を残す生物ということもあり、オスの個体はメスを引き寄せるために発光することもあるようです。
ちなみに、こうしたウミホタルの発光メカニズムは生物学の研究に大変役立ったとされています。
ウミホタルから得られるルシフェリン-ルシフェラーゼ反応は乾燥させた状態でも効果が発揮され、さらに保存も可能です。
生物が発光する仕組みを解明するためには大量のサンプルが必要だったのですが、その点でもウミホタルは採取がしやすく研究材料として扱いやすかったようです。
なお、乾燥させたウミホタルに適量の水分を与えるとその刺激により微弱な発光が確認できます。
この性質を理解していた第二次世界大戦中の日本軍は、相手基地の偵察に行くときなどに乾燥させたウミホタルを持参し、仲間への目印としてその粉を撒いていたそうです。
ウミホタルを軍事利用した例は世界でも非常に珍しいのですが、これはウミホタルの生息地に関係がありますので次にその点を解説していきます。
ウミホタルの生息地
ウミホタルは海底が砂地で淡水の流入が少ないところに多く生息しています。
生息域で考えると青森県から沖縄県まで幅広いエリアで確認されていますが、海水温が比較的低い北海道沿岸ではあまり見かけられないようです。
(前述の通り、海水温が低いと活動が鈍化するため)
特に多くのウミホタルが見られるのは千葉県の南房総エリアや瀬戸内海の沿岸部とされていて、夜になると幻想的な光景が広がることもあります。
ちなみに千葉県にある「渚の駅たてやま」の海辺の広場ではウミホタルをテーマにした様々な催事が開催されていますので、お子さんと一緒に体験学習を楽しむのも悪くありません。
(新型コロナウイルス感染拡大状況によってはイベント中止の場合もあるため要確認)
そのほか大阪府の沿岸部でもウミホタルを観察できるところはあります。
岬町から阪南市にかけての砂浜はウミホタルにとって生息しやすいエリアのようで、海岸ではウミホタルを捕獲する体験も出来るそうです。
なお、こうしたウミホタルは日本の固有種となっていて、外国の海ではほとんど観察がされていません。
似たような発光生物は存在するようですが、ウミホタルという個体は日本にのみ生息しているということです。
(過去にはマレー半島で採取されたこともあるようですが、持続的に生息しているわけではない模様)
ウミホタルと夜光虫の違い
ウミホタルと似たような性質を持つ生物としては「夜光虫」の名前が挙げられます。
夜光虫というと神奈川県の湘南エリアでよく見かけられることで有名ですが、ウミホタルとはまったく違う生物です。
まず、ウミホタルは「甲殻類」に属する生物で、夜光虫は海洋性プランクトンの一種となります。
サイズもウミホタルは肉眼で認識できるほどの大きさとなりますが、夜光虫は体長1mm以下のものが大半で、パッと見ただけではその存在を確認することが出来ません。
また、夜光虫は太陽光の下で「赤く見える」というのが大きな特徴です。
「赤潮」といって海が赤く染まる現象を稀に見かけることがありますが、これは夜光虫が大量発生したときに起きます。
なお、夜光虫は名前の通り夜になると発光するプランクトンで、この点に関してはウミホタルと似ていると言えるでしょう。
ただ、海の中での役割を考えると2つの生物がまた違う一面を持っていることが分かります。
ウミホタルは海で死んだ魚をエサとして捕食しますので、海をキレイにする役目を果たしてくれます。
対して夜光虫は魚のエラなどに入り込み、そのまま魚を窒息死させてしまうこともあるわけです。
ちなみに夜光虫が大量発生すると周辺海域では魚の成長や生育が悪くなるため、漁業関係者からは嫌われています。
どちらも同じように発光をおこないキレイな見た目となるのですが、その生態や役割は全く異なるという部分を理解しておきましょう。
関連記事:海が青く光る『夜光虫』が見れる条件と時期
まとめ
青白い光を放ち幻想的な光景を見させてくれる「ウミホタル」について詳しく説明してきました。
ご覧いただいたようにウミホタルは甲殻類に分類される生物で肉眼でも確認することが出来ます。
また、ウミホタルが生息する地域であれば海岸沿いでウミホタルを採取することも可能です。
日中、ウミホタルは海流が緩やかな浅瀬の海底(砂地)に潜んで生活していますので、そうした特徴を踏まえた上で観察や採取をおこなってみてください。