海に近い地域に住んでいる方であれば、一度は夜の海が青白く光る現象を見たことがあるのではないでしょうか。ちなみに、この夜の海が青く光るのは海中に存在する夜光虫というプランクトンが発光することで起きる現象です。

ここでは夜光虫によって海が青く光る現象、夜光虫が光る理由・発生しやすい時期というものを解説していきます。とても幻想的な風景を見せてくれる夜光虫ですが、その生態がいったいどういったものなのか?気になる方はぜひご覧になっていってください。

夜光虫とは?

夜光虫というのは海中に存在する微生物の一種で、学術上では「ヤコウチュウ」「Noctiluca scintillans」とも表記されます。なお、体長が直径1ミリ程度あるのですが、これは海洋性のプランクトンの中では比較的大きめのサイズです。

ちなみに「Noctiluca scintillans」というのはラテン語で「noctis(夜)、lucens(光る)」という言葉を組み合わせた造語とされ、カタカタでは「ノクチルカ」とも表記されることが多々あります。

なお、この夜光虫は赤潮を発生させるプランクトンの一種ともされているため、昼間は鈍くさびた赤褐色に見えるというのも特徴的な部分です。しかし、赤潮の発生原因がすべてこの夜光虫というわけではありません。

ほかの海洋性プランクトンに混じり赤潮を形成しているだけで、普段は栄養素の豊富な海にただ存在することが多いとされています。そして、この夜光虫は生物学上においては「植物性鞭毛虫綱渦鞭毛虫目」に分類され、植物分類学上では「渦鞭毛植物門」に分類されるというのも特徴のひとつです。

一般的な渦鞭毛藻とは違い葉緑体を持っていないというのが特異な部分であり、そしてほかの生物を捕食するだけの従属栄養性という生命体であるということも他種とは異なるポイントとされています。

ちなみに夜光虫が一般的な渦鞭毛藻と異なる点はほかにも多く、まずその形状からして他の種とは違った進化を遂げているようです。しかし、なぜこのような進化を遂げたかは判明しておらず、その特異な形状はいまだ調査途中となっています。

夜光虫が光る理由

夜光虫がなぜ光るのか?という理由についてですが、これは単なる生命活動の一環に過ぎないようです。生物が発光する要因というのは、ルシフェラーゼという「発光酵素」を有していること、そしてそのルシフェラーゼを含んだ発光酵素を光らせるルシフェリンという「発光素」が何かしらの影響を受けて反応したときとされ、夜光虫の場合は「渦鞭毛藻類ルシフェリン」が発光の源とされています。

なお、これを「ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応」と呼ぶのですが、ルシフェリンとルシフェラーゼは同じ個体もしくは近しい種族の生物との間でしか反応しません。つまり、夜光虫のルシフェラーゼ(発光酵素)をホタルの遺伝子に組み込んでも同じような発光は見られないということです。(ホタルの場合は独自の「ホタルルシフェリン」によって発光がおこなわれるため)

また、発光したときの色についてはこのルシフェラーゼの種類によって決まるとされていて、ホタルでは緑色、夜光虫では青色と決まっているのも特徴的な部分といえます。ちなみに、夜光虫は物理的な刺激によって発光が促されるというのもほかの発光生物とは違っている点です。(ほかの発光生物の多くは繁殖活動のために自ら発光をしています)

そのため、昼間に赤潮が発生していた海であれば、夜の海面に石を投げてみると夜光虫が青く光る可能性があります。これまでには波打ち際の海岸において足跡の形に青く発光していたというケースも報告されていますので、興味がある方は試してみてください。

夜光虫が発生しやすい時期

夜光虫は海洋性プランクトンの一種ですので、ほかのプランクトン同様に海水温が上がってくる5月から9月の間に多く発生します。全体の海水温が上がるとプランクトンが海面に存在しやすくなり、そこに豊富な栄養素が溜まると大量にプランクトンが発生しやすくなるともされていますので、夜光虫の観測をしたいのであれば上記の5月から9月の間を狙うようにしましょう。

夜光虫が発生する条件

夜光虫が発生する条件というのは前項目でも触れたように「海水の温度」「栄養素の多さ」というものがポイントとして挙げられますが、海全体が青く光るくらいに夜光虫が存在するためにはさらにいくつかの条件が必要となります。

まず、夜光虫はプランクトンですから激しい海流の前ではすぐに流されてしまいます。そのため、なるべく湾状になっている海岸の方が潮の流れが遅く、大量の夜光虫が存在しやすいといえるでしょう。また、遠浅の海岸というのも夜光虫が発生するのに適した環境のひとつです。

遠浅の海域では海面近くまで夜光虫が上がりやすく、そして留まりやすいので青白く発光した夜光虫を観測したいのであれば絶好の場所といえます。ちなみに夜光虫の大量発生と赤潮発生のタイミングを同じと考えるのであれば、東日本よりも西日本の方が発生する確率が高いとも考えられます。

これは西日本の方が湾状の海岸における埋立地開発の際、沿岸の海底を掘り起こしていることが多く、それによって海底の窪地が対流を留めることから赤潮が発生しやすいからです。とはいえ、もちろん関東でも夜光虫の発生が観測されることはあります。

特に2017年には神奈川県・鎌倉から鵠沼海岸までにかけて、多くの観測事例が報告されました。次にそのときのケースについて詳しく見ていきたいと思います。

2017年に鎌倉で夜光虫が大量発生


2017年5月5日、神奈川県の鎌倉から鵠沼海岸までにかけて大量の夜光虫発生が観測されました。鎌倉では「坂ノ下海岸」「由比ヶ浜海岸」といったメジャーな海水浴場にて青く光る夜の海が撮影されていて、さらにそこから西へ離れた「鵠沼海岸」でも幻想的な夜の海が記録されています。

ちなみに鎌倉から鵠沼海岸までというのは、細かく湾状になっている海岸線部分が多く、関東では夜光虫が発生するための条件を揃えた絶好の場所のひとつです。毎年ゴールデンウィークあたりの5月初旬には気温も高まり海面の温度が上昇するため、夜光虫が多く観測されてきているスポットでもあります。

もちろんその分、昼間はあまり美しくない赤潮が発生してしまうわけですが、一般的には海開きよりもかなり前の時期なので、夜の散歩で夜光虫による青い発光を見る分には良いといえるでしょう。なお、夜光虫の発光を見たいのであれば、前もって昼間のうちに赤潮が発生しているポイントを探しておくのがベターです。

ツイッターなどのSNSで「●●(海岸名) 赤潮」といったワードで検索するというのもひとつの手かと思いますので、参考までに試してみてください。

まとめ

夜の海を幻想的に彩る夜光虫という存在について詳しくまとめてきました。夜光虫の正体は赤潮の原因ともなる海洋プランクトンの一種ですから、実際にはあまり発生しない方がいいというのが正直な部分です。

しかし、発生してしまったからには少しでも前向きに捉えることも必要で、夜光虫がもたらす美しい景色を楽しむというのも悪くはないと思います。最後におさらいとなりますが、夜光虫の観測は「5月から9月にかけて、湾状もしくは遠浅の海で、赤潮が発生する確率が高い海」で見ることが可能です。

もし近くの海が条件に当てはまっているという方は、たまに夜の海を眺めてみるというのもいいかもしれませんね。

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