サーフィンなどで海へよく訪れる方であれば「赤潮」や「青潮」といった言葉を聞いたことがあると思います。ただ、その「赤潮」や「青潮」といったものがどうやって発生しているのか、またどのような影響を人体に与えるのかまで知っている人は少ないと思います。
ここでは、そんな「赤潮」や「青潮」の発生原因や対策方法、さらに「赤潮」や「青潮」が発生しているときにサーフィンをしていいものなのか?といった疑問について解説していきます。ぜひ、サーファーを含め、海に携わる機会の多い方々はその内容をチェックしていってください。
赤潮とは?原因は?
赤潮というのは、植物性プランクトンが異常大量発生することによって海面が赤く染まったように見える現象のことを指します。この植物性プランクトンは河川から流入した生活排水や工場排水に含まれる栄養分をエサとして繁殖するため、主に工場地帯や河川が多い地域でよく見かけられることが特徴的な部分です。
また、湾状になっている海域ではそれぞれの排水が湾内に留まりやすいため、発生リスクが高まるともいわれています。なお、赤潮が日本の海域で多く観測され始めたのは高度経済成長期以降で、1960年代から1970年代にかけた時期がもっとも多く赤潮の発生を観測している期間です。
当時、赤潮の発生が問題視されていた瀬戸内海においては年間で300件近くの赤潮が発生していました。この赤潮が発生することでもっとも深刻な被害というのは、植物性プランクトンが対象海域に生息する魚を殺してしまうことです。
これは植物性プランクトンが魚のエラに触れることで呼吸困難を引き起こすこと、また植物性プランクトン自体が大量の酸素を消費することで海域全体の酸素濃度が低下することが原因に挙げられます。ちなみに、過去には大規模な赤潮によって瀬戸内海の養殖ハマチが大量に死滅して71億円もの被害額を計上したこともありました。
このように漁業はもちろんのこと海の生態系までを脅かす赤潮に対しては、国も様々な対策を講じていて、現在では瀬戸内海における年間の赤潮発生件数を100件程度にまで減少させることに成功しています。ただ、それでも赤潮による漁業への被害というのはいまだ大きく、その被害額は瀬戸内海だけでも年間平均20億円近くにのぼるといわれているため、日本全体で考えてみると非常に大きな損失を毎年計上していると言えるでしょう。
ちなみに赤潮は海だけでなく琵琶湖のような大きい湖でも発生することが確認されているため、周辺地域に住んでいる方はその日の湖の水質などに注意することも必要です。
青潮とは?原因は?
青潮というのは大量に発生したプランクトンが死滅したあとに起きる現象のことです。栄養に富んだ海で大量に発生したプランクトンは、死滅すると海底に沈みバクテリアによって分解されることとなります。
このプランクトンが分解されるとき、海中では大量の酸素が消費されるのですが、結果として酸素含有量の極端に少ない貧酸素水塊を生み出してしまうことが青潮発生の原因です。貧酸素水塊は普通であれば海流によってバラバラになるのですが、湾状になっている海域などではその力が弱く、一定の場所に留まることとなります。
なお、東京湾など湾の陸地部分を埋立地化している地域というのは、その周辺海域の海底部分を掘り起こしているケースが多々あります。そして掘り起こされた海底部分は窪地となり、その窪地に貧酸素水塊が留まってしまうというのも青潮を発生させる要因のひとつです。
海中にて発生・停滞した貧酸素水塊中には嫌気性細菌というものが多く含まれていて、大量の硫化水素を発生させます。この硫化水素を含んだ貧酸素水塊が海底から海面方向に向かって上昇すると、今度は酸素を多く含んだ海水と混じりあい、結果として硫化水素が酸化されることで硫黄・硫黄酸化物を生み出してしまうわけです。
そしてその硫黄・硫黄酸化物は次にコロイド化され海面を覆っていくのですが、コロイド化した硫黄・硫黄酸化物というのは光の反射によって白濁色もしくは薄い青色に見えるようになっていきます。
この結果、海が青く見えるという現象が起きるわけですが、この一連の流れと発生した海面状態を青潮と呼ぶわけです。
赤潮・青潮対策
青潮の発生する原因が赤潮発生時における大量のプランクトンだとするならば、まずはプランクトンが大量に発生する要因をつぶしていく必要があります。プランクトン発生を抑制するのには、先ほども触れたように工場排水や生活排水が海へ流れ出ないようにすることが重要です。
そのため、国も法規制などをおこない排水問題について取り組んできました。しかし、ある程度の効果は見られたものの、現在でも赤潮は年間で数百件と観測されています。
そうなると各自治体が自発的な赤潮防止措置を取らなければいけなくなるのですが、現在もっとも効果的といわれているのがプランクトンを死滅させる「殺藻微生物」の活用です。殺藻微生物というのは簡単に言えば赤潮発生要因のプランクトンを逆にエサとするもので、マクサやアオサといった海藻類に付着しているとされています。
実際にこうした海藻類が豊富に見られる海域では赤潮の発生がほとんどなく、防止対策としては非常に有効的と見られているのです。そのため、最近では人為的に殺藻微生物を含んだ海藻類を赤潮発生海域にて培養することで、赤潮への予防対策をおこなっています。
特に魚介類とアオサ・マクサを一緒に養殖することで効果が高まると考えられているので、養殖漁業界にとっては明るい展望が見えるような予防対策と言えるでしょう。また、人工リーフや防波堤といった海岸構造物との予防対策の組み合わせによっても、大きな赤潮抑制に繋がるとされています。
というのも海岸構造物があることによって、殺藻微生物を一定の場所へと留まらせる効果、さらに継続して繁殖する効果が狙えるからです。なお、現在のところはこの2つの対策を主軸にして各自治体が赤潮対策に乗り出していますが、今後さらにバイオ研究が進むことでより効果的なプランクトン対策が見つかるのではとも期待されています。
赤潮・青潮でサーフィンはできる?
赤潮や青潮が発生しているときにサーフィンができるのか?というのが、サーファーにとっては気になるポイントだと思います。結論からいえば、サーフィンをおこなうこと自体は特に問題はありませんが、実際には赤潮・青潮発生時のサーフィンというのはあまりおすすめできません。
理由としては、赤潮や青潮が発生しているときに海へ入ると皮膚や気管に炎症を起こすケースが稀にあるからです。体質的に問題がない人もいれば影響を受けやすい人もいますので、赤潮や青潮が観測されている状態であれば、あまり海には入らない方が賢明といえるでしょう。
また、特に青潮発生時というのは死骸となったプランクトンが分解されて海面に浮上した状態ですので、臭いがひどいときもあります。そのため、サーフィンを楽しめる環境ではないということもおすすめしない理由のひとつに挙げられるでしょう。
【参考文献】
まとめ
プランクトンが異常に発生することで引き起こされる赤潮と青潮。どちらも海面が普通の状態ではありませんので、あまりサーフィンをするのに適した環境とはいえません。そのため、もし赤潮や青潮が発生しているタイミングであれば、その日は海に入ることを控えた方が賢明です。
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