この記事では「マッコウクジラ」の特徴や生態をご紹介していきます。
マッコウクジラはハクジラ類の中でもっとも大きなクジラです。
その大きさはオスでおよそ18m前後に達し、メスでも10mを超えます。
ここでは、そんなマッコウクジラの生息地・食性・寿命などを詳しくまとめました。
また、マッコウクジラの名前の由来やマッコウクジラの天敵といった部分も解説していますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
マッコウクジラとは?
マッコウクジラは「偶蹄目マッコウクジラ科マッコウクジラ属」に分類される唯一の種です。
クジラには大きく分けて「ハクジラ類」と「ヒゲクジラ類」の2種類が存在しますが、マッコウクジラはハクジラ類の仲間となります。
ちなみにマッコウクジラはハクジラ類の中でもっとも身体が大きく、他種よりも巨大な頭を持つところが特徴的です。
また、現在のところ地球上に存在する「歯を持つ生き物」の中でも一番大きいのはマッコウクジラとされています。
マッコウクジラはとても潜水能力に長けている生き物で、水深2000mくらいまでなら息継ぎなしで潜ることが可能です。
もちろん他のクジラも潜水を得意としていますが、これほど深いところまで潜るのはマッコウクジラくらいです。
「なぜマッコウクジラは水深1000m~2000mほどの深海まで潜るのか?」という疑問もありますが、これについては正確な理由が分かっていません。
ただし、一説によれば他のクジラやサメなどとの生存競争に敗れ、表層のエサを諦め深海に食べ物を求めた結果ではないかと考えられています。
なお、マッコウクジラは光が届かない深海でも「エコーロケーション(音波の反響)」によって仲間たちとコミュニケーションが取れる生き物です。
このあたりはイルカと似たような生態を持っていると言えるでしょう。
名前の由来
マッコウクジラは漢字で「抹香鯨」と書きます。
抹香とはお香を粉末にしたものを指しますが、マッコウクジラの体内では同様の香りを発する「龍涎香(=アンバーグリス)」が作られることからその名が付けられたそうです。
ちなみに龍涎香の正体はマッコウクジラの腸内で形成される「結石」です。
昔から香料や薬の原料として使われていて、かつては非常に価値のあるものとして扱われていました。
家族単位と社会性
マッコウクジラはオスのグループと母子のグループに分かれて生活を送ることが一般的です。
メスと子供のグループでは、母親が子供に潜水の仕方を教えながら独り立ちできるまでサポートします。
これは将来的に深海まで潜ってエサを探しにいけるようにするためです。
オスの子供は成長するにつれて母子のグループから離れ、若いオス同士で群れを作りながら北極や南極といった海域まで回遊するようになります。
性格
マッコウクジラは比較的「荒い気性」の個体が多いと考えられています。
人間を襲って食べるような行動は取りませんが、縄張りに入って来た船舶を攻撃することはあります。
なお、過去には日本の船がマッコウクジラの攻撃によって沈没した例もあるので、群れが確認されている海域では航行の仕方に気を付けなければなりません。(海外では日本よりもこうした事例が多いそうです。
マッコウクジラの特徴・生態
ここからはマッコウクジラの生息地・大きさ・食性・寿命といった詳しい生態をご紹介していきます。
生息地
マッコウクジラは地球上のほぼ全海域を生息地としています。
つまり、北極や南極といった冷たい海から赤道付近の暖かい海域まで、基本的にはどこの海でもマッコウクジラを見かける可能性があるということです。
ただし、冷たい海に生息しているのはマッコウクジラのオスのみで、メスや子供のマッコウクジラは暖かい海域にしか生息していません。
日本近海だと小笠原諸島の周りにメスと子供のグループが存在し、北海道の知床半島より北側にオスのグループが存在しているそうです。
なお、マッコウクジラは季節ごとに回遊をおこなう生き物であり、基本的にはあまり定住というスタイルを取りません。
しかし、中には同じところで暮らし続ける珍しいグループも存在するようです。
大きさ・体重
マッコウクジラはハクジラ類の中でもっとも大きなクジラです。
オスは体長がおよそ18m前後、体重がおよそ45トンまで成長します。
なお、メスは体長およそ12m前後、体重およそ15トン程度なのでオスよりだいぶ小柄です。
このようにオスとメスの体格差が大きいというのもマッコウクジラならではの特徴と言えます。
ちなみにオスのマッコウクジラで大きいものは20mを超えるケースもありますが、それでも全クジラの中では3~4番目の大きさです。
全クジラ中もっとも大きいのはヒゲクジラ類に分類されるシロナガスクジラで、その体長は30mを超えます。
※シロナガスクジラはこれまで地球上に生息していた全生物の中でも一番大きな生き物とされている。
寿命
マッコウクジラの寿命はだいたい60年〜70年くらいと推測されていますが、年齢を調べるときには「歯」を参考にします。
マッコウクジラの歯には木の年輪のような層ができているので、その大きさや数を調べればある程度正確な年齢が分かるわけです。
なお、マッコウクジラが性成熟するまでの時間はオスで10年〜20年、メスで4年〜6年とされています。
ちなみにマッコウクジラの妊娠期間は12カ月〜18か月くらいで、出産した後は子育てに2年〜3年の時間を掛けるそうです。
また、出産に関しては5年に1回のペースと考えられているので、出生率はそれほど高くありません。
食性
マッコウクジラは「肉食性」の生き物です。
主な捕食対象はヤリイカやダイオウイカなどのイカ類とスケソウダラのような魚類となりますが、サメ科に属するような大型魚類を狙うこともあります。
そのほかマグロやエイなども食べることが分かっているので、基本的にマッコウクジラは好き嫌いなく食事を取るタイプのクジラと言えるでしょう。
なお、マッコウクジラは「ハクジラ類」に属するクジラなので、当然「歯」を持っています。
しかし、大抵の場合はエサとなる生き物を丸飲みするため、本来なら歯が不要です。
なぜマッコウクジラに立派な歯があるのかは解明されていませんが「獲物を噛みちぎる」「オス同士のケンカで使われる」といった理由のほか、「子供にエサを与える際に捕らえた獲物を噛んだまま表層まで持ってくるため」という説も考えられるとのことです。(子供のマッコウクジラはエサがある深海まで潜れないため)
マッコウクジラの天敵
海の中にいるマッコウクジラの天敵は「シャチ」のみです。
シャチは多くの海中生物にとって天敵とされていますが、マッコウクジラに関しても例外ではありません。
子供や小さいマッコウクジラはもちろんのこと、成体となったマッコウクジラもシャチに襲われることはあります。
こうしたシャチの襲撃から逃れるために水深2000m近い深海まで潜れるよう進化したとも考えられます。
なお、近代においてマッコウクジラの最大の天敵は人間です。
これまでの歴史上、商業利用(主に油)や食料目的として数多くのマッコウクジラが人間によって捕らえられています。
まとめ
ハクジラ類の中でもっとも大きな「マッコウクジラ」に関する特徴・生態をご紹介してきました。
マッコウクジラは世界中の海に生息するクジラで、日本近海でもその姿を見ることが可能です。
ただし、マッコウクジラは大型の船舶に対しても怯まず攻撃をする獰猛な一面があるため、無闇に近付くのは危険であることを理解しておきましょう。