この記事では、昔から日本の食卓でお馴染みの「サケ(鮭)」の一生や生態をご紹介していきます。
サケは多くの国で食用として扱われている魚の一種です。
河川で生まれた後に海へ移動し、そこからまた生まれ育った河川に戻っていくという少し変わった生態を持つ魚として知られています。
ここでは、そんなサケの一生や主な生息地、食性や寿命などを詳しくまとめてみました。
また、意外と知られていないサケとマスの違いや特殊なサケの種類も解説していきますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
サケとは?
サケとは「サケ目サケ科サケ属」に分類される魚のことで、一般的に「鮭」という名前を使って販売されているのは通称「シロザケ」を指します。
ただし、サケの分類に関しては未だ曖昧なところが多く、サケ類をまとめて「サケ」と呼ぶこともあります。
成魚のサケは体長70cm~80cmくらいになりますが、大きなものだと90cm〜100cmほどまで成長することも少なくありません。
ちなみに大きくなるのは主にメスのサケであり、オスはそこまで大きく成長しないといった特徴も持っています。
サケは世界各国で食用として扱われていて、日本でも昔からよく食べられてきました。
特に北海道のアイヌではサケのことを「神の魚(カムイチェㇷ゚)」と呼び、身から皮まで余すことなく食用・生活用品に使っていたようです。
(およそ4000年前からサケ漁がおこなわれていたことを示す出土品も発見されている)
また、近年においてはサケの白子に含まれている特定の物質がレアアース採取に役立つことが分かっていて、今後は食用だけでなく化学分野でも欠かせない存在になると言われています。
サケとシャケはどちらが正しい?
サケとシャケはどちらも正しい読み方とされていますが、テレビのニュースなど公的な場では「サケ」が使われています。
シャケはサケが転じた読み方ではあるものの、多くの地方でシャケ呼びが定着していることから「鮭=シャケ」でも間違いではないそうです。
ちなみにサケとシャケという呼び方の区別には色々なものがあり、生きている状態なら「サケ」で食材となっているものは「シャケ」と使い分けるケース、本来は「サケ」だが「江戸っ子訛りでは「シャケ」と呼ぶケースなどがあります。
サケと寄生虫(アニサキスなど)について
サケにはアニサキスやサナダムシといった寄生虫が含まれている危険性があります。
そのため、日本では昔から生食をNGとしてきました。
前述のアイヌの人々も経験則からサケを生食せず、一度凍らせてから食べる「ルイベ」という調理方法(保存方法)が浸透しています。(冷凍することで寄生虫が死滅する)
ちなみに生物学上はサケと同じ魚として扱われるサーモンの刺身が食べられるのは「養殖」によって寄生虫が体内に入り込まないよう管理されているからです。
つまり、寄生虫が存在しない無菌状態の生け簀や養殖場で育ったサケなら生食しても問題ないということになります。
特殊なサケの種類
日本では少し特殊なサケを別の名前で呼んだりすることがあります。
・鮭児(けいじ)
北海道の知床あたりで獲れるサケのうち、卵巣が未成熟かつ脂が乗っているものを鮭児と呼びます。
一般的なシロザケ1万匹のうち、鮭児と認められるのはわずか1〜2匹のみです。
そのため、高級な食材として重宝されています。
※産卵をしていないため身質が高い、他の個体と比べて臭くないなどの理由によって特別なサケとして扱われている。
・時鮭(ときしらず)
本来、サケは産卵期にならないと河川を上がってきませんが、そういった時期以外に獲れる珍しいサケを「時鮭(ときしらず)」と呼びます。
時鮭は産卵のために体力を使っておらず、海や河川で蓄えた栄養がまるまる身質に反映されていることから非常に美味しいと言われています。
サケの一生
日本で獲れるサケ(=シロザケ)の一生は以下の通りです。
1.河川で生まれる
2.生後数カ月で海に出ていく
3.数年ほど海で過ごした後に河川に戻る
4.繁殖・産卵活動をおこなう
5.産卵後、1週間ほどで一生を終える
サケは冬の間にそれぞれの河川で生まれます。
なお、孵化までに掛かる日数はだいたい50日くらいです。
生まれてから数ヶ月間はプランクトンやユスリカをエサにしながら成長し、ある程度大きくなったサケは春になると海を目指して河川を下っていきます。
大海原へと旅立ったサケたちは、最初の1〜2ヶ月間を沿岸部で過ごします。
その後、オホーツク海からベーリング海へと渡り、秋ごろになるとアラスカ湾へ移動して冬を越すというのが一般的なサケのサイクルです。
こうした回遊を数年おこなって成魚になったサケは、最終的に自分が生まれた河川へと戻っていき繁殖活動を始めます。
ちなみに河川を上っていくときにサケはエサを食べません。
産卵時期の前までに栄養を蓄え、その力を使って河川を上っていくわけです。
産卵場所に辿り着いたサケは卵を産むための窪みを作り、そこで産卵と放精をおこないます。
繁殖活動を完遂させたサケたちはそこで体力を使い切り、その後1週間程度で一生を終えるということです。
サケの特徴・生態
ここからはサケの生息地・食性・寿命といった詳しい生態をご紹介していきます。
生息地
サケは主にオホーツク海・ベーリング海といった北太平洋と北極海の一部、また日本海に生息しています。
日本におけるサケの産卵地としては北海道の石狩川や豊平川が有名です。
なお、サケは冷たい海域を好む魚なので、日本でも南の方には生息していません。
日本海側では島根県の一部河川、太平洋側では千葉県の銚子までが南限とされています。
また、サケは自然繁殖によって増えるケースもありますが、人工的な稚魚の放流などによっても個体数が維持されています。
食性
サケは稚魚のころと成魚のころで食べるものが変わりますので、すべてをまとめて考えると「雑食性」の魚と言えるでしょう。
稚魚のころは河川に漂うプランクトンや小さな虫などを食べて成長し、成魚になるとイワシなどの小魚を食べるようになります。
ほかにも自身の身体に合わせてオキアミのような小さな生物からホッケ類のような魚まで色々なものを食べることが分かっています。
寿命
サケの寿命はだいたい3年〜5年くらいとされています。
長く生きる個体でも寿命は7年程度です。
サケは繁殖活動に全ての力を使い、そこで一生を終えます。
なお、サケはある程度まで成長すると本能によって生まれ育った河川へと戻っていきますが、この河川回帰率はほぼ100%とのことです。
つまり、海洋で他の魚などに食べられてしまう、また河川でヒグマなどに襲われることがない限りは繁殖活動のためにほぼ全てのサケが生まれた場所へと帰ってくるわけです。
サケとマスの違い
サケとマスの区別は曖昧で、正確な定義付けはされていません。
そもそもマスはサケと同じサケ目サケ科の魚で、日本においてはサケという名前が付く魚以外のサケ科に属する魚の総称として使われたりもします。
また、サケとマスの区別は国によっても異なるため、さらに曖昧さを増しているようです。
ちなみにサケは英語でサーモン、マスは英語でトラウトと呼ばれています。
大雑把な分け方だと海から河川に戻ってくるのをサケ(サーモン)とし、一生を淡水で過ごすものをマス(トラウト)とする考え方もありますが、マスの中にも海洋へ出る種は存在します。
まとめ
日本人にとっても馴染み深い魚である「サケ」の一生や生態をご紹介してきました。
ご覧いただいたようにサケは河川で生まれ、海で成長してからまた生まれ育った河川へと戻ってくる魚です。
産卵と同時に一生を終えるという点に儚さを感じますが、海で蓄えたエネルギーを次世代に繋げるため川を上る姿はまさに「一生懸命」を体現しているようにも思えます。