大雨や台風などが発生したときによくニュースで「波浪警報」という文字を見かけますが、波浪警報がどういった意味を持っているかご存知でしょうか?
なんとなく「波が高くなっていて近くに寄ると危ない」という漠然としたイメージは沸くものの、正確な意味を理解している人は多くないかと思います。
なお、波浪警報が発表される基準は全国ですべて同じというわけではありません。
つまり、その地域ごとの波浪警報基準があることになりますが、この点に関してもあまり知られていない情報と言えるでしょう。
この記事ではそんな「波浪警報」の基準や意味、また高潮警報との違いなどについて詳しく解説をおこなっていきます。
突発的な災害に備える上でも波浪警報の正しい意味を知っておくことは非常に大切ですので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
波浪警報とは?
波浪警報というのは気象庁が発表する「気象警報」の一種です。
気象警報とは自然現象が原因で重大な災害が起きる可能性が高いと判断されたときに発表されるものですが、そのうち波浪警報は「高波による遭難事故、また沿岸部にある施設に重大な被害が出る」と予想されたときに発表されます。
つまり、波浪警報が発表される原因となるのは高波の存在ということです。
高波が発生する要因としては台風や低気圧の影響が主な例として挙げられますが、地震によって高波が生まれることもあります。
ちなみに波浪とは、「風浪」や海中の「うねり」によって生じる波全般を指します。
そのため、定義上ではおだやかな状態の波も波浪の一種となるわけですが、警報が発表されるレベルでない場合は「波」と呼ぶことが一般的です。
なお、波浪警報を含む気象警報には段階があり、基本的には「注意報」「警報」「特別警報」の順番に重大さが増していくようになっています。
波浪にも「波浪注意報」「波浪警報」「波浪特別警報」という3つの段階があるのですが、ほかの災害自然現象には注意報のみで警報・特別警報がないものもあります。
こうした部分を見ても、波浪警報には細かくその被害予測を伝える役割があることが分かります。
ということで波浪警報の概要をご紹介してきましたが、少し解釈が難しいかもしれませんのでここまでの情報を一旦整理しておきましょう。
・波浪警報は気象庁が発表する気象警報のひとつ
・波浪には3段階のレベルがある
・波浪警報は高波による遭難事故や沿岸部施設への被害が起こり得るときに発表される
波浪警報の意味が分かったところで、次は警報が発表される基準について解説をしていきたいと思います。
波浪警報の基準は地域で異なる
波浪警報というと全国で一律の基準が設けられているように思えますが、実はその基準は地域によって異なります。
これは、たとえば同じ高さの波がやってきたとしても、地形や沿岸部の状況によって災害の発生確率や被害の大きさが変わってくるからです。
ということで、分かりやすいよう一例として横浜と銚子における波浪警報の基準を挙げてみます。
・横浜(神奈川)では有義波高が5m以上ある場合に波浪警報が出される
・銚子(千葉)では有義波高が6m以上ある場合に波浪警報が出される
ご覧のように波浪警報の基準は地域によって1mもの差があることが分かりました。
ちなみにこれが東京の場合だと有義波高が3m以上で波浪警報が発表されるようになっていますので、さらに大きな差があります。
ただし、この東京の基準は23区だけに限定したものです。
東京都に含まれる伊豆諸島・小笠原諸島に関しては有義波高6m以上がその基準となっていて、こうした点からも基準にはバラつきがあることが理解できるかと思います。
また、基準の違いが理解できたら、あらかじめ自分が住んでいる地域の波浪警報基準を知っておくことも重要となりますのでぜひ一度確認をしてみてください。
次に、この波浪警報の基準となる「有義波高」というのも大事なポイントなので補足説明をおこなっていきます。
有義波高とは、波の高さを高い方から順番に並べたときに上位1/3に入る波の平均を取った数字のことです。
つまり30個の波を観測した場合だと高さ上位10個の波の平均が「有義波高」になるということです。
そのため、仮に10mの波が1回きても他の9回の波がすべて2mだったとすると「10×1+(2×9)」÷10になりますので、有義波高は2.8mと計算されます。
この有義波高のことを「3分の1最大波」とも呼ぶのですが、この数字が基準を上回ったときに波浪警報は出されます。
こうして考えると、警報が出されたときには基準以上の高さの波もやってきていることになりますので、速やかに沿岸部から離れるようにしましょう。
波浪注意報とは?
波浪注意報とは、気象庁の言葉を参考にすると「高波による遭難や沿岸施設の被害など、災害が発生するおそれがあると予想したときに発表するもの」となっています。
つまり波浪警報との違いは「災害の度合いが重大かどうか」という部分だけです。
災害の度合いについては先ほど解説した有義波高が基準となり、注意報の方が警報よりも低い基準が設定されています。
なお、銚子を例に挙げると波浪警報は6m、波浪注意報は2.5mといった形になっていますので参考にしてみてください。
ちなみに台風などが近づいてくると、まずはこの波浪注意報が出されます。
そして有義波高の数字が大きくなるにつれて波浪警報へと発表が変わっていくわけです。
波浪特別警報とは?
波浪特別警報についても気象庁の言葉を借りますが、定義としては「数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により高波になると予想される場合に発表するもの」とされています。
つまり通常では起きないようなレベルの高波が発生することを意味しますので、特別警報が出された場合にはすぐ沿岸部から避難しなければなりません。
ちなみに気象庁のホームページを見てみると、特別警報が出される具体的な数値は「中心気圧930hPa以下、または最大風速50m/s以上」と書かれています。
これは1959年に発生した「伊勢湾台風」が基準となっているようです。
なお、伊勢湾台風とは明治以降の日本でもっとも多くの死者・不明者を出した台風で、その数は5,000人を超えています。
この台風をきっかけにして現在の自然災害対策の基準は設定されていますので、仮に波浪特別警報が出されたとしたら「かなり警戒をしなければいけない」ということを理解しておきましょう。
高潮警報との違い
言葉の雰囲気からすると波浪警報と同じように感じられるものが「高潮警報」です。
もちろん波浪警報と高潮警報は違うものであり、その意味合いも異なります。
高潮警報とは台風や低気圧などの影響によって「異常な潮位上昇」が起こり、それが重大な災害発生に繋がるおそれがあると予想された場合に発表されるものです。
つまり波の高さではなく海面自体の上昇が発表の基準となるわけです。
なお、先ほど同様に銚子を例に挙げてみると、銚子の場合は通常の潮位より1.5mの海面上昇が見られたときに高潮警報が出されるようになっています。
1.5mというと子供ひとり分は軽くありますので、それだけでも危険性が高いことが理解できるかと思います。
また、高潮に関しても波浪と同じように注意報・警報・特別警報の3段階があり、特別警報が出た場合にはすぐに沿岸部から避難しなければいけませんので覚えておきましょう。
まとめ
波浪警報の意味や基準、さらに特別警報などに関する情報をまとめて解説してきました。
波浪警報という言葉自体は知っているが、その内容までは知らなかったという方も多かったかと思います。
特に波浪警報の基準が地域によって異なるという情報は防災面においても重要なポイントです。
これをきっかけに波浪警報の意味が分かったら、ぜひ有事の際の避難などに役立ててみてください。