この記事では夏になると海でよく見かける「アンドンクラゲ」の情報を詳しく解説していきます。
アンドンクラゲはカツオノエボシと並び「電気クラゲ」とも呼ばれるクラゲの一種です。
長く伸びた触手に触れると強烈な痛みと共に肌がミミズ腫れになることがあります。
一般的にはお盆過ぎから見かける機会が多くなると言われているアンドンクラゲですが、最近は日本も温暖化の影響を受けているということもあって6月~7月くらいに観測されることも少なくありません。
そんなアンドンクラゲの特徴や生息地、刺されたときの症状や対処法を分かりやすくまとめてみました。
海に行く機会が多い方は、ぜひこちらの内容を参考にしながら適切な対応・処置を取ってみてください。
アンドンクラゲとは?特徴は?
アンドンクラゲは「刺胞動物門・箱虫綱・アンドンクラゲ目・アンドンクラゲ科」に属する独立した種類のクラゲです。
見た目の特徴としては「行燈(あんどん)に似た立方系の傘」を持っているところと「30cm以上にまで伸びる4本の触手」を持っているところが挙げられます。
また、生態としては「強力な毒性を持った刺胞」「外敵を察知できる感覚器官(レンズ眼)」「波が強いときでも自由に動き回れる遊泳力」などを有しているところが大きな特徴です。
特にアンドンクラゲの毒は強烈で、人を死に至らしめるほどではないものの刺胞に触れると激しい痛みを感じます。
ちなみにアンドンクラゲの近縁種には「殺人クラゲ」とも呼ばれる「オーストラリアウンバチクラゲ」が挙げられ、その毒性の強さは同じ種類のクラゲの中でも高い方です。
そんなアンドンクラゲは群れを成して行動するといった習性があり、海中でアンドンクラゲの群れを発見したときには注意が必要となります。
仮にサーフィンやシュノーケリングなどをしていてアンドンクラゲが集まっているところを見かけたら、速やかに海から出て群れのクラゲが去るのを待ちましょう。
なお、前述の通りアンドンクラゲは非常に発達した眼を持っていて、微弱な光にも反応して集まってくることがあります。
漁師が夜間に燈火などを使って漁をおこなっていると、その明かりに集まってくることが多々あり、漁の邪魔ものとしてもアンドンクラゲは有名です。
アンドンクラゲは傘の部分が3~4cmほどの小さなクラゲで、しかもほぼ透明の見た目をしているため初見では目視がしづらいです。
海水浴をしていてアンドンクラゲに刺されたことがあるという人も少なくないと思いますが、クラゲが発生しやすいお盆過ぎの時期にはこうした被害に遭わないよう気を付けてください。
アンドンクラゲの生息地
アンドンクラゲは本来暖かい海に生息するクラゲですが、夏ごろになると熱帯太平洋から黒潮に乗って日本近海にまでやってきます。
もっとも気温が上がる真夏には北海道まで北上するアンドンクラゲもいますので、ほぼ日本の海域すべてに生息していると言って良いでしょう。
ちなみに日本近海で見かけるアンドンクラゲは1年を通して同じ海域に生息していることもあり、冬だからクラゲがいなくなるというわけではないようです。
一般的にクラゲが活動できる海水温は20℃~30℃程度と考えられていて、この温度に近付く夏の時期にアンドンクラゲが活発に動きだし見かける機会も増えるといったイメージです。
なお、アンドンクラゲとは別種のミズクラゲの場合は27℃以上で死滅するケースが多いといった報告もありますので、海水温があまりにも高い場合は逆にクラゲも生きられないのかもしれません。
そんなアンドンクラゲですが、日本各地で観測されることもあり地域によっては呼び方が変わります。
一例として九州では「イラ」、本州の一部では「イセラ」、北海道では「タコテレレン」といった名前で呼ばれているとのとこです。
アンドンクラゲに刺された場合の症状
アンドンクラゲに刺された場合の症状は主に3つです。
それぞれの症状について詳しく見ていきましょう。
〇痺れるような強烈な痛み
アンドンクラゲに刺されると、まずピリピリっとした強い痛みを感じます。
だいたいこれでクラゲに刺されたことが分かるのですが、アンドンクラゲの毒性は人を殺すほどではないにしろかなり強烈です。
アンドンクラゲには刺胞と呼ばれる器官があり、この刺胞を刺激すると中から棘針が飛び出してきます。
棘針が刺さるとそこから毒液を注入され痛みと腫れを引き起こすわけですが、この毒素は「タンパク質毒素」と呼ばれるものです。
〇数日間治らないミミズ腫れや水ぶくれ
タンパク質毒素が皮膚に入り込み大きなダメージを負うと数日間治らないほどのミミズ腫れや水ぶくれを引き起こします。
数日経ってキレイに治ることもあれば、その傷が痕になってしまうこともあるので、あまりひどい時にはすぐ病院で診察を受けましょう。
また、アンドンクラゲに刺された場所が目の周りなどの急所付近であった場合には、こちらもすぐ病院で治療を受けた方が賢明です。
〇アナフィラキシーショック
アンドンクラゲに複数回刺された場合にはアナフィラキシーショックを引き起こすこともあります。
皮膚の痛みや腫れだけでなく、吐き気や眩暈などを感じているときにはこうしたアレルギー症状を疑いましょう。
なお、アナフィラキシー反応はクラゲに刺されてから数分~15分ほどの間に起こります。
この期間に嘔吐・吐き気・眩暈・全身性蕁麻疹・咳・呼吸困難などを感じたらすぐに病院へ行ってください。
アンドンクラゲの毒は死亡事故を引き起こすほどではないと言われていますが、人によってはアレルギー症状により重篤な状態になる可能性もゼロではありません。
アンドンクラゲに刺された場合の対処法
アンドンクラゲに刺された場合にはすぐ海から引き上げて陸地まで戻りましょう。
これは刺されたショックや炎症によって泳ぎづらくなり、溺れることを防ぐためです。
陸地に戻ったら十分な量の海水で患部を洗い流します。
このとき患部を擦ってしまうと刺さったままの刺胞から棘針が発射され、余計に炎症が広がってしまうので注意しましょう。
患部に刺胞が刺さったままの場合はピンセットやタオルを使って取り除いてください。
なお、アンドンクラゲの毒(刺胞)には「酢」が効果的なので、もし近くで「酢」が手に入るなら患部を「酢」で洗い流します。
(酢をかけると刺胞から発射される棘針の動きを抑えられるとのこと)
ただし、別のクラゲの毒の場合は酢が効かないこともあります。
素人目にはアンドンクラゲに刺された痕なのか、それとも別のクラゲや海洋生物に刺された痕なのか判断できないかもしれませんので、どちらにしても炎症やミミズ腫れがひどいときには病院で適切な処置を受けてください。
まとめ
暖かい時期になると海で見かける機会が増える「アンドンクラゲ」に関する情報をご紹介してきました。
ご覧いただいたようにアンドンクラゲは強い毒を持ったクラゲなので、見かけたときには近づかないようにしましょう。
ただ、アンドンクラゲはほぼ透明な見た目をしているため、うっかりと触れて刺されることも少なくありません。
アンドンクラゲに刺されたときは陸地へと戻り、海水や酢で患部を洗ったあと保冷剤などで腫れているところを冷やしてください。
なお、吐き気や眩暈などアレルギー症状を感じたときにはすぐ病院へ行くことをおすすめします。
《参考文献》