この記事では、魚類の中でもっとも大きな身体を持つ「ジンベエザメ」に関する情報をご紹介していきます。
サメというと人間を襲う危険性がある生き物といったイメージがありますが、ジンベエザメは性格がおとなしいサメの一種です。
そのため、人間をあえて襲う(食べる)ようなことはありません。
最近ではジンベエザメと遊泳を楽しむダイビングツアーなどが好評で、水族館でも人気の高い生き物のひとつとなっています。
ここでは、そんなジンベエザメの生態や特徴、寿命について詳しくまとめてみました。
ジンベエザメはまだまだ謎が多い生き物なのですが、現在のところ分かっている生態を分かりやすく解説していきますので参考にしていってください。
ジンベエザメとは?
ジンベエザメは「テンジクザメ目ジンベエザメ科」に分類されるサメの一種です。
ジンベエザメという名前の由来は、同種が灰色の身体に水玉模様という見た目をしていて、その姿が着物の「甚平」に似ていることから名付けられました。
ちなみに海外ではジンベエザメの圧倒的な身体の大きさから「Whale shark(クジラのようなサメ)」という英名が付けられています。
実際にジンベエザメは魚類の中でもっとも大きな身体を持つ生き物として知られていて、同種よりも大きな海洋生物はクジラしかいません。
なお、ジンベエザメの平均的な体長は10メートルから12メートルほどで、体重は2000キロ前後です。
人間と比べるとおよそ6〜7倍の大きさの生き物となりますが、性格自体は温厚なので危険性は低いとされています。
そんなジンベエザメの基本的な特徴をいくつかまとめてみました。
ジンベエザメは軟骨漁網に含まれる
ジンベエザメは身体の骨がすべて軟骨で出来ている「軟骨漁網」の一種です
これは原始的な魚の特徴のひとつと言えます。
なお、イワシやアジといった一般的によく食べられている魚は身体が硬い骨で構成される「硬骨魚網」に分けられます。
大きな口と大量の歯
ジンベエザメはとても大きな口を持っています。
その大きさは1.5メートルに達することもあり、さらに口の中には300本以上の歯が並んでいます。
ただし、ジンベエザメは食事のときに歯で咀嚼するしぐさを見せません。
基本的には大きな口を開けて、海水ごとエサを丸飲みするのがジンベエザメの食事スタイルです。
ジンベエザメは「卵胎生」
ジンベエザメは数年に1回しか子供を産みません。
そのため、ほかの魚類よりも繁殖力が低い生き物とされていますが、1回の出産では200~300匹ほどの稚魚が誕生します。
なお、ジンベエザメはメスが胎内で卵を孵化させ、ある程度の大きさになった段階で出産をおこなう「卵胎生」の生き物です。
ジンベエザメの赤ちゃんは体長50~60センチほどの大きさで生まれ、そこから10メートル以上の身体に成長していきます。
絶滅危惧種に指定されている
ジンベエザメは絶滅危惧種に指定されている生き物です。
個体数が減っている原因には「乱獲」「海洋汚染」といったものが挙げられますが、特に海を漂う海洋プラスチックゴミがジンベエザメの健康に悪影響を及ぼしています。
ちなみに海の中にはジンベエザメの天敵となる生き物がほとんどいません。
唯一、ジンベエザメよりも重い身体を持つシャチだけが同種の天敵として認められています。
産まれたばかりのジンベエザメの幼体がシャチに食べられてしまうこともありますが、これは食物連鎖の範疇と言えるでしょう。
ジンベエザメの生態・特徴
ここからはより詳しいジンベエザメの生態や特徴をご紹介していきます。
大きさ
先ほども少し触れましたが、ジンベエザメの大きさは平均して10メートル~12メートルほどです。
ただし、過去には体長18.8メートルのメスが観測されていて、そのほか体長20メートルを超す個体についても発見の報告があります。
重さにすると35トンとなりますが、これは天敵とされるシャチよりも圧倒的に大きなサイズと重量です。
生息地
ジンベエザメは熱帯から温帯の海域に生息する生き物です。
緯度±30度よりも内側の海域であればどこでも生息している可能性があり、日本近海でもジンベエザメは観測されています。
なお、ジンベエザメは浅瀬を回遊することが多い生き物ですが、水深700メートルくらいまでは潜水できる能力を持っています。
ちなみにジンベエザメのメスは生まれ育った海域に定着する傾向があり、世界中を回遊するのはオスの特性と考えられているようです。
食性
ジンベエザメは雑食性の生き物です。
過去には肉食性の生き物と考えられていましたが、最近の研究では海藻などの藻類を積極的に食べることから雑食性として扱われるようになっています。
そんなジンベエザメが主に捕食しているのはオキアミなどの動物プランクトンやホンダワラなどの藻類です。
海水と一緒にプランクトンや藻類を丸飲みするのがジンベエザメの食事方法で、丸飲みした後はエラの奥にある「鰓耙(さいは)」という櫛のような器官で海水とエサを分けます。
分けられた海水はエラから排水されるのですが、こうした器用なエサの摂り方をするところもジンベエザメの特徴と言えるでしょう。
しかし、そんなジンベエザメでも海洋プラスチックゴミとエサを判別する能力は持ち合わせていません。
誤って食べてしまった海洋プラスチックゴミが原因で健康を損ねたり、命を落としたりする個体もいます。
こうしたことが原因となり、ジンベエザメはその数を急激に減らし続けているわけです。
性格
ジンベエザメはおとなしく温厚な性格をしています。
また、その身体に似合わず臆病な部分もあり、海の中で他の大型生物を捕食するような行動には出ません。
ちなみにこれは人間に対しても同じです。
ジンベエザメの近くに寄っても人間をあえて襲うようなことがないので、ダイビングなどのツアーでも人気の生き物として扱われるようになっています。
ただし、ジンベエザメ側に襲う意識がなくても、その巨大な身体にぶつかればケガをする可能性があることは理解しておきましょう。
呼吸について
ジンベエザメは魚類なので「エラ呼吸」によって酸素を取り込んでいます。
サメやエイなどの仲間には「噴水孔」と呼ばれる器官があり、そこで水を取り込み呼吸することが一般的です。
しかし、ジンベエザメはこの噴水孔がほとんど機能していないので、口から入った海水をエラに通すことで呼吸をしています。
そのため、ジンベエザメは常に泳ぎ続けていないと生きていられないという生態になっているわけです。
ジンベエザメの寿命
ジンベエザメの寿命は60年から70年くらいと言われています。
しかし、中には「150年ほど生きられる」という説を唱える研究者もいるようです。
実際には50年ほど生きた個体が観測されていて、そこから60年~70年程度は生きられると考えられていますが正確な実態は分かっていません。
まとめ
魚類の中でもっとも大きな身体を持つジンベエザメの生態や特徴をご紹介してきました。
ジンベエザメにはまだ解明されていない部分が多いものの、分かっている生態だけを見ても面白い特徴を持つ魚であることが理解できたと思います。
ジンベエザメが飼育されている国内の水族館は少ないのですが、目の前で見るとその迫力に圧倒されると思いますので、ぜひ一度生のジンベエザメをご覧になってみてください。