この記事では「太平洋ゴミベルト」に関する様々な情報をご紹介していきます。
太平洋ゴミベルトとは、海洋ゴミが集まる特定の海域を指す言葉です。
陸から海へと流れ出たゴミは、潮の流れなどによって同じような場所に留まります。
そうした海洋ゴミが集積するエリアの中でもっとも大規模なものが「太平洋ゴミベルト」です。
ここでは太平洋ゴミベルトの場所や原因、自分たちにできる対策などを詳しくまとめました。
太平洋ゴミベルトの問題を知ることは「SDGs」の目標のひとつである「海の豊かさを守ろう」を達成することに繋がります。
少しでも地球環境や海洋問題に興味がある方は、ぜひこちらの内容をご覧になっていってください。
太平洋ゴミベルトとは?場所は?
太平洋ゴミベルトとは、ハワイ諸島から北アメリカ大陸の間に形成される「ゴミの集積エリア」のことです。
太平洋ゴミベルトの広さは「およそ160万キロ平方メートル」とされていますが、これは日本の国土の4倍以上にあたる面積です。
日本4つ分の広さの中にゴミがひしめき合っていることを想像してもらえれば、そのゴミの多さが理解できると思います。
なお、太平洋ゴミベルトに集まってくるゴミの90%以上は「プラスチックごみ」です。
海洋プラスチックごみ問題は近年とても注目されていて、四方を海で囲まれた日本にとっても重要な問題として考えられています。
ちなみに日本はプラスチックごみの排出量が世界の中でも多く、ひとり当たりのプラスチックごみ廃棄量はアメリカに次いで2位です。(2018年UNEP発表データに基づく)
国単位でのプラスチックごみ排出量と海洋プラスチックごみの排出量は同義ではないものの、それだけ日本はプラスチックごみが多い国であることを理解しておかなければなりません。
太平洋ゴミベルトの原因
太平洋ゴミベルトが形成されるもっとも大きな原因は「プラスチックごみ」の存在です。
1950年ごろから作られ始めたプラスチックは安くて丈夫ということもあり、瞬く間に世界中で大量生産されるようになりました。
また、プラスチックは鉄やガラスなどよりも軽量なので、運搬にかかるコストが削減されるといった特徴もあります。
このように安価で大量生産が可能、さらに世界中へ輸出・輸入しやすいという理由によってこれまでに膨大な量のプラスチック製品が作られてきました。
しかし、プラスチックごみは自然に分解されることがありません。
海に流れ着いた紙ごみは長くても1ヶ月ほどで自然分解されますが、プラスチックの自然分解には500年~1000年という途方もない時間が必要となります。
こうしたプラスチックの性質が太平洋ゴミベルトの原因となっているわけです。
誰でも分かる「太平洋ゴミベルトとプラスチックごみの関係」
1.世界中でプラスチック製品が作られるようになる
2.プラスチックごみが増える
3.当初はプラスチックごみを燃やして廃棄していた
4.しかしプラスチックを燃やすと有害物質が発生し温暖化の原因にもなる
5.世界的にプラスチックごみはリサイクルする流れになる(※ただし不法に捨てられるプラごみも増える)
6.中国はリサイクルのために世界各国から廃プラスチックを輸入していた
7.廃プラスチックの中には汚染物質や危険物質が混入するものもあり、2018年に中国が輸入をやめる
8.これまで中国に頼ってきた国々がプラスチックごみの処理に困るようになる(特に東南アジア諸国)
9.さらに2021年改正・施行されたバーゼル法によって輸出できるプラスチックごみが制限されるようになった
10.現在は自国のプラスチックごみは自国で処理・リサイクルする流れになっている
11.なお、こうした歴史の中で正しく処理されなかったプラスチックごみが海へと流れ出て太平洋ゴミベルトを形成している
上記はプラスチック誕生から太平洋ゴミベルトが形成されるまでの歴史を簡単にまとめたものです。
分かりやすく言えば「最初は燃やせば良いと思っていたものの、プラスチックを燃やすと人体や地球環境に有害な物質が発生することが分かった」⇒「なるべくリサイクルするように努めるが、プラスチックの生産量やリサイクル能力は国ごとに異なるため不法に処理するところも増える」⇒「結果として今のような太平洋ゴミベルトが出来上がってしまった」という流れになっています。
先ほども紹介したように太平洋ゴミベルトを形成するゴミのおよそ9割はプラスチックごみです。
つまりプラスチックごみが今後どう扱われるかによって太平洋ゴミベルトの在り方も変わってくるということになります。
太平洋ゴミベルトの影響
ここからは太平洋ゴミベルトの影響について解説していきます。
太平洋ゴミベルトが形成されることで海の生き物や私たち人間にどういった影響があるのかをご覧になっていってください。
海洋生物の誤飲による生態系の乱れ
クラゲなどの海洋生物は、海に流された細かいプラスチックごみを動物プランクトンと間違えて食べてしまいます。
そのクラゲを普段から食べている捕食者は間接的にプラスチックを体内に摂り込むことになり、段々と生物濃縮が広がっていってしまいます。
また、中には海を漂うビニール袋をクラゲと間違えて誤飲する生き物も少なくありません。
実際に太平洋ゴミベルト内の海域で見つかったウミガメの中には、胃の中身がほとんどプラスチックごみだったという個体がいるほどです。
そのほか別の海域で見つかったクジラの死骸からは100キロ以上のプラスチックごみが出てきた事例もあります。
このようにプラスチックごみを大量に摂取した生き物が命を落とし、生態系が乱れることは太平洋ゴミベルトの弊害と言えるでしょう。
捨てられた漁網や釣り糸が海洋生物を傷つけるリスク
海に捨てられたゴミの中には漁網や釣り糸といったものもあります。
こうした漁網や釣り糸に身体が絡まり、上手く泳げなくなって命を落とす生き物も少なくありません。
また、生き物の中には身体の一部が傷つくだけでも生命を脅かされる種が存在します。
太平洋ゴミベルトを形成する約9割のゴミがプラスチックごみだと説明しましたが、残りの割合で多いものは「漁網や釣り糸」といった船舶から出るゴミです。
太平洋ゴミベルトに漂うゴミの量は尋常ではありません。
仮に構成要素のたった1割だとしても海に捨てられている漁網や釣り糸の量は計り知れないものがありますので、漁師や釣り人たちは相応の責任を感じなくてはなりません。
太平洋ゴミベルトの対策
それでは最後に太平洋ゴミベルトの対策をご紹介していきましょう。
個人で出来るものとしては「なるべくプラスチック製品を使わない」または「プラスチック製品を選ばない」といった対策が挙げられます。
最近は「エシカル消費(=論理的な消費活動)」という言葉のもとに、消費者が企業や会社を選択する時代になってきました。
「脱プラスチック」に力を入れている企業の商品を買い、逆にプラスチックが使われている商品を購入しなければ、段々とプラスチックの全量が減っていきます。
これはリサイクルに関連した「3R」のひとつ「リデュース(=余分なものを作らない)」に繋がる部分です。
ひとりひとりが脱プラスチックの意識を強めれば、次第に海へと流れ出るプラスチックごみの量が減り、太平洋ゴミベルトの問題も少しは解消されていきます。
また、仮にプラスチック製品を購入する場合でも「リユース(=繰り返し使うこと)」や「リサイクル(=別の製品へ変えるための資源とする)」を心掛けることで海の姿が変わっていきます。
まとめ
太平洋ゴミベルトの原因や影響、自分たちで出来る対策について解説してきました。
ご覧いただいたように太平洋ゴミベルトの問題はとても深刻です。
2050年には海の生き物よりゴミの数の方が多くなると言われていますが、このままでは現実となる可能性が高いと思います。
未来の海を守るためには個人個人の意識を変えることが重要となってきますので、ぜひ日頃から「できるだけプラスチック製品を買わないようにする」「プラスチックごみを正しく分別する」といったことを心掛けてみてください。