この記事ではカラフルな色合いや独特な身体を持つ「ウミウシ」に関する情報をご紹介していきます。
軟体動物に分類されるウミウシは、簡単に言えば「貝殻を持たない巻貝のような生き物」です。
ウミウシには様々な種類やグループがあり、その総称として「ウミウシ」という言葉が使われています。
また、ウミウシはその見た目から「海のナメクジ」とも呼ばれていますが、ここではそんなウミウシの特徴や生態を分かりやすくまとめました。
「ウミウシにはどんな種類が存在するのか?」「ウミウシはどうやって生活するのか?」などの疑問を解消していきますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
海のナメクジ「ウミウシ」とは?
ウミウシは「軟体動物門の腹足綱」に分類される生き物です。
具体的には「後鰓類(こうさいるい)」と呼ばれる生物グループに属するのですが、大きくまとめると「進化の過程で貝殻を捨てた軟体動物」を全体的にウミウシと呼びます。
ただし、ウミウシの生物学的な位置づけは曖昧で、上記以外の分け方でカテゴライズすることも少なくありません。
近年の研究では後鰓類の下に「頭楯類」「裸殻翼足類」などのグループを作り、その種類を細分化することもあります。
なお、後鰓類は「巻貝の仲間」と考えられていますが、裸殻翼足類も含めれば「クリオネ」も仲間の一種となります。
ちなみにウミウシは漢字で「海牛」と書くものの、本来「海牛」とはマナティーやジュゴンなどの海洋哺乳類を指す言葉です。
英語圏では「Sea slug=海のナメクジ」と書きますので、こちらの方が正しい表現と言えるかもしれません。
ウミウシの種類
様々な分類やグループ分けがされるウミウシですが、ここでは代表的なウミウシの種類を簡単にご紹介していきます。
有名なウミウシや日本近海に生息するウミウシなどをまとめましたので、ぜひ参考にしていってください。
ミスジアオイロウミウシ
ウミウシの中で特に有名な種類がこちらの「ミスジアオイロウミウシ」です。
日本では本州から九州地方の沿岸部で見かけられるポピュラーな種類で、世界で考えてもオーストラリア・シンガポール・パプアニューギニアなど数多くの国で観測されています。
なお、本種の特徴は「水色の身体」「黒い縦線の模様」「橙色・黄色の触角」を持つところです。
一般的には「ウミウシと言えばコレ」というほどメジャーなウミウシとなります。(体長は5cm程度)
シロウミウシ
太平洋側・日本海側の両方でよく観測されるのが「シロウミウシ」です。
名前の通り「白い体色」をしていて、身体を縁取るような黄色のラインと黒い斑点模様を持つところが大きな特徴となります。
ちなみに日本以外では台湾や香港の近海で見かけられる種類です。
シラライロウミウシ
「シロウミウシ」と似ているものの、体色がやや半透明で斑点模様が赤紫色をしているのが「シラライロウミウシ」です。
なお、身体に沿って黄色いラインが入っているところはシロウミウシと同じです。
シララとは紀伊半島の「白良」から命名されていて、同地方ではよく見かけるウミウシとして知られています。
サラサウミウシ
静岡の伊豆半島あたりでよく見かけるものがこちらの「サラサウミウシ」です。
白い体表に赤い網目模様が入っていて、触角も同じような色合いをしています。
なお、模様に関しては個体ごとに差があり、網目模様ではなく目玉のような模様が入っているものも存在します。
サメジマオトメウミウシ
「サメジマオトメウミウシ」は体長が1㎝~1.5cmとやや小さく、青と白の縦縞模様が特徴的なウミウシです。
身体の外側部分は橙色で、触角は黄色と赤を足したような色をしています。
日本だけでなくインド洋や西太平洋でも観測される種類で、ミスジアオイロウミウシを少し小さくしたような形のウミウシとなります。
アオミノウミウシ
ウミウシには色々な体型に進化した多種多様な種類が存在します。
その中でも特に珍しい身体をしているのが「アオミノウミウシ」です。
こちらは「ウミツバメ」とも呼ばれる種類で、その姿から「青い竜」と称されることもあります。
身体から伸びる四肢のような鰭、さらにそこから伸びる小さい鰭が「竜」を連想させる不思議なウミウシです。
ちなみに「アオミノウミウシ」は猛毒を持つカツオノエボシやギンカクラゲなどを捕食し、その毒を自分のものとする能力を持っています。
そのため、見かけたとしても素手で触れるのは非常に危険です。
ウミウシの特徴・生態
ここからはウミウシの特徴や生態をより詳しくご紹介していきます。
身体の特徴
一般的に「青っぽい色をしたナメクジのような生き物=ウミウシ」と思われがちですが、中には半透明や白色をしたウミウシもいます。
そのほか緑・黄色・ピンクなど、色のバリエーションは実に多種多様です。
また、ウミウシは貝殻を持たない巻貝の仲間と伝えましたが、中には貝殻を持っていたころの名残がいまだにある種類も存在します。
※ほとんどの種類は大きさが1cm~5cmくらい。
生息地
ウミウシは暖かい海を好む生き物なので、温帯・熱帯の海域でよく見かけられます。
ただし、種類によっては冷たい海域で生活できるものも存在し、日本では北海道でもウミウシを観測することが可能です。
食性
ウミウシの食性は種類によって異なります。
つまり「草食性」のウミウシもいれば「肉食性」のウミウシもいるということです。
ちなみにウミウシと似た生き物である「アメフラシ」は完全に草食性で、肉食性のウミウシとは生態が全く異なるものとして考えられています。
(肉食性のウミウシは主に小型のエビなどを捕食する)
繁殖
ウミウシは「雌雄同体」の生き物です。
しかし、繁殖に関しては別個体同士で交尾をおこない子供を産みます。
生まれたばかりの幼体には殻が付いていますが、成長と共に殻がなくなり成体の姿へと変化していきます。
毒性
ウミウシには毒を持つ種類も存在します。
そのため、無闇に触れることは非常に危険です。
また、本来は毒を持たないウミウシでも毒性のある生き物を捕食し、その毒性を体内に溜め込んでいるケースがあります。
こうしたことからウミウシは食用として扱われることがなく、食材として出回ることもないわけです。
なお、一部のウミウシは捕食した相手から毒性を引き継ぐことで、自分が襲われたときの防御方法として同じ毒を活用することができます。
ウミウシの飼育は難しい?
ウミウシを捕まえることは簡単ですが、自宅で飼育するのは難しいとされています。
その理由のひとつが「エサを用意するのが困難」という点です。
ウミウシは種類ごとに食べるものが異なる生き物で、中には海底の有機物を主食とするものも存在します。
こうした野生下のエサを探して継続的に与えることが難しいため、自宅での飼育には向かないと言われているわけです。
まとめ
多種多様な進化を遂げ、色々な姿や色合いを持つようになった「ウミウシ」について解説してきました。
「海のナメクジ」と呼ばれるウミウシにはたくさんの種類が存在します。
見た目が似ているものもあれば全く異なる姿をしているものも存在するのがウミウシの特徴です。
最近ではそんなウミウシの姿に癒される方も増えているようですが、自宅で飼育する際には「何を食べる種類なのか?」という点を事前にしっかりと確認しておきましょう。