この記事では「ハマグリ」の特徴や生態をご紹介していきます。
ハマグリは昔から食用の貝として親しまれている二枚貝の一種です。
かつては潮干狩りをしているとよく見かける貝でしたが、最近は天然ハマグリの数がとても少なくなっています。
ちなみに日本固有種としてのハマグリは絶滅危惧種に指定されるほど激減していて、今では貴重な存在になってしまいました。
そんなハマグリの生息地や食性、寿命や産卵方法などを詳しく解説していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
また、合わせてハマグリの種類や美味しい食べ方もご覧いただけます。
ハマグリとは?
ハマグリは「二枚貝綱マルスダレガイ科ハマグリ属」に分類される二枚貝です。
日本では古来より食用の貝として扱われていて、俳句では春を表す季語のひとつとなっています。
ハマグリは二枚の貝殻がぴったりと重なり合うところが大きな特徴です。
こうした特徴から「良縁」を意味する貝となり、今でも結婚式の定番料理として振る舞われています。
(同じように重なり合う貝殻が他にないため、これから一生を共にする夫婦にとって縁起が良いものとされる)
ハマグリは殻の高さがだいたい6cm前後、殻の大きさが8〜9cmくらいまで成長する貝です。
日本の固有種となるハマグリは、近年よく流通しているチョウセンハマグリやシナハマグリより背中側が真っ直ぐな形をしています。
なお、日本においては縄文時代からすでにハマグリを食用とする文化があったとされ、実際に東京都の貝塚からはハマグリの貝殻が大量に出土した事例もあるそうです。
しかし、そんな日本固有種のハマグリもここ数十年の間で大きく数を減らすこととなっています。
現在は絶滅の恐れがある生物として「絶滅危惧2類」に指定され、各地でハマグリの保全や養殖活動がおこなわれています。
名前の由来は?
ハマグリは「砂浜にある栗」という理由から現在の名前が付けられました。
しかし「クリ」を「石」と捉え、砂浜の地中にある石という意味からハマグリと名付けた説もあるようです。
産地は?
ハマグリの産地として有名なのは熊本県、大分県、三重県です。
特に熊本県はハマグリの生産量や漁獲量が多い県として知られています。
そのほか茨城県もハマグリの水揚げが多い県とされていますが、同県の鹿島灘で獲れるのは主にチョウセンハマグリです。
隣の千葉県・九十九里浜でもハマグリをブランド化して売り出していますが、こちらもチョウセンハマグリのシェアが多めとなっています。
なお、現在のところ「本ハマグリ」とも呼ばれる日本固有種のハマグリがよく獲れるのは前述の熊本県や三重県です。
潮干狩りで獲れる時期は?
潮干狩りでハマグリが獲れる時期は一般的に3月〜6月ごろとされています。
ただし、海岸によっては8月の終わりや9月の初めごろまでハマグリが獲れるところもあります。
ハマグリの種類
日本で流通しているハマグリの種類は3つです。
基本的にはどれもハマグリという名称で売られていますが、種類によって大きさや味が変わってきます。
ここでは、それぞれのハマグリの特徴や市場価値などを簡単にまとめたので参考にしてみてください。
ハマグリ
別名「本ハマグリ」とも呼ばれる日本固有の種類です。
こちらは内湾性のハマグリであり、かつては潮干狩りでよく獲れていた種類となります。
今ではあまり考えられませんが、東京湾でも8,000トンほど水揚げされていました。
ハマグリは水質の変化に弱い種類なので、汚染された海では生きていけません。
埋め立てや工業排水などの影響によって、全国各地に生息していたハマグリはその数を減らしてきています。
チョウセンハマグリ
現在、市場に出回っている主なハマグリはこちらの「チョウセンハマグリ」です。
チョウセンハマグリは外洋性という特徴を持ち、本ハマグリよりも生命力が強い種類と考えられています。
ちなみに名前の「チョウセン」は「朝鮮」ではなく「汀線」と書きます。
チョウセンハマグリも日本の在来種となりますが、本ハマグリと比べると味が劣るという理由から以前は市場価値がそれほど高くありませんでした。
しかし、本ハマグリの数が減ってきたことにより、その価値が見直されています。
シナハマグリ
シナハマグリは中国原産の種類であり、輸入品のハマグリとして広く流通しています。
また、最近は日本で養殖したシナハマグリも出回っていますので、目にする機会は多いと思います。
そんなシナハマグリの特徴はスーパーなどで安く買えるところです。
国産ハマグリよりも安価なので、物価高の現在では重宝する存在と言えるかもしれません。
ハマグリの特徴・生態
ここからはハマグリの生息地・食性・寿命・産卵方法といった主な生態をご紹介していきます。
生息地
ハマグリの生息域は幅広く、日本においては北海道南部〜九州地方にかけて分布しています。
その中でもハマグリの生息地としてよく知られているのは玄界灘や瀬戸内海、伊勢湾といったエリアです。
国外で考えると中国や朝鮮半島、台湾の近海が主な生息地となっています。
(海外で見かけるのはシナハマグリ、またはチョウセンハマグリであることが多い)
そんなハマグリは水深およそ20mまでの浅瀬を好む生き物です。
泥や砂に覆われた海底に隠れてひっそりと生活を送っています。
食性
ハマグリは「草食性」かつ「デトリタス食性」の生き物です。
基本的には海中に漂う植物プランクトンをエサとしていますが、海底に落ちてくるほかの生き物の死骸や排泄物(デトリタス)なども食べます。
ちなみにハマグリの食事方法は海水ごとエサを取り込んで、体内のエラでプランクトンなどを濾し取るというスタイルです。
この際に砂なども取り込んでしまうため、ほかの貝と同様に砂抜きが必要となります。
寿命
ハマグリの寿命はだいたい7〜8年です。
殻の大きさは1年ごとに1〜2cm程度大きくなり、最大では8〜9cmまで成長します。
なお、海水温11℃以下の環境だと成長スピードが極端に遅くなるため、日本の場合だと西側で獲れるハマグリの方が大きくなりやすい傾向にあるようです。
(種類によって大きさは異なる)
産卵
ハマグリが産卵するのは7月〜9月の時期です。
オスとメスのハマグリがそれぞれ放精と放卵をおこない、海中で受精がおこなわれます。
ちなみに海水温が25℃の場合では、受精から1日程度で孵化するようです。
こうした生態を利用して、養殖場では人工的にハマグリの放精・放卵を促しています。
ハマグリの美味しい食べ方
ハマグリの美味しい食べ方として有名なのはやはり焼きハマグリです。
殻付きのハマグリを加熱して、殻が開いたところに好みの出汁醤油をかけて食べるというのが一般的な楽しみ方と言えます。
また、ハマグリからは良いダシが出るので、潮汁のように吸い物の具材に使うのも人気があります。
そのほかハマグリご飯やハマグリ鍋、酒蒸しといった食べ方もおすすめです。
まとめ
かつては潮干狩りでよく獲れていた「ハマグリ」の特徴や生態をご紹介してきました。
現在、日本のハマグリは絶滅危惧種に指定されるほど数を減らしています。
数が減った主な原因はやはり海岸の埋め立てや海洋汚染です。
今後、日本の海岸からハマグリの姿が消えないよう、近くの海の保全活動に興味を持っていきましょう。