この記事では普段の食卓でも見かける機会が多い「タコ」の生態や特徴について解説していきます。
タコとは頭足類に分類される軟体動物の総称です。
タコの身体の構造は同じ海の生物である魚類や哺乳類とまったく異なり、独自の進化を遂げています。
特に不思議なのは大きな胴体に8本の足(腕)、3つの心臓に9つの脳を持っているところです。
また、最近の研究では「タコには知性がある」ということが分かっていて、これまでに道具を使うタコの存在が確認されています。
ここでは、そんなタコの身体の仕組みや知能、生息地や寿命に関する情報を分かりやすくまとめました。
日本人からすると身近な存在であるタコですが、その少し不思議な生態をぜひご覧になっていってください。
そもそもタコとは?
それではまず、タコの基本的な情報から見ていきましょう。
タコは生物学上「頭足綱八腕形上目タコ目」に分類される軟体動物です。
タコと言えばやはり胴体から伸びた8本の足が印象的ですが、実はその足は胴体ではなく頭から伸びています。
つまり頭のように見える大きく膨らんだ部分が胴体で、胴体と足の間に頭があるといったイメージです。
こうした身体の構造からタコは「頭足類」と呼ばれています。
ちなみにタコの足は動物学的に見て「足」として認められていますが、その役割や機能性から考えると「腕」と捉えられることもあります。
実際に英語圏ではタコの足を「Arm(腕)」と表現するので、このあたりは人によって呼び方が変わる部分と言えるでしょう。
そんなタコの主食は二枚貝を中心とした貝類、小さなエビやカニといった甲殻類です。
ただし、大型のタコであれば魚類を捕食することも珍しくなく、過去には小型のサメを捕食するタコも観測されています。
なお、一般的にはあまり危険なイメージがないタコですが、種類によってはヒョウモンダコのように強い毒性を持つものも存在するので無闇に触らないようにしましょう。
タコの種類
タコには大きく分けて「マダコ亜目」「ヒゲダコ亜目」の2種類が存在します。
ちなみに現在のところタコの種類は300を超えると言われていますが、その大半は正確な分類がされていません。
それだけ未解明な部分が多い生物とも言えますが、ここでは主なタコの種類をまとめてみましたのでご覧ください。
【主なタコの種類】
・マダコ科:マダコ・イイダコ・ミズダコなど
・クラゲダコ科:クラゲダコなど
・アオイガイ科:カイダコなど
・ムラサキダコ科:ムラサキダコなど
・アミダコ科:アミダコのみ
このようにタコには様々な種類が存在しますが、私たちがよく見かけるのは「マダコ科」に分類されるタコです。
スーパーで売られているのは基本的にマダコで、そのほかにはイイダコやミズダコが食用として扱われています。
ちなみにミズダコは世界最大のタコと考えられていて、足を広げたときの大きさは最長9メートル以上です。(マダコの大きさは体長60~70センチほど)
体重も数十キロほどまで増えるため、地方によっては「オオダコ」と呼ばれることもあります。
タコの生態・特徴
ここからはタコの生態や特徴について詳しく見ていきましょう。
タコの身体はどうなっているのか?タコはどれくらい頭が良い生き物なのか?といった疑問を解消していきますので、ぜひご覧になっていってください。
生息地
タコが生息しているのは岩礁地帯や砂地、泥地といった場所です。
マダコの場合は水深およそ40メートルまでの浅い海底によく潜んでいますが、そのほかの種類では水深1000メートル以深の深海に生息しているものも確認されています。
なお、深海にはジュウモンジダコやコウモリダコ、メンダコといった独特な進化を遂げてきたタコの仲間たちがたくさん生息していますが、その生態については詳しい部分が分かっていません。(中にはクラゲのように透明な身体をしたタコも発見されている)
マダコ科に属する一般的なタコは温かい海域を好むことが多く、東南アジアやオーストラリア近海、大西洋など世界中のあらゆるところに生息しています。
そのため、日本以外でもタコは食用として扱われていますが、宗教的な理由でタコを食べない国も少なくありません。
ちなみに日本のスーパーに流通している食用タコの6~7割はアフリカ産のタコです。
特にモロッコ産とモーリタニア産のタコがその大部分を占めているので、今度スーパーに寄った際は原産国を確認してみてください。
体の仕組み・構造
タコの身体は実に不思議な仕組み・構造をしています。
特に「8本の足」「3つの心臓」「9つの脳」を持っているところがタコ独自の特徴と言えますが、それぞれの役割や仕組みを詳しく解説していきましょう。
〇8本の足について
皆さんご存知のようにタコには8本の足があります。
そんなタコの足には吸盤が付いているわけですが、タコは吸盤を使って大抵のものにくっ付くことが可能です。
また、タコの足は切られたとしても1時間ほどは動くことができます。
しかし、切られた足の吸盤は元の身体にくっ付くことがありません。
この仕組みについては未だ解明されていませんが、おそらく自分の身体に自身の吸盤がくっ付いて普段の活動を邪魔しないために本能的な部分でプログラミングされているものと考えられます。
なお、タコの足は非常に筋肉質であり、その筋力によって吸盤を収縮させているそうです。
〇3つの心臓について
タコには3つの心臓があります。
普通の生き物はひとつの心臓だけで全身に血液や酸素を供給できますが、タコの場合はメインの心臓以外に「エラ心臓」と呼ばれる2つの心臓を使って血液や酸素を全身に送ります。
なぜ2つのエラ心臓が必要なのか?という疑問もありますが、これは筋肉質な足に大量の血液や酸素を送るためです。
つまり、タコは進化の過程で8本の足を機敏に動かすために2つの「足用の心臓」を持つようになったということです。
〇9つの脳について
タコには頭部にひとつ、各足にひとつずつ脳があります。
脳があるのは足の付け根とされていますが、それぞれが独立した指示系統を持っているため複雑な動きが可能となっているようです。
また、最新の研究によると脳が付いているタコの足はそれだけで味覚を感じられる可能性があると考えられています。
つまり何かしらの物体にタコの足が触れたとき、その感覚と味覚で「食べられるものか食べられないものか」を判断しているということです。
こうした身体構造を持つ生き物は非常に珍しく、極めて稀な存在と言えます。
知能
9つの脳を持つタコには「人間と同じような知能がある」という研究が進んでいます。
タコは犬や猫のように「楽しい」「苦しい」といった感覚を持っていると考えられていて、研究者の中にはタコのことを「もっとも賢い無脊椎動物」と表現する人がいるほどです。
実際にタコのニューロン(脳の神経細胞)を調べるとその数は5億個近くあるわけですが、これは3歳児や一般的な犬と同じくらいの数となります。
また、タコの中には「自己防衛のために貝殻を持ち運ぶもの」「ビンの蓋を開けられるもの」なども存在します。
道具を使う無脊椎動物はタコくらいとされていますので、それだけでも高い知能を持っていることが分かるはずです。
寿命
タコのメスは一生のうちに1回しか産卵しません。
これは産卵後に身体が衰弱してそのまま息を引き取ってしまうからです。
また、タコのオスも繁殖活動後にすぐ亡くなってしまいます。
そのため、タコの正確な寿命というのは分かっていませんが、だいたい2年くらいがタコの寿命ではないかと考えられています。
まとめ
とても特殊な生態や身体の構造を持つ「タコ」について詳しくご紹介してきました。
ご覧いただいたようにタコは「8本の足」「3つの心臓」「9つの脳」を持つ生き物です。
こうした身体的な特徴を活かしてエサを捕まえ、外敵から身を守って生活を送っています。
また、タコの仲間には深海に生息するものもたくさんいますので、水族館などに出掛けたときにはぜひレアなタコがいないかどうかチェックしてみてください。