この記事では海の中での最強生物とも称される「シャチ」について詳しい情報をご紹介していきます。
シャチは非常に高い知能と独自の社会性を持つ海洋性哺乳類です。
数頭から数十頭の群れでコミュニティーを形成し、人間と同じように家族を認識できる能力が備わっています。
ここでは、そんなシャチの生態や特徴などを詳しくまとめました。
水族館でも人気の「シャチ」に対して興味を持っている方は、ぜひこちらの内容をご覧になっていってください。
そもそもシャチとは?
それでは最初に「そもそもシャチとはどんな生物なのか?」を見ていきましょう。
シャチは「哺乳綱鯨偶蹄目マイルカ科シャチ属」に分類される海洋性の哺乳類です。
シャチ属に分類される生き物はシャチしかいませんので、それだけ特殊な存在であることが分かります。
ちなみに日本では古来より「サカマタ(逆叉)」といった別名も使われていましたが、現在では「シャチ」と呼ぶことが一般的です。
そんなシャチは自身の体長より遥かに大きいシロナガスクジラなども捕食の対象としています。
一頭のクジラを群れで囲み仕留めるといった行動から、シャチは他の個体とコミュニケーションが取れる生物であることが分かっています。
なお、これまでに観測されたシャチの中でもっとも大きい個体の体長は「9.8m」です。
体長は10トンを超えるとも言われていますので、いかに大きな生物かが分かると思います。
このように海の中でもひときわ大きな身体を持つシャチには「3つのタイプ」が存在しているとのことです。(研究グループによっては4タイプという説もある)
〇タイプA
もっとも一般的なシャチで、映像でよく見るシャチはこのタイプに分類されることが多いとされています。
なお、見分け方のひとつとしてアイパッチ(目の周りの白い部分)の大きさが挙げられますが、中間的な大きさのシャチはタイプAです。
クロミンククジラなどを主食とするタイプで沖合に生息している割合が高いようです。
〇タイプB
タイプAより若干小さいタイプで、ミンククジラ以外にもペンギンやアザラシなどを主食としています。
アイパッチがタイプAよりも大きく、身体の白い部分が黄色掛かっているものはタイプBに分類されるようです。
また、タイプAとは異なり流氷が存在する海域に生息し、沖合よりも沿岸部で暮らすケースが多いというのもタイプBの特徴と言われています。
〇タイプC
3つのタイプの中でもっとも小型のシャチ群がタイプCに分類されます。
ちなみに他のタイプと違い魚を主食とするところが大きな特徴です。
また、アイパッチのサイズが極めて小さいという点が別タイプとの見分け方となっています。
こうした3つのタイプとは別にタイプDに該当するシャチもいると考えられていますが、これに関してはいまだ詳しい研究結果が出ていません。
なお、上記で解説した3タイプのシャチ同士で交配することはなく、現在のところそれぞれが別の遺伝子を持っていることが分かっています。
シャチの生態・特徴
それでは次にシャチの生態やさらに詳しい特徴をご紹介していきましょう。
海の食物連鎖の頂点
シャチは海の食物連鎖の頂点に君臨する生物です。
冒頭でも伝えたように自身よりも遥かに大きい「体長25m~30m」ほどのシロナガスクジラを捕食するわけですが、このことから考えても海の中にシャチの天敵は存在しません。
また、シャチのタイプによってはクジラやイルカ以外にもアザラシや魚などを主な食料とする個体もいるようです。
大まかな捕食対象は決まっているものの、シャチは人間と同じように食の好みが個体ごとに分かれているとされています。
さらにシャチは捕食以外の目的で他の生物に危害を加えることがあります。
調査の結果、捕らえたアザラシなどを海面の上に放り投げて相手を痛めつけるという行為が確認されていますが、これが何を目的としているのかは今のところ分かっていません。
知能が高い
シャチは海洋哺乳類の中でも高い知能を持つ生物です。
グループを形成し群れで狩りをすることは他の生物でも見かけられる特徴ですが、シャチの場合は自身から発する2種類の音を使い分けて別の個体とコミュニケーションを取ったり、狩りの対象を見分けたりすることが出来ます。
なお、この2つの音は「コール」と「クリック音」と呼ばれていて、コールは仲間のシャチとの連絡用、クリック音は凝縮した音波を発信するために使われるそうです。
クリック音として発信された音波は対象にぶつかるまで海中を進み、何かにぶつかるとその反響音によって「ぶつかったものとの距離や相手の形」が分かるとされています。
これは「エコーロケーション」と呼ばれる能力で、数ミリ先の小さな対象物の姿形すら正確に捉えるほどです。
そして、エコーロケーションによって知覚された情報はコミュニティーの間で共有され、他のシャチにも伝達されます。
形は違いますが人間と同じようにコミュニケーションを取り生活を営んでいるシャチは、海洋生物の中でも特に頭の良い生き物と言えるでしょう。
ちなみにシャチが仲間と連絡を取る「コール」には家族やコミュニティー単位での「方言」があり、その方言は代々受け継がれていくと考えられています。
社会性がある
シャチは数頭から数十頭単位で群れを形成し、それをひとつのコミュニティーとして様々な行動をします。
この団体では社会性が築き上げられていて、人間と同じように子供を守りながら狩りをする、食料を分け与えるといった行動が観測されています。
また、母親のシャチが狩りに出ている間、別個体の若いメスシャチがその子供を守るといった動きも取るようです。
こうしたことを踏まえると、シャチは人間と同じような形で社会生活を送っていると言えるでしょう。
さらに、過去には生まれてからすぐに亡くなってしまった我が子を海面に押し上げ、呼吸をさせようと3日間も奮闘した母親のシャチの行動が観測されています。
シャチには人間と同じくらいの母性や理性があり、命の意味などを自然と理解しているのかもしれません。
シャチは人間を襲う?
ここまで説明してきた通り、シャチは高い知能を持つ生物です。
そのため、自分に危険があるような行動や無駄な捕食活動はおこないません。
シャチが人間をエサとして認識する機会は少なく、それゆえに分からないものをいきなり食べようとすることはないと考えられますが、シャチは好奇心が旺盛なので人間にじゃれつくことはあり得ます。
しかし、シャチほどの大きさの生物が人間とじゃれ合えば、当然人間はケガをしてしまいます。
なお、海の中でシャチに咬まれてケガをした人はたくさんいますが、シャチが捕食を目的としていた場合はケガどころでは済みません。
これを考えると、シャチに襲われ生還した人のほとんどは「シャチの好奇心によるじゃれ合い」の被害に遭ったと言えそうです。
ただ、前述の通りシャチは情報を共有できる生物なので、仲間が人間によって危害を加えられていた場合には報復行為に遭う可能性もあります。
シャチの寿命
シャチ全体の平均寿命は30歳から50歳です。
オスの平均寿命が30歳、メスの平均寿命が50歳とされていますので、メスの方が長く生きる傾向にあります。
また、特に長く生きる場合はオスで50歳、メスで80歳くらいまで生きる個体もいるようです。
ちなみに過去最高齢のシャチはメスの個体で「105歳」まで生きていました。
こうした寿命の長さというのもシャチと人間の共通点と言えそうです。
まとめ
海の最強生物「シャチ」に関する色々な情報をご紹介してきました。
ご覧いただいた通りシャチは集団で生活をおこない、人間と同じようにコミュニティーを大切にしています。
また、シャチ同士でコミュニケーションが取れるというのも興味深い部分ですが、この先さらに研究が進めばより凄い能力が発見されるかもしれません。