この記事では海中でヒラヒラとした触手を漂わせる「イソギンチャク」についてご紹介していきます。
イソギンチャクはサンゴやクラゲと同じ刺胞動物です。
基本的には岩の上に張り付いて生活をしていますが、自分で移動することも出来ます。
そんなイソギンチャクには非常に多くの種類が存在し、その特徴はまさに千差万別です。
ここでは色々な見た目や特徴を持つイソギンチャクに関する情報をまとめました。
「そもそもイソギンチャクとはどういった生物なのか?」「イソギンチャクを飼育することは可能なのか?」といった部分を詳しく解説していますので、海の生き物に興味がある方はぜひ最後までご覧になっていってください。
イソギンチャクとは?
イソギンチャクとは「刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目」に属する生物の総称です。
生物学上はサンゴやクラゲなども刺胞動物に分類されるので、イソギンチャクは同じ仲間ということになります。
イソギンチャクは無脊椎動物で柔らかい身体を持つ生物です。
多くのイソギンチャクは円筒形の胴体をしていて、上の面に口の役割をする「口盤」があります。
そして、この口盤の周りに並ぶのがイソギンチャク特有の触手です。
ヒラヒラとした見た目のイソギンチャクですが、その無数に伸びる触手によって捕食活動をおこなっています。
また、胴体の下には「足盤」と呼ばれる組織があり、これによって岩場などに定着しています。
ちなみに「同じところにずっといる」といったイメージを持つイソギンチャクですが、この足盤の働きによって実は移動することが可能です。(時速数センチ程度ではあるものの)
さらに中には泳ぐことが出来る種類やヤドカリやカニのハサミに定着して移動する種類も存在します。
なお、イソギンチャクという名前は触手を閉じた状態が「巾着」に似ていることから名付けられました。
英語圏では「Sea Anemone(海のアネモネ)」、ドイツ語では「See Rose(海のバラ)」といったキレイな名前が付けられています。
イソギンチャクの種類
イソギンチャクは世界中の海に生息する海洋生物です。
そのため、たくさんの種類が存在します。
ここでは、そんな多種多様なイソギンチャクの中から代表的な種類をいくつかピックアップしてみました。
サンゴイソギンチャク
相模湾より南側の海に生息するイソギンチャクで、日本では比較的ポピュラーな種類です。
全体的に球体状の見た目をしていますが、これは触手の先端部分が丸く膨らむことに由来しています。
イソギンチャクの中では丈夫な方であり、アクアリウムの一部として飼育することも容易です。
センジュイソギンチャク
センジュイソギンチャクは「クマノミ」と共生できるイソギンチャクとして有名です。
このセンジュイソギンチャクとクマノミからアクアリウムを始める方も少なくありません。
特徴はなんと言っても細長い触手がたくさん伸びているところで、見た目の華やかさといった部分でも人気があります。
日本近海・大西洋・インド洋など、世界中至るところに生息しているイソギンチャクのひとつです。
ウメボシイソギンチャク
潮が引いて触手を閉じた状態が梅干しに似ていることからその名前が付けられたウメボシイソギンチャクは、最大192本もの赤い触手を持ちます。
なお、過去にはこの種のイソギンチャクが70年近く生きたという記録もあり、長命な種類として有名です。
オヨギイソギンチャク
名前の通り自分で泳ぐことが出来るのがオヨギイソギンチャクの特徴です。
普段は藻場に生息する小さなイソギンチャクですが、海草から離れるときには触手を振りかざした勢いで遊泳をおこないます。
シワケイソギンチャク
シワケイソギンチャクは砂や泥といった海底部分に定着する少し特殊な生態を持っています。
イソギンチャクは岩場など硬いところにくっ付くことが一般的ですが、中にはこうした砂の中で生活する種類もいるということです。
(同様に砂の中に埋まっている石や岩に定着するスナイソギンチャクという種類も存在する)
キタフウセンイソギンチャク
イソギンチャクの天敵はヒトデなのですが、そんな天敵から身を守るために特殊な能力を持っているのがこちらのキタフウセンイソギンチャクとなります。
キタフウセンイソギンチャクはヒトデに触れられると身体をクネクネと屈伸させジャンプするようにして逃げます。
その移動スピードは他のイソギンチャクにない特徴と言えるでしょう。
イソギンチャクの特徴
ここからは一般的なイソギンチャクの主な特徴についてご紹介していきます。
単独行動をする
多くのイソギンチャクは単独の個体で生活をおこなっています。
同じ刺胞動物であるサンゴは群体を形成し、クラゲは群れで移動することもありますが、イソギンチャクにはそういった性質がありません。
小型のプランクトン性甲殻類などを食べる
イソギンチャクは触手を使ってエサとなる小型の魚などを捕食します。
触手に触れてマヒ状態となった生物を丸飲みするというのがイソギンチャクの食事方法です。
しかし、リスクを冒さず海に漂う小さいプランクトン性甲殻類をエサとするケースも多いと言われています。
ちなみに捕食されたエサはイソギンチャクの胃腔にて分解・吸収されるのですが、イソギンチャクには肛門にあたる器官がないので口盤から排泄物が出されます。
多種との共生
イソギンチャクは種類によって他種との共生ができる生物です。
有名なものとしてはクマノミとの共生が知られていますが、ヤドカリやカニといった生物に張り付き行動を共にする種類も存在します。
独特な繁殖方法
イソギンチャクは雌雄異体の生物ですが、単独による繁殖が可能な雌雄同体の種類もいます。
雌雄異体のイソギンチャクの場合は体外受精することが一般的です。
なお、単独繁殖をおこなう種類では体内に幼生を生み出し、十分な大きさになると口から吐き出すという過程が取られるようです。
イソギンチャクの毒性について
イソギンチャクの触手には刺胞があり、この刺胞には毒性を持つ針が含まれています。
一般的に刺胞動物は外的刺激を受けると毒針を発射する仕組みとなっていて、イソギンチャクも例外ではありません。
そのため、海岸などで打ち上げられたイソギンチャクを見つけたときには素手で触らないよう注意しましょう。
なお、大半のイソギンチャクの毒は人間に致命的なダメージを負わせるほどではありませんが、中には非常に強い毒を持つイソギンチャクも存在します。
日本でも見かけられるイソギンチャクとしては「スナイソギンチャク」「ハタゴイソギンチャク」あたりが強い毒を持っていますが、この2つよりも危険なのが沖縄近海に生息する「ウンバチイソギンチャク」です。
外見上、ウンバチイソギンチャクは海藻が固まったものにしか見えないので、無意識に触れてしまうこともあります。
しかし、その触手に触れてしまうと強い痛みや腫れを引き起こしてしまうため注意が必要です。
(過去にはウンバチイソギンチャクの毒によって急性腎不全からの死亡例もある)
イソギンチャクは飼育も可能
イソギンチャクは自宅で飼育することも可能です。
水温は一般的な海水魚と同じように24℃~26℃くらいが適温とされています。
ただし、水温が27℃以上になると途端に弱ってしまう種類が多いため、温度調整には気を付けましょう。
また、イソギンチャクは排泄物を出しますので水質を保つためのフィルターが必要です。
そのほか自然環境と同じように水流を与えることも重要となるためポンプも設置してください。
エサに関しては種類によりますが、イソギンチャクの多くは体内に褐虫藻をもっていて光合成によりエネルギーを生み出しています。
そのため、適度な光を与えておけば特にエサをやる必要がありません。
あとは定着するためのライブロックなどを置くことでイソギンチャクのストレスが減ります。
まとめ
不思議な見た目をしているものが多い「イソギンチャク」に関する情報をまとめてきました。
ご覧いただいたようにイソギンチャクは「単独で生活する刺胞動物」であり、「触手に毒がある」といった特徴を持っています。
なお、イソギンチャクを自宅で飼育する際には素手で触れないよう気を付けてください。