佐賀大、海洋温度差発電で沖縄・久米島町などと連携協定 https://t.co/4axRbXCsJ1 pic.twitter.com/lHkX72vb7Z
— 日刊工業新聞電子版 BizLine (@Nikkan_BizLine) July 19, 2016
日本を含め世界ではさまざまな発電技術を日々開発していますが、その中でも近年注目を集めているのが「海洋温度差発電」です。「海洋温度差発電」というのは、太陽光発電と同じように太陽の力を使って発電するシステムのひとつにあたります。
なお、将来的には太陽光発電よりも安定した供給ができるかもしれないといわれているシステムでもあり、その研究開発に世界中が乗り出しているのも特徴的な部分です。
この記事ではそんな「海洋温度差発電」の概要や発電がおこなえる地域の条件、そしてそのメリットやデメリットについて詳しくご紹介しています。ぜひ、数ある発電技術の中でもクリーンな発電システムとされる「海洋温度差発電」について理解を深めてみてください。
海洋温度差発電とは?仕組みは?
海洋温度差発電というのは、海面近くの温かな海水と深度1000メートルほどにある冷たい海洋深層水の温度の差を利用して発電を促すシステムです。19世紀後半ごろからその仕組みが研究され始め、現在では世界各国で海洋温度差発電を積極的に取り入れようとする動きが見られています。
ちなみに現実的な発電プラントが設計・開発されるようになったのは1900年代前半から中頃にかけてで、先立って電力化に成功した事例は1970年代ごろとなっています。なお、海洋温度差発電のおおまかな仕組みというのは以下の通りです。
海水温度差発電・クローズドサイクル
1・温かな海水面の部分に沸点が水よりも低い「アンモニアや代替フロン」を設置する。
2・温かな海水によってアンモニアや代替フロンを蒸発させ、それにより発生したガス圧によって発電タービンを回す
3・発電タービンが回ることにより電力を得る
4・気化されたアンモニアや代替フロンは深度1000メートルほどの海底からくみ上げられた冷たい海水によって冷やされ再度液化する
5・液化されたアンモニアや代替フロンはまた工程①に戻る
こちらの流れは現在研究が進められている海洋温度差発電の中でも、もっともベーシックなシステムの概要となります。なお、このシステムは「クローズドサイクル」と呼ばれるもので、1979年にハワイで初めて成功しました。
また、海洋温度差発電にはこのクローズドサイクル以外にも「オープンサイクル」というタイプのシステムも存在します。このオープンサイクルというのは代替物質を使わずに、あくまで海水のみを利用したシステムとなるのですが、その仕組みというのは以下の通りです。
海洋温度差発電・オープンサイクル
1・亜熱帯地域における温かな海洋表層水を低圧沸騰機に入れる
2・低圧沸騰機によって気化された海水が蒸気となり、低圧発電タービンを回す
3・低圧発電タービン内の蒸気を冷たい海洋深層水によって液化させる
4・このとき元の海水は塩と水分に分離され、純水を得ることが可能となる
5・クローズドサイクルとは違い新しい動力源として新たな海面表層水を取り入れる
このようにクローズドサイクルとは違い海水のみを使用するオープンサイクルシステムは、海水から電力だけでなく純水も取り出せるというのが魅力的な部分として研究が進められています。また、新しい動力源である海洋表層水は常に一定量が供給されるため、安定した電力が生み出せるとされているわけです。
しかし、このオープンサイクルシステムの場合は、海洋表層水の温度が一定以上にならなければ効果が正しく発揮されません。そのため、利用できる地域が限定されるという課題も抱えています。
そして、こうしたクローズドサイクルとオープンサイクルの特性を活かしたシステムとして、「ハイブリッドサイクル」というものも現在のところ研究が進められていて、未来の電力システムとして注目を集めているということです。
海洋温度差発電のメリット・デメリット
次に海洋温度差発電のメリットとデメリットについてご紹介していきましょう。先ほども触れたように海洋温度差発電というのは、すでにある海水を利用したシステムですから、非常にクリーンな発電システムであることが大前提として挙げられます。そして、そのほかにもいろいろな恩恵が得られる可能性があるということで注目を集めているわけです。
メリット
最初のメリットとしては先ほども触れたようにオープンサイクルシステムを用いれば電力と共に純水が得られるという部分が挙げられます。
特にオープンサイクルシステムが可能となる亜熱帯エリアの国々というのは水不足が問題ともなる地域が多く、電力と同時に生活用水や飲料水として使える水資源が確保できるというのは非常に貴重なことです。
また、クローズド・オープンの両方で用いられる海洋深層水には豊富な栄養が蓄えられていて、その海洋深層水を再利用することで養殖漁業などにも好影響を与えるとされています。なお、現実的にはサーモンやロブスターといった海産物の養殖には適しているということです。
さらに電力発電プラントと沿岸部の距離が近い場所であれば、海洋深層水を汲み上げるパイプを土壌の下に通すことで、亜熱帯地域でも寒冷地と同じような植物・農作物を育てることが可能とされています。
この「冷却土壌」という効果を見込んで、今後ハワイでは100種類以上もの果物や野菜などを育てようとするプロジェクトも計画中だといいます。
デメリット
やはり発電プラントを設置するための場所がどうしても限られてしまうというのが、海洋温度差発電のデメリットに挙げられます。まず海洋温度差発電は、前提として海がある国ではないと発電自体ができません。
また、海洋表面水と海洋深層水との温度差が少なくとも15℃~20℃程度必要とされているため、赤道から20度以内の海域に限定されてしまいます。ただし、現在ではこのデメリットを改善しようと新しい試みも考えられています。
これは寒冷地の中でも局地的な場所では海洋表面水と冷たい外気の温度差が20℃以上あるところが存在し、冷却効果をこの外気でまかなえるのでは?という理論から研究が進められているものです。つまりこの理論が実証されれば、冷却システムに使う海洋深層水を汲み上げる必要がなくなり、大幅なコストダウンも見込めるということになります。