近年、世界において深刻な問題として取り上げられているのが「海洋汚染問題」です。もちろん周りを海で囲まれた日本にとっても他人事ではない問題で、いま私たちは海洋汚染という問題についてあらためて学ばなければいけない時期にきています。
そこで、この記事では海洋汚染問題に関する原因や人への影響を踏まえた上で、自分たちが出来る対策には何があるのか?などをご紹介しています。
よく海へ行くという人だけでなく、多くの人に海洋汚染問題を身近に感じてもらえればと思いますので、どうぞ最後までご覧になっていってください。
海洋汚染とは?
海洋汚染というのは海にゴミが捨てられたり工業・生活排水などが流れ込むことによって、海の生物が棲み処を失ったり人間にとって悪影響が出たりする問題のことです。
つまり海洋汚染は自然に発生するわけではなく、あくまで人間たちの手によって引き起こされる問題ということを最初に理解しておいてください。
ちなみに海洋汚染と聞くと、なんとなく「魚が少なくなりそう」「海で遊べなくなる」「サンゴ礁が傷つく」といったイメージを思い浮かべる人も多いかと思います。
もちろんそういった点も含まれているのが「海洋汚染問題の特徴」なのですが、このまま海洋汚染が続くとおよそ30年後には魚の数よりも海に流されるゴミの数の方が多くなるといった試算が出ている点も憂慮するべきポイントなのです。
このまま汚染が続くと海という環境そのものがゴミで埋められ、海洋生物の生態系が大きく変わってしまうかもしれないということですね。
また、海洋汚染は海の中だけに留まらず、ゴミが流れつく沿岸部でも問題となっています。たとえばウミガメの産卵場所が無くなっていったり、沿岸部に生息する陸地の生物の餌(海洋生物)が減っていったりすることも海洋汚染問題の一部です。
このように海洋汚染が進むと、最終的には陸地で生活をする人間の生活も脅かされることになるわけです。
海洋汚染の主な原因
それでは何故、海洋汚染が深刻化してきているのか?次に、その原因について見ていきましょう。
海洋ゴミの増加
海洋汚染が進むもっとも大きな原因は「海洋ゴミの増加」です。海洋ゴミというのは、その名前の通り海に捨てられていくゴミのことを指します。
そして、その海洋ゴミの中で一番多いものが「プラスチックごみ」です。これは海洋プラスチックごみ問題としても取り上げられるものですが、主にペットボトルやビニール製の袋が割合として多くを占めています。
プラスチック製のゴミというのは軽いため、海流に乗って広い地域へと分布されていくところが特徴的です。国内でも日本海側では中国製・韓国製のゴミが、そして沖縄では台湾語が掛かれたプラスチックごみが漂着することが確認されています。
これは逆に言えば、日本人が海へ捨てたゴミも中国などの大陸方面や台湾などの島々に流れ着くことを意味していますので、けっして他人事ではありません。
こうした海洋プラスチックごみを含む漂着物というのは、日本だけでも年間で30トンから50トンほどあると言われています。
なお、世界中で海に捨てられている海洋ゴミの大半は不法投棄というデータもありますが、身近な部分で言うと釣り人が捨てていく買い物袋や釣り道具の廃棄なども海洋ゴミのひとつに数えられます。
もちろん釣り人だけでなく海にレジャーで訪れる人々の中にも、何かしらのゴミを海に捨てているケースがあるでしょう。
このように企業による不法投棄をはじめ、個人による無意識のポイ捨てなどが海洋汚染の主な原因なのです。
海洋プラスチックごみに関する記事はこちら
工業用排水や生活排水
また、海洋汚染が引き起こされる原因としては、海洋ゴミの増加以外に「工業用排水や生活排水」の存在も忘れてはいけません。
沿岸部に建設された工業から流れ出る油や生活をしていて排出される下水というのは、海を汚す大きな原因のひとつとなります。なお、最近になって注目されているのは生活排水に含まれるマイクロブラスチックごみと呼ばれる存在です。
これは歯磨き粉などに含まれるスクラブ原材料など、ゴミの大きさが直径5ミリ以下のものを指します。年々マイクロプラスチックごみは増加傾向にあり、そういったゴミを自然と摂取してしまう海洋生物への身体異常が懸念されているとのことです。
油の流出
ちなみに海の上では日々多くの船が行き来をしているわけですが、こうした船同士が衝突することによって燃料となる油が流出する事故も海洋汚染の原因の一部となっています。
海洋汚染による人への影響
海洋汚染がさらに進むと、人に対しても大きな影響をもたらします。まず海洋汚染によって最初に表面化する問題は、魚など海洋生物の減少です。
魚が獲れなくなれば必然的に漁師たちの仕事が奪われることになりますので、沿岸部では多くの失業者を出すことになります。また、水産加工業に従事する人たちも職を失うことになりますから、その被害額というのは甚大です。
そして魚が獲れなくなると、いま普通に摂取している魚由来の栄養素が足りなくなることも考えられます。なお、海洋汚染が進むことによって被るもっとも大きな損失はサンゴ礁の減少と言われています。
サンゴ礁は海洋生物の棲み処として使われていたり、餌の一部となったりしているのですが、このサンゴ礁が少なくなることで多くの魚たちが生きていけなくなるわけです。
さらにサンゴ礁は海を浄化させる役割も持っていますので、いわゆるレジャービーチと呼ばれるキレイな海もサンゴ礁がなくなればどんどんとその美しさを失うことになります。
そうなるとレジャー産業というものにも大きな影響を与えることになり、結果として海辺の観光業も衰退していくことになるでしょう。
このように海洋汚染というのは海だけの問題でなく、最終的には自分たちの仕事や娯楽、そして生活を奪っていくことになるわけです。
海洋汚染の対策
最後に、自分たちで出来る「海洋汚染を防ぐための対策」についてご紹介していきたいと思います。まずもっとも大事な点は「海洋汚染に繋がるゴミを極力出さないようにする」ということです。
特にスーパーのレジ袋や従来のペットボトル製品というのは、海洋ゴミの代表とも言えるものです。そのため、エコバッグを持ち歩く・飲料を買うなら再生可能な紙パック商品を買うなどが対策のひとつに挙げられます。
また、自分たちで海をキレイにする活動をおこなうというのも大事なことです。海における沿岸部や河川敷の掃除・ゴミ拾いをおこなうだけでも、海洋汚染を防ぐ効果が十分にあります。
最近ではビーチコーミングといって、浜辺に打ち上げられた漂着物を観察したり収集したりする行為が趣味のひとつにも数えられるようになってきていますので、そのついでにゴミ拾いをするというのもおすすめです。
こうした活動はボランティア団体を通さなくても個人でおこなえるものですから、ぜひ参考にしてみてください。海洋汚染という問題に対して「自分は何が出来るのか」を考えれば、小さなことでも出来ることはたくさんあります。
まずは多くの人が、汚れていく海に関する情報や知識を身につけるというのも、海洋汚染を防ぐ第一歩と言えるかもしれませんね。
ビーチコーミングに関する記事はこちら
海洋汚染について知っておこう
近年、世界中で注目されている海洋汚染という問題についてご紹介してきました。このままいけば近い将来、海に住む生き物たちの多くがいなくなる可能性もあります。
そうした現実を理解した上で、日々生活する中において自分が出来る海洋汚染対策をおこなっていくようにしましょう。