この記事では北海道の沿岸部で見かける「トド」の特徴や生態について解説していきます。
トドはアシカ科に分類される生き物で、同科においてはもっとも大きく成長する海生哺乳類です。
大きいオスだと体長3mを超える個体も存在しますが、これだけでもトドが如何に大きな生き物かが分かるかと思います。
ここでは、そんなトドの生息地・名前の由来・性格・食性・寿命などを分かりやすくまとめました。
また、トドとよく似たセイウチとの違いについてもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧になっていってください。
トドとは?
トドは「哺乳綱食肉目アシカ科トド属」に分類される生き物です。(トド属に分けられるのは一種のみ)
平均的な体長は2m~2.5mくらいで、体重はだいたい500kg前後です。
主に北太平洋沿岸部で観測され、千島列島やアリューシャン諸島、アラスカなどで繁殖活動をおこなっています。
また、トドは群れを作って生活を送り、特定の場所を棲み処とすることが一般的です。
沿岸部を棲み処とするのはすぐにエサを獲りにいけるからであり、時期によっては流氷の上を移動することもあります。
なお、トドは平均して水深50mくらいまで潜水することが可能です。
ちなみに昼間は陸で休み、夜になると海に潜ってエサを捕まえに行くというのがトドのライフスタイルとなっています。
(昼間でもエサを獲りに行くことはあるが、深いところまで潜るのは夜間とされている)
トドの見た目
トドの見た目的な特徴としては「背中側が黄褐色」「手足が黒い」といった点が挙げられます。
また、下半身に比べて上半身が発達しているところや小さい耳が付いているところも特徴的な部分です。
トドの鳴き声
トドの鳴き声はとても大きく、本気を出せば数キロ先まで声が届くと言われています。
そんなトドの鳴き声は見た目と少しギャップがあり、野太い「グァー」といった音に聞こえます。
なお、トドが鳴くのは異性への求愛や他の個体への威嚇を目的としているそうです。
北海道でのトド
水族館で飼育されている姿を見ると可愛らしい印象を持ちますが、トドは別名「海のギャング」とも言われる生き物です。
漁師たちが捕まえてきたタコ・イカ・魚などを勝手に食べたり、漁網を食いちぎったりと被害が絶えないことから、北海道では昔からトドを疎ましい存在として扱っています。
特に漁の邪魔をされると一帯の漁師たちの死活問題となるため、現在では頭数を制限しながらトドの駆除がおこなわれています。
※トドによる漁業被害は数億円を超える。
トドの名前の由来
トドという名前は「アイヌ語」が由来と考えられていて、もともとはアイヌ語の「トント=無毛の毛皮」が転じて「トド」になったという説が有力です。
ちなみにトド自体はアイヌ語で「エタシペ」と呼ぶので、トント(無毛の毛皮)はトドを獲ったあとの状態と推測されます。
なお、トドは漢字で「海馬」と書きますが、実はタツノオトシゴやアシカにも同様の漢字が当てられています。
※厳密には、アイヌ語におけるトントは「毛のないなめし革」を指すため、他の動物にもトントという言葉が使われていた模様。
トドの特徴・生態
ここからはトドの特徴や生態をより詳しくご紹介していきます。
トドの大きさや生息地、性格や寿命などをまとめましたのでご覧ください。
大きさ・体重
トドはオスで3.3m、メスで2.9mくらいまで成長します。
体重に関しては個体差が激しいものの、だいたい500kgくらいが平均的な重さです。
ただし、中には1トンを超える大型のトドも存在します。
ちなみに同じアシカ科である「アシカ」や「オットセイ」の大きさは体長2m前後、体重250~300kgほどです。
トドと比べると一回り以上も小さいわけですが、このことからもトドの大きさがよく分かると思います。
なお、トドの赤ちゃんは80~90cmくらいのサイズで生まれ、体重も20kg程度しかありません。
そこから3~4年かけて幼獣のトドは成獣へと育っていきます。
生息地
トドは北太平洋の沿岸部を生息地としています。
具体的にはベーリング海やオホーツク海の沿岸部(北海道を含む)、アラスカ州からカリフォルニア州までの沿岸部がトドの主な生息地です。
日本の場合は、北海道の日本海側にあたる礼文島・利尻・石狩、オホーツク海側にあたる知床の羅臼などでよくトドを見かけることができます。
なお、トドがやってくるのは秋の終わりから春にかけての時期で、その多くは千島や樺太で生まれた個体群と考えられています。
近年では宗谷岬の沖合にある弁天島がトドの上陸地となってきているようで、その周りでは約6000頭のトドが確認されているとのことです。
性格
トドは見かけによらず穏やかで優しい性格をしています。
また、成長しきる前のトドは警戒心が強く、むしろ臆病な性格とも言えます。
ただし、性格というのは当然個体ごとに異なり、中には人間を攻撃してくるようなトドもいるため近寄る際には注意が必要です。
特に繁殖期のオスや妊娠中のメスは攻撃的な性格になることもあるので気を付けましょう。
※トドは好奇心が強いとされ、それゆえ漁網などに興味を持ち食いちぎるといった行動に出るとも考えられる。
食性やエサ
トドはとても大食いな生き物で、成獣であれば1日に10kg以上のエサを必要とします。
そんなトドが主にエサとして食べているのはタコやイカといった頭足類、イワシ・ヒラメ・シシャモ・カサゴ・スケトウダラなどの魚類です。
このようにトドは「肉食性」の生き物となりますが、エサを食べるときにはすべて丸飲みするというのが大きな特徴です。
ちなみに身体がとても大きく食物連鎖においては上位に位置するトドでも、シャチという天敵の前では命を落とすことも少なくありません。
寿命
トドの寿命は20~30年くらいです。
ただし、野生下においては天敵であるシャチに襲われたり、人間によって駆除されたりすることもあるので、寿命まで生きられる個体はそれほど多くないと言えるでしょう。
トドとセイウチの違い
トドとよく似た生き物として「セイウチ」の名前がよく挙がりますが、トドとセイウチはまったく違う生き物です。
そもそもトドは「アシカ科」で、セイウチは「セイウチ科」の生き物となります。
また、トドとセイウチで決定的に異なるのは「牙の有無」です。
トドには牙がありませんが、セイウチには立派な牙が生えています。
これだけ覚えておけばトドとセイウチを間違えることはないと思いますが、ほかにもトドとセイウチには以下のような違いがあります。
・トドのヒゲは数十本ほど、セイウチのヒゲは300~400本以上
・トドには耳たぶがあるが、セイウチには耳たぶがない(耳の穴が空いているだけ)
・トドの身体はツヤツヤとした見た目、セイウチは身体の皮がダルダルっとしている
なお、見た目以外では生息地にも違いがあり、セイウチは北極圏に生息しているためトドのように南下してくることが基本的にはありません。
まとめ
アシカ科の中でもっとも大きく成長する「トド」について詳しくご紹介してきました。
ご覧いただいたようにトドは体長3m以上、体重500kg~1000kg以上という大型の海生哺乳類です。
日本では昔から北海道の沿岸部でよく見かけられていて、狩猟や駆除の対象として扱われています。
なお、最近では駆除したトドを使った加工食品がお土産の品として販売されるようになってきましたので、北海道に訪れた際はぜひ探してみてください。